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OCN モバイル ONEのトラフィック対策と今後の方向性とは

 NTTコミュニケーションズは、MVNOサービスの「OCN モバイル ONE」で実施している、増加するトラフィック対策やその効果、今後の対応の方向性について解説した。

「OCN モバイル ONE」の対応
NTTコミュニケーションズ ネットワークサービス部 オープンネットワークサービス部門の半田篤志氏

 「OCN モバイル ONE」ではすでに、速度制限中でも通信開始時の最初の150KBを速度制限なしで転送する「バースト転送」機能や、トラフィックコントロール装置の導入により、混雑時に無駄なパケット再送を抑制する「TCP最適化」、同じく混雑時に動画の先読み(バッファ)量を抑制することを目的とした「httpsペーシング」(SSLペーシング)機能を導入しており、混雑時のトラフィック対策や効率化を図ってきた。

 「バースト転送」機能は2016年5月、トラフィックコントロール装置と「TCP最適化」は2017年5月、同装置を活用した「httpsペーシング」機能は2017年9月にそれぞれ導入されている。バースト転送の150KBという容量は、他社の倍に設定されていることが強みとしたほか、TCP最適化で混雑時に効果があったことや、httpsペーシングによりパケット消費の無駄が少なくなることも解説された。

「バースト転送」機能
トラフィックコントロール装置と「TCP最適化」
「httpsペーシング」機能

 ただ、モバイルトラッフィクの増加ペースは日本国内においても2017までの過去1年で40%以上になるなど、著しく増加している。これは世界でも同様の傾向で、またモバイルの総トラフィックの8割が動画トラフィックになるとも予想されている。

 OCN モバイル ONEのユーザーに限ってみると、一人あたりのトラフィックは直近で年間約20%の伸びになっているという。容量無制限のプランがないため、日本全体の傾向からは抑えられている形だが、契約するコースの容量は拡大しているという。ただし、契約されるコースの容量の増加よりも、一人あたりのトラフィックの伸びのほうが大きいため、さらなるトラフィック対策が必要になるとしている。

 また、同社だけでなく固定通信やほかのモバイル通信サービスでも同様だが、一部のヘビーユーザーのトラフィックが全トラフィックの過半数を占めるという傾向で、逆に全体の過半数を占めるライトユーザーは、ほとんど通信量を使っていないという傾向も明らかにされた。

 これに関連して、北米の4大モバイルキャリアでは、容量無制限プランにおいても、例えば月間22GBを超えると速度を制限する可能性があると案内するなど、対策されている様子が紹介されている。一方同社では、直近3日間の内容で1日規制する、いわゆる終日規制を設けていないことでサービスを選ばれている側面があるとした上で、ヘビーユーザーの動向をさらに分析する必要があるとし、ヘビーユーザーへの対策は検討中であるとするにとどまっている。

YouTubeアプリの最新プロトコルに対応を検討

 今後のトラフィック対策の方向性としては、自助努力と、ユーザーに向けた情報発信の強化の2点が挙げられている。

 トラフィックコントロール装置の導入により、ユーザーの同意を得られれば、プロトコルごとといったさまざまな対策を実施できるようになっているが、現在、YouTubeのモバイル版アプリが利用する、UDPの改良版プロトコル「QUIC」のトラフィックについては対象外になっているため、今後QUICをペーシング(バッファの抑制)の対象にしたり、ユーザーの同意を得て(オプトイン)圧縮して容量を減らしたりするなどの対策が考えられるとしている。また、こうしたトラフィックのコントロールについては、全体の結果としての傾向に対策するだけでなく、プロトコルごとに、ダイナミック(動的)に最適化していくことも重要としている。

 一方のユーザーへの情報提供については、アプリや個々のサービスが使用するプロトコルによってもスループットが大きく変動することから、通信速度という切り口でも、体感的な部分も含めてさまざまな視点を得られるよう、自社網の状況についての情報公開を進め、「見える化」を推進していくとしている。

フルMVNO「検討しているのは事実」

 このほか説明会に集まった記者からの質問で、IIJ(インターネットイニシアティブ)が正式にサービスを発表した「フルMVNO」の導入について聞かれると、「検討しているのは事実」とした上で、IIJが第1弾として発表したように、法人向けやプリペイド向けには「メリットはある」と指摘。一方の個人向けでは、NTTドコモからまだ仕組みが提供されていない「eSIM」とセットでないと提供しづらいという見方を示している。