日本通信とエイチアイエス(H.I.S.)が立ち上げた合弁会社「H.I.S.Mobile」が、国内と海外向けに新たなMVNOサービス「H.I.S.モバイル」を開始する。
国内向けは日本通信の「b-mobile」と同様のプランでそれほど目新しさはないが、注目は、2018年5月から提供する海外向けの通信サービス。日本人の渡航エリア約80%をカバーするという「世界70カ国」にて、「1日500円(200MB)」「1枚のSIMカード」で利用できるという特徴を持つ。
海外での通信手段は、キャリアのローミング、モバイルWi-Fiルーターのレンタル、クラウドSIM(eSIM)を利用したルーター、現地のプリペイドSIM、といった手段があるが、これらと比べてH.I.S.モバイルの海外SIMはどれだけお得なのか。
まずキャリアのローミングサービスは、KDDIとNTTドコモが1日980円で利用できるサービスを提供している。auの「世界データ定額」と、ドコモが3月15日から提供する「パケットパック海外オプション」では、日本で契約しているプランのデータ容量を海外でも使えるのが特徴。例えば10GBや20GBなどの大容量プランを契約していれば、これらの容量をそのまま海外でも使える。
H.I.S.モバイルの海外SIMで使えるデータ容量は1日200MBで、H.I.S.Mobileの猪腰英知社長は「(200MBは)日本のユーザーが毎日使えるぐらいの容量」と話す。確かに、24時間で30MBしか通信できないドコモの「海外1dayパケ」よりは多く、ルート検索、翻訳、SNSへ写真をアップ、家族と連絡といった手段だったらカバーできそう。
ただ、ストリーミングの動画をたくさん見る、電子書籍をたくさん読む、ビジネスで画像や書類をやりとりするといった使い方だと、あっという間に200MBを超える恐れもあり、人によっては物足りないと感じるかもしれない。もう少し上の料金で、1日500MBや1GBといったプランがあっても良いと感じた。なおデータ容量は、あらかじめ滞在日数分(500円×7日分など)を購入する必要があるが、アプリから追加でチャージすることもできる。
モバイルWi-Fiルーターのレンタルは、1日500円台〜1000円台で利用できるサービスが多く、地域によってはH.I.S.モバイルの海外SIMと肩を並べる。ただ、利用できるエリアは限定されている。渡航するたびにルーターを借りる、返却するといった手間が発生するし、荷物が1つ増えるのもデメリットだ。
H.I.S.モバイルでは、アプリで滞在国を設定すれば、国が変わると現地のプロファイルが自動でダウンロードされて接続キャリアが変わり、SIMを入れ替えずに通信できる。日本通信の福田尚久社長は、これを「変幻自在なSIM」と表現する。
同じくSIMを入れ替えることなく、複数の国で利用できるWi-Fiルーターの方が大きなライバルになりそう。例えば「jetfi」は世界100カ国以上が対象で、1日680円、300MBから利用可能。1日180円で通話が使い放題になるオプションサービスも提供している。H.I.S.モバイルで1日500円で通話ができるかは「国による」(福田氏)そうで、通話サービスの対応国拡大にも期待したい。
上記jetfiを提供しているMAYA SYSTEMは、jetfiと同じeSIMを搭載したスマートフォンを2018年夏に投入する予定。これが実現すれば、国内はキャリアやMVNOのSIMを使い、海外ではSIMを入れ替えずに通信できる。H.I.S.モバイルでは国内でも海外でも物理SIMを使うため、デュアルSIM(DSDS)対応機種を使わない限り、海外へ行く際はSIMを入れ替える必要がある。福田氏によると、2018年内をめどに国内外で1枚のSIMだけで通信できるようにする予定だが、MAYA SYSTEMのeSIMスマホが実現すれば、大きなライバルとなりそうだ。
現地のプリペイドSIMは、例えば2GBで1500円のSIMを1週間かけて使えば、H.I.S.モバイルよりも安くなるが、SIMを調べる、購入する手間が発生するのと、APN設定がうまくいかずにつながらない、といったトラブルも起こりやすい。現地のWebサイトや店舗でデータ容量をチャージするのに一苦労することもある。
H.I.S.モバイルの海外SIMなら、ユーザーが手動でAPN設定をする必要はなく自動で接続するため、導入のハードルは低く、トラブルも起こりにくいだろう。実際、H.I.S.ではレンタル携帯サービスを提供しているが、猪腰氏によると、「つながらない」といったトラブルほとんど起きていないという。サポートについては現地の拠点ではなく、電話で対応する形になる。「詳細はこれからだが、日本通信は東京と米国にコールセンターがあるので、かなりの時差をカバーできる」(福田氏)
なお、海外SIMを利用するにはSIMロックを解除する必要があるため、全てのスマホユーザーが、今使ってるスマホを海外でそのまま使えるわけではない。また、自分のスマートフォンが海外のネットワーク(周波数帯)に対応していなければならない。海外で使えるSIMロックフリースマホのレンタルや販売なども必要になるかもしれない。
H.I.S.モバイルの海外SIMのメリットや注意点をまとめると、
といったところ。アプリの機能や詳細なスペックで判明していない部分もあるが、H.I.S.モバイルのサービスが、海外で通信手段を確保する新たな選択肢になりそうだ。
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