自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!

第15回

Wi-Fiの「SSID」について少し知っておきたい心がけ

電波の状態も見てみよう

「自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!」連載記事一覧

 前回まででは、初期状態のSSIDと暗号化キーやボタンプッシュを使った自動接続を試してみた。ここから自力でWi-FiルーターにオリジナルのSSIDと暗号化キーを設定することをお勧めする。今回は設定する前に、このSSIDについて少し知っておきたい心がけを確認しておきたい。

 これまでも頻繁に出てきているが、このSSIDはWi-Fiルーターを判別する名前だ。Wi-Fiルーターに接続するときに接続先を選ぶ目的で使われる。

 Wi-Fi接続時に、このようなリストで選ぶのは、よく見かける画面だろう。

スマホでのWi-Fi接続時のSSIDリスト表示

 このように、自分が使っているWi-FiのSSIDは、周辺でサーチすると表示される仕組みになっている。Wi-Fiルーターの電源が入っていれば常時周囲に発信されていて、電波の入る圏内なら、Wi-Fi機器でSSIDが受信できる。画面を見ると、似たような数字[*1]やメーカー名のSSIDで埋め尽くされることが多い。多くが出荷時のままやボタンプッシュを使った自動接続で使い続けていることがわかる。

 こういったSSIDのままだと、自分のWi-FiルーターのSSIDが埋もれてしまって判別しにくいことや、メーカー名がバレるのは、セキュリティを考えるとあまり好ましくない[*2]ため、オリジナルの自分が判別しやすいネーミングに変更して使うのがベストだ。

[*1]……ちなみに数字の羅列はMACアドレスになっているパターンが多い。先頭6文字はメーカー名。「0024A5」はバッファロー、「A8A795」はFoxconnなどと、製造メーカーがわかる。

[*2]……通常、メーカー名がわかったところで、何ということはないが、特定メーカーのルーターに脆弱性があったケースなどで、特定メーカーが狙われることも考えられる。

 このWi-Fiルーターが発する電波の状況をチャンネルスキャナを使って可視化してみよう。さまざまな無料ツールが提供されていて、SSID別に使用チャンネルと受信信号強度の確認が手軽に可能だ。ただし、残念ながらiOSにはこの手のWi-Fiスキャナは提供されていない。

 今回はAndroid版の「WiFi Analyzer」を使ってみた。SSIDごとにどのチャンネルを使っていて受信信号強度がどの位あるかがわかる。Wi-Fiルーターの設定で空いているチャンネルに設定するときに便利なのだが、最近は混んでいて空きチャンネルなど無いに等しい。画面のSSID「Pol」が筆者宅のWi-Fiルーターになっている。

 このサーチでもわかるように、SSIDは探せば簡単に見えるモノと覚えておこう。電波の強度から、近づけば場所もおおよそではあるが判別する。そのため、個人が特定できるような名前は付けないことが鉄則。また、日本語も付けられるが、基本的に半角英数字にしておいたほうが無難だ[*3]。1文字目に記号や数字を入れておくと、同じ受信信号強度の時に上に表示されるので多少便利かもしれない。接続に使われるので、周囲でダブらないネーミングにすることも重要だ。

[*3]……子機側で日本語に対応していない可能性が想定されるためだ。

  • Android「WiFi Analyzer」(Google Play)
  • Windows「WiFi Analyzer」(窓の杜)
  • macOS「ワイヤレス診断」
    Spotlightを使って探す。起動したら[Command]+[Option]+[4]キーを押すと、リスト表示ではあるがチャンネルごとのSSIDと受信信号強度が表示
「WiFi Analyzer」のチャンネルサーチ画面、2.4GHz帯の様子。激混み状態
「WiFi Analyzer」のチャンネルサーチ画面、5GHz帯の様子。以前は空いていたが帯域の広い11acの普及で、それなりに混んでいる

 このSSIDは、設定によって隠すことも可能だが[*4]、これはあまりお勧めできない。接続時の手順が煩雑になるだけでなく、子機側が常に接続したSSIDを探している状態になるので、Wi-Fiルーターと接続を切っているときに(例えば自宅でステルスWi-Fi設定で使っていて、そのままスマホを持って外出するような状態だ)、子機の周囲に常時、自分のSSIDをまき散らすことになる。セキュリティを考えて隠す設定にしたのに、モバイル機器の利用では、それが逆に仇となる。また、隠蔽したSSIDを探し出すことは、子機側から積極的にスキャンをすればいいだけ[*5]なので特に難しいことではない。根本的なセキュリティ対策にはならないのだ。

[*4]……「SSIDステルス」と呼ばれる。バッファロー機器では「Any接続拒否」という設定になっている。

[*5]……ステルスにしていないSSIDはWi-Fiルーター側から常に発信されているが、ステルス設定にすると子機側の要求に応じて発信される。いずれにしても無線通信する際には発信される。

 もう1つ、Wi-FiルーターのSSIDはGoogleやApple、Microsoftなどの位置情報サービスにて自動収集されていて、GPSの位置情報と紐付けされている。スマホが特定のWi-Fiルーターに接続した場所から[*6]、GPS信号が無くてもスマホの位置がわかるようにするためだ。自宅のWi-Fiルーターでこのサービスに登録されると[*7]、自宅のWi-Fiルーターに繋がった時点で自宅にいるということが正確に把握できるようになる仕組だ[*8]

 この機能は便利なのだが、サーバーに登録されないようにしたい場合には、SSIDの末尾に「_nomap」を付けたSSIDに設定する必要がある。例えば、筆者はモバイルルーターのSSIDを「_nomap」を付けたSSIDにしている。

[*6]……実際には複数のWi-FiルーターのSSIDとMACアドレス(BSSID)、受信信号強度から位置を特定している。GPS信号があるときはそれも加味されるほか、携帯電話基地局の情報、ジャイロ、コンパスなども活用して精度を上げている。

[*7]……GoogleではAndroidスマホでWi-Fiルーターに接続した時点で登録され、Google マップ利用時に反映されることになっている。

[*8]……余談だが、自宅で使ったWi-Fiルーターを他人に譲渡するときには、この点に注意する。そのためにも、初期SSIDは位置情報サービスに登録させないほうがよい(実際はMACアドレスも登録される)。SSIDをオリジナルに変更して使用し、工場出荷時にリセットした初期SSIDで譲渡すれば位置情報サービスには載っていない状態になる。初期SSIDで運用してしまうと初期SSIDが位置情報サービス載ってしまうので注意。載ってしまったSSIDを位置情報サービスから削除するには、一度SSID末尾に「_nomap」を付けて位置情報サービスに登録する。ちなみにAppleのサービスではこのSSIDに「_nomap」を付ける手法は利かない。最悪のケースでは、自宅場所を他人に正確に教えてしまうことになる。心配ならWi-Fiルーターを知らない人に譲渡しないように心がけて欲しい。

 今回は少々お勉強のようになってしまったが、次回も続けて暗号化キーについてお教えしよう。もう少しお付き合い願いたい。この2つの基礎知識を知ったあとに設定を実践してみると、設定方法がよりわかりやすくなるはずだ。

今回の教訓(ポイント)

SSIDはWi-Fiルーターの名前。自分がわかりやすい名前にする。
常時周囲に電波で発信されていて、位置情報サービスでも利用されているため、自分で設定してコントロールすることが重要。

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。