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海外1日90円、ワイモバイルの「Pocket WiFi 海外データ定額」の仕組みとは

 4月24日、ワイモバイル(Y!mobile)ブランドの新サービス「Pocket WiFi 海外データ定額」がスタートする。普段は国内で月額3980円/7GBというプランのモバイルルーターとして利用しつつ、海外滞在時には、1日90円で利用できるという内容だ。

Pocket WiFi 海外データ定額向け端末の「701UC」

 これまで、海外で通信サービスを利用するには、普段使っている携帯電話回線をそのまま利用できるものの追加費用がそれなりにかかる海外ローミング、1週間などの単位でモバイルWi-Fiルーターを利用できるレンタルサービス、渡航先で現地の携帯電話事業者と回線を契約する、いわゆる現地SIMの利用といった手段があった。

 一方、「Pocket WiFi 海外データ定額」では、uCloudlink社の「Cloud(クラウド) SIMプラットフォームを活用。海外滞在中は、最適な現地事業者に接続して通信する仕組みであり、いわば「現地SIM」に近い仕組みだ。1年に数回、出張や旅行で海外を訪れるユーザーでの利用が想定されている。

左からuCloudlinkの郁氏、陸氏、ソフトバンクの吉永美穂氏と吉永珠里氏

Cloud SIMと「Pocket WiFi 海外データ定額」の仕組み

郁氏(左)と陸氏(右)

 新サービスで用いられるuCloudlinkの「Cloud SIM」は、数年前から日本国内でも購入、利用できるようになっていたが、キャリアを通じた提供は世界でも初めての取り組み。国外に到着すると、そこで現地の契約情報をダウンロードして、現地の回線で利用する……という触れ込みだが、その仕組みはどうなっているのだろうか。

 uCloudlink社の日本法人であるuCloudlink Japan 営業サポート部部長の陸嘉嘉氏によれば、uCloudlinkでは「SIMバンク」という装置を導入。これに、世界各地のSIMカード(ローカルSIM)を多数装着し、そのSIMカードの情報をサーバーに保存しておくのだという。エンドユーザーが渡航すれば、端末に内蔵される1枚の“ローミングSIM”を使って、位置情報などをサーバーに報告する。その報告に基づいて、サーバーに保存されている各地のSIM情報から、ユーザーの滞在国にマッチするプロファイルを選定して端末へダウンロードするという流れ。

「1対複数」の考え方

 Cloud SIMとは、その名の通り、クラウド上に多数のSIMカードを用意している形ということになるが、uCloudlink Japan 取締役の郁星星(イク セイセイ)氏は「電波の強弱、サービスエリアが各地の事業者によって異なる。Cloud SIMでは、ユーザーの状況にあわせて最も繋がりやすい事業者のプランを選ぶ」と説明する。

吉永美穂氏(左)と吉永珠里氏(右)

 その上で、ユーザーにとって1日90円という割安なプランはどうやって実現しているのか。ソフトバンク Y!mobile事業推進本部の吉永美穂氏は「ターゲット層の過去の滞在期間の平均値や、国内および国外での料金からバランスを取っている」と解説。キャリアにとってはこれまでにない海外ローミングの料金体系となるが、社内では大きな反対もなく導入が決まった。そして郁氏によれば、Cloud SIMの仕組みとして「1対複数」という点が肝だという。

SIM切り替えの設定画面。海外滞在時はクラウドSIMを選ぶ

 1対複数とは、簡単に言えば「現地の1回線を、複数のユーザーでシェアする」という意味だ。たとえばAさんが渡航先で「Cloud SIM」の仕組みを使って通信したとしよう。Aさんが利用した回線は、Aさんが帰国するなどして利用されなくなれば、そのままBさん、Cさんが使うというイメージ。郁氏と陸氏は「Cloud SIMは合理的で効率が良い」とアピールする。

SIMロックフリーの「Pocket WiFi 701UC」

 新機種のモバイルWi-Fiルーター「Pocket WiFi 701UC」(uCloudlink製)は、価格は3万7800円。割賦の支払いと毎月の割引が相殺され、実質0円で提供される(プランの契約期間は3年)。

 5月の大型連休で出かける方も多い。サービスを投入することを優先した」と語るソフトバンク商品企画部の吉永珠里氏によれば、「701UC」は、Cloud SIMという仕組みもあって、SIMロックを施すことはできなかったという。既存のuCloudlink端末の中には、701UCによく似た機種もあるが、それとは同一機種ではなく、ワイモバイル向けにカスタマイズを施した端末になる。Pocket WiFiブランドがこれまで長く提供されていることや、ソフトバンク内でも新たな取り組みにチャレンジする姿勢を強く打ち出していることから、ワイモバイルブランドで展開されることになった。

背面にPocket WiFiロゴ。これもカスタマイズの1つ
ローカルSIMの情報

 uCloudlinkとしては、年内にも新たな機種をラインアップに加えられるよう準備を進めているとのこと。uCloudlinkでは、海外の展示会においてスマートフォンタイプの端末も紹介しており、ゆくゆくはスマートフォンへのCloud SIMの搭載も期待したくなるところだが、uCloudlinkが今後開発する機種がワイモバイル/ソフトバンクの端末として提供されるかどうかはまだわからない。Cloud SIM側も今後に追加される新機能はまだ未定だ。

 大手キャリアを通じて初めて販売される「Cloud SIM」対応の端末が、はたしてどう受け入れられるのか。量販店で扱われるのも初とのことで、ユーザーからの反応を見つつ、ソフトバンクとuCloudlinkでは今後の展開を探っていくようだ。