法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

カメラと動画でワクワク感の演出を狙うauの2018年夏モデル

 auは5月14日、2018年夏モデル発表会を開催し、スマートフォン6機種とフィーチャーフォン1機種を発表した。一部のモデルはすでにグローバル向けに発表されていたり、メーカーが独自に発表したりするモデルもあったが、国内向けは初お披露目となるモデルも含まれるなど、充実した内容のラインアップだ。

 auとしてはカメラと動画で「ワクワク感」の演出を狙ったラインアップと位置付けている。すでに、本誌では速報レポートをお届けしているが、今回の発表内容の位置付けや解釈、各モデルの印象などを踏まえ、レポートをお送りしよう。

高橋新社長体制スタート

 auブランドを展開するKDDIにとって、今年はひとつの大きな節目を迎えた。それは言うまでもなく、今年4月から高橋誠氏が代表取締役に就任し、新しい体制で動き出したからだ。こういった表現はどちらかと言えば、経済紙などで使われるもので、一般のユーザーにとってみれば、「社長が替わったからといって、別に何が変わるわけでもないでしょ」と考えてしまいがちだ。おそらく、多くの業界はその解釈で間違っていないだろうが、携帯電話業界について、なかでもauについてはそれが当てはまらないかもしれない。

KDDI高橋社長(2018年5月の決算会見で)

 長らく本誌を愛読してくれている読者のみなさんなら、よくご存知の通り、新社長の高橋氏はケータイ時代のauの発表会で毎回、壇上でプレゼンテーションを担当するなど、auの『顔』と言える存在だった。業界内ではNTTドコモのiモード時代を牽引した夏野剛氏(現在は株式会社ドワンゴ取締役)と並び、当時、業界の代表的な人物と認識されていた。ざっと振り返ってみてもGPSケータイを利用した「EZナビウォーク」、LISMOを生み出した「着うた」、3Gケータイ導入時の「ムービーメール」、FM放送との連携を実現した「EZ・FM」など、auはケータイ時代に数々の人気サービスを生み出したが、その中心的な役割を果たしてきたのが高橋氏になる。筆者も高橋氏には取材などで何度もお世話になったが、非常に気さくな人柄で、社内外にもファンの多い人物だったという印象だ。

2009年の新機種発表会での高橋氏

 そんな高橋氏が社長になったことで、今後、auがどう変わっていくのかが注目されるが、実際にはそんなに早く変化が見えてくるわけでもない。というのも社長就任会見の質疑応答などでも触れられていたように、高橋氏が社長就任を打診されたのは昨年末であり、対外的に明らかになったのは1月末。そして、4月から新体制スタートとなるわけで、実質的には半年ほどしか経っていない状況で、まだサービスや端末、料金プランなどで、『高橋色』を出すところには至っていない。

 特に、端末などは開発期間もあるため、おそらく来年以降にならなければ、高橋氏の打ち出す方向性は見えてこないだろう。とは言え、auは今年の1月から3月にかけて発表する予定だったいくつかのサービスや施策の一部を4月以降、つまり、高橋社長就任後に仕切り直してきたとも言われており、新体制下での発表がどのようになるのかが注目される。

 今回、5月14日に催された発表会は、「『au 2018 夏モデル』に関する説明会」と題され、今年の夏商戦を戦うモデル7機種、カメラで撮った写真を活かすフォトブックサービスが発表された。昨年までの発表会ではホテルの宴会場を使い、代表取締役社長の田中孝司氏が壇上で説明していたが、今回は都内のイベントホールを使い、商品企画本部長の山田靖久氏によって、新製品のプレゼンテーションが行なわれる形となった。全体的に見て、ややコンパクトにまとめられた印象もあるが、これは同日に明らかにされた5月下旬の発表会を見据えてのことであり、端末は端末として発表しておき、5月下旬の発表会ではより大きな規模の発表を仕掛けたいという目論見があるようだ。

 今回発表された今年の夏モデルは、スマートフォン6機種、フィーチャーフォン1機種、カラーバリエーション追加のスマートフォン1機種という構成だ。モデル数としては、昨年の夏モデルがスマートフォン4機種、フィーチャーフォン2機種だったことを考えると、少し増えたが、XperiaやGalaxyのように、スペックの違う兄弟モデルやバリエーションモデルもあり、実質的なモデル数は変わらないという見方もできる。

 それぞれの機種の内容については後述するが、ラインアップ全体で見ると、Galaxy S9/S9+やAQUOS R2、Xperia XZ2などが従来機種からの流れで予想されていた範囲だが、意外だったのは前モデルではNTTドコモのみに供給されていたXperiaシリーズの最上位モデルがはじめてauに供給されること、ファーウェイ製スマートフォンの2機種めとなる「HUAWEI P20 lite」がラインアップに加わったことが挙げられる。

 逆に、HTCやLGエレクトロニクス、京セラなどのスマートフォンは夏モデルにラインアップされていない。京セラは今年2月発売のQua phone QZ、Qua tab QZ10などを供給しているが、HTCは他事業者やSIMフリーへの展開が強化されていただけに、今後のauとの関係がどうなるのかが気になるところだ。LGエレクトロニクスは昨年12月にisai V30+の供給を開始し、5月17日にはLGエレクトロニクスのAI技術「ThinQ AI」に対応するバージョンアップが公開されるなど、堅実な展開を見せている。

 また、ネットワークについては5月18日から受信時最大958Mbpsの通信サービスが導入されることが発表された。エリアは東京都、埼玉県、愛知県、大阪府の一部で、対応端末は今回発表されたスマートフォン6機種中5機種となっている。今回の高速化はアンテナ技術や「4×4 MIMO対応」や変調方式「256QAM」など、新しい技術を導入によるもので、ハイエンドのモデルは今後、順次、対応していくことになりそうだ。ただ、ある程度の速さを超えてしまうと、ベンチマークテストでもしない限り、その差がわからなくなってしまうため、ユーザーに対して高速化が魅力的に映るシチュエーションはそろそろ限定的になってきたと言えるかもしれない。

 一方、サービスではフォトブックサービスが発表された。auのフォトブックサービスは、もともとスマートパス会員向けにも提供されていた「TOLOT」のサービスを利用するもので、auの「データお預かりサービス」でユーザーのスマートフォンからアップロードされた写真から1冊580円で作成できる。送料も料金に含まれており、子どもといっしょの旅行のアルバムを実家の両親に送るといった用途にも使えそうだ。

 今回発表されたサービスではないが、5月9日にサービスが開始された「+メッセージ」についても質疑応答で取り上げられた。発表会時点でのダウンロード数は50万を超えたとのことだったが、半数近いシェアのiPhone向けのアプリがまだ公開されていないことを考慮すれば、その規模感しかたのないところだろうか。ただ、「+メッセージ」については三社が将来的な活用を見据え、連携してサービスの提供を開始した割に、告知やキャンペーンなども含め、キャリア側の積極的な取り組みが感じられないうえ、ソフトバンクのサービス提供が中止されてしまったため、今後の展開に不安を残している。はじめるからには各社とももう少し積極的にアピールをして欲しいところだが……。

スマートフォン6機種、フィーチャーフォン1機種をラインアップ

 さて、ここまでは今回の発表内を中心に説明してきたが、ここからは今回発表された個々の機種の印象などについて、説明しよう。ただし、いつものことながら、それぞれの製品は開発中のものであり、最終的に発売される製品は仕様や印象が異なるかもしれない点はお断りしておく。

 今回発表されたスマートフォン6機種をスペックで見比べてみると、チップセットは6機種中5機種がQualcomm製Snapdragon 845を搭載し、メモリーも全機種がRAM 4GB以上、ROM 64GB以上となり、バッテリーも全機種が3000mAh以上を搭載する。全体的に見て、ハイスペックモデル中心の構成となっている。機能面ではGalaxyに続き、Xperiaがサポートしたことで、6機種中4機種がワイヤレス充電に対応し、iPhone X/8/8 Plusの対応も含め、ワイヤレス充電が標準に機能になりつたることをうかがわせる。

 そして、今回の発表で、もっとも目を引いたのは、スマートフォン6機種中5機種がメインカメラとして、デュアルカメラを搭載している点だ。ここ数年、急速に増えてきたデュアルカメラだが、どちらかと言えば、ファーウェイやASUSなどのSIMフリースマートフォンに勢いがあり、各キャリア向けではサムスンが昨年のGalaxy Note 8から、アップルはiPhone 7 Plusから、LGエレクトロニクスはisai Beatやisai V30+など、一部のモデルで展開するのみに留まっていた。

 しかし、今回はいよいよXperiaやAQUOSにもデュアルカメラが登場したことで多数派になり、『マルチカメラ』がスマートフォンのカメラの主流になったことを感じさせるラインアップとなった。ただ、マルチカメラの活用方法は機種によって違うため、ユーザーはそれぞれの機種の特徴を十分に理解したうえで、選ぶことをおすすめしたい。

 ここからは今回発表されたスマートフォン6機種、フィーチャーフォン1機種の内容をチェックしてみよう。各機種の詳しい内容については、本誌の速報記事を参照していただきたいが、それぞれのモデルはすでに発売されているものも含め、発表会時点で試用した印象に基づくもので、最終的な製品と差異があるかもしれないことはお断りしておく。

Xperia XZ2 Premium SOV38

 今年のMWC 2018で2つのカメラを搭載したカメラモジュールのみ発表され、4月に発表されたグローバルモデルの日本市場向けモデル。従来のXperiaシリーズのPremiumモデルはNTTドコモ向けのみに供給されていたが、au向けには初投入となり、Xperiaファンのauユーザーには待望の一台になる。

Xperia XZ2 Premium SOV38(ソニーモバイル)8月中旬発売予定

 注目のカメラはXperia XZ2などに搭載されてきた「Motion Eye」をデュアルカメラ化した「Motion Eye Dual」を搭載。1220万画素モノクロCMOSイメージセンサーと1920万画素カラーCMOSセンサーを組み合わせたもので、独自に開発した画像処理プロセッサー「AUBE」によって、両方のセンサーから読み出された信号を処理し、静止画や動画を生成する。モノクロ/カラー方式の特徴を活かし、暗いところでの撮影にも強いとしているが、静止画だけでなく、動画撮影についても暗所に強いとしている。しかも動画撮影は4K HDRに対応しており、4K相当の表示が可能な5.8インチディスプレイとの組み合わせにより、撮影から再生までをトータルでサポートする仕様となっている。

 今回展示されたのは開発中のモデルだったが、旧機種と並べて真っ暗な箱の中を写すデモでは明確な違いが見られ、最終的な仕上がりに期待が持てる内容だった。ボディはMWC 2018で発表されたXperia XZ2シリーズの流れをくんだデザインを採用し、背面に丸みを持たせ、指紋センサーを内蔵しているが、指紋センサーの位置が他機種に比べてやや中央よりで、間違ってデュアルカメラを触ってしまいそうになる。

 ワイヤレス充電に対応した影響なのか、重量は234g(暫定値)と重く、手に持ったとき、久しぶりにズッシリさを感じてしまう。ボディ幅も約80mmとワイドで、片手で端末を持ち、動画などを撮影するときはちょっと注意が必要だ。この他にも映像コンテンツやゲームなどを楽しむとき、内容に合わせて振動する「ダイナミックバイブレーションシステム」を採用するなど、エンターテインメントもしっかりと強化した「SONY」ブランドらしい一台と言えそうだ。

Xperia XZ2 SOV37

 今年のMWC 2018で発表されたXperiaシリーズの主力モデル。背面を丸みを帯びた形状に仕上げ、側面に備えられていた指紋認証センサーも背面に移動するなど、昨年11月に発売されたXperia XZ1までのデザインを一新している。

 Xperia XZ2 Premiumが4K相当の表示が可能な縦横比16:9のディスプレイを搭載しているのに対し、Xperia XZ2はフルHD+の表示が可能な縦横比18:9のディスプレイを搭載し、狭額縁の仕上げにより、前面のデザインも大きく印象が異なる。縦長ディスプレイを搭載していることもあり、Xperia XZ2 Premiumよりもスリムな幅72mmに収めているが、Xperia XZ2 Premium同様、ワイヤレス充電対応の影響か、厚さは11.1mmと、このクラスの端末にしては厚めで、重量も198gとやや重いのが気になるところだ。

Xperia XZ2 SOV37(ソニーモバイル)5月下旬発売

 カメラはXperia XZ1に搭載されたMotion Eyeをベースに、ソフトウェアの仕様などを変更し、960fpsのスーパースローもフルHD対応で撮影できるようにしている。動画撮影については4K HDRに対応しているが、ディスプレイはフルHD+なので、撮影した映像を本格的に楽しむには、4K対応テレビやディスプレイが必要になる。「ダイナミックバイブレーションシステム」などの仕様はXperia XZ2 Premiumと同様で、音量のアップしたフロントステレオスピーカーとも相まって、ゲームや映像コンテンツなど、エンターテインメントを楽しみたいユーザーに適したモデルと言えそうだ。

AQUOS R2 SHV42

 昨年、フラッグシップモデルをブランド統一して、人気を得た「AQUOS R」の後継モデル。シャープ初となるツインカメラを搭載しているが、他社の手法と異なり、SNSなどで撮影した動画をシェアするユーザーが増えていることを踏まえ、動画に注目し、動画専用カメラと静止画専用カメラで構成される。

 これまでの静止画カメラでも動画は撮影できたが、動画が求める画角やレンズ、画像処理エンジン、手ぶれ補正などは、静止画が求めるものと違うため、AQUOS R2では動画カメラが135度という超広角レンズを採用しているのに対し、静止画カメラは明るさや精細感を重視し、広角22mmでF1.9という明るいレンズを搭載する。手ぶれ補正も動画は電子式、静止画は光学式手ぶれ補正を採用する。動画用カメラと静止画用カメラは撮影時に自動的に切り替えられるが、動画撮影時はAIがベストショットと判断した構図を静止画カメラで自動的に撮影する機能も搭載されるため、ユーザーは動画撮影のみに集中できる。

AQUOS R2 SHV42(シャープ)6月上旬発売

 ディスプレイは従来モデルから大きく変わり、4つの角をラウンドさせつつ、上部にAQUOS R Compactと同じように、カメラ部をくり抜いた半円状のノッチ(切り欠き)のある6インチのWQHD+対応IGZOディスプレイを搭載する。ちなみに、一般的なWQHDと比べ、ノッチ部分が拡がる形状となるため、縦横比は19:9となっている。ディスプレイは従来モデルに引き続き、ハイスピードIGZOを搭載するが、表示のなめらかさと応答性能、消費電力をバランスさせるため、駆動周波数を従来の120Hzから100Hzに変更している。チップセットにSnapdragon 845を採用し、効率のいい放熱を行なうために、内部構造を一新するなど、従来モデルから大きく進化を遂げている。動画撮影で新しいエンターテインメントを楽しみたいユーザーにおすすめの一台だ。

Galaxy S9+ SCV39

 MWC 2018に合わせて開催された「Unpacked 2018」で、グローバル向けに発表されたサムスンのフラッグシップモデル。グローバルモデルをベースに、ワンセグやおサイフケータイなどの日本仕様が実装されている。

 昨年発売されたGalaxy Note 8に引き続き、背面にデュアルカメラを搭載するが、カメラモジュールは新たに設計されたものになる。広角と光学2倍相当の望遠という構成で、共に光学手ぶれ補正を搭載する。ユニークなのは広角側のカメラで、F1.5という明るいレンズを搭載しながら、周囲の明るさに合わせ、メカニカルに絞りをF2.4に抑える機構を内蔵する。これにより、暗いところではより明るく、明るいところでも高画質の写真を撮影できるようにしている。カメラの撮影機能としてはボケ味の利いた写真をはじめ、ぼかした背景の光の点を星形などに加工できる編集機能も搭載されるなど、SNSへの活用を強く意識した内容となっている。スーパースローモーションの動画撮影にも対応するが、あらかじめ設定した枠内に動く被写体が入り込むと、自動的にスーパースローモーションに切り替わるようにするなど、撮りやすさにも工夫が凝らされている。

Galaxy S9+ SCV39(サムスン電子)5月18日発売

 かねてからユーザーの要望が多かったステレオスピーカーも搭載し、AKGによってチューニングされたサウンドを楽しめるほか、DolbyAtomos対応の多次元サラウンドにも対応する。背面は指紋認証センサーが搭載されるが、レイアウトが変更され、従来モデルやGalaxy Note 8よりもアクセスしやすくなっている。虹彩認証にも対応するほか、各生体認証を組み合わせたインテリジェントスキャンに対応する。あらかじめ設定をしておけば、端末を手に取り、画面を見るだけでロックを解除できるため、ストレスなく、セキュリティをかけた状態で使うことができる。ディスプレイはQHD+対応の6.2インチ有機ELを搭載するが、縦長サイズのため、ボディ幅は74mmに抑えられている。この他にもAR絵文字など、SNSで活用できる独自の機能も数多く搭載されており、スマートフォンにより多くの機能とスペックを求めるユーザーの期待に応えるモデルに仕上げられている。

Galaxy S9 SCV38(サムスン電子)5月18日発売

 Galaxy S9+といっしょにMWC 2018に合わせて開催された「Unpacked 2018」で、グローバル向けに発表されたサムスンのフラッグシップモデル。グローバルモデルをベースに、ワンセグやおサイフケータイなどの日本仕様が実装される。基本的な仕様はGalaxy S9+と同じで、違いはディスプレイサイズ、カメラ、RAMの容量、バッテリー容量などに限られている。ディスプレイはGalaxy S9+よりもひと回り小さい5.8インチの有機ELで、表示は同じくQHD+に対応する。ボディ幅は69mmとコンパクトで、左右のデュアルエッジディスプレイの効果もあり、非常に持ちやすい。カメラはシングルだが、Galaxy S9+に搭載されている広角側のカメラと同じものが搭載されており、F1.5の明るいレンズに、周囲の明るさに合わせ、メカニカルに絞りをF2.4に切り替える機構を内蔵する。暗いところでの撮影はGalaxy S9+と並び、業界トップクラスと言って、差し支えない。

Galaxy S9 SCV38(サムスン電子)5月18日発売

 ちなみに、Galaxy S9+が6GBのRAMを搭載しているのに対し、Galaxy S9は4GBのRAMを搭載するが、関係者によれば、これはパフォーマンスに影響する違いではなく、デュアルカメラとシングルカメラによる違いを考慮したものだという。指紋認証や虹彩認証、インテリジェントスキャンをはじめ、ワイヤレス充電やおサイフケータイ、ステレオスピーカーなどの機能も同じで、モバイルネットワークの仕様もGalaxy S9+と共通となっている。機能差があまり多くない割に、au Onlineshopでの価格はGalaxy S9+の11万円超に対し、Galaxy S9は約9万5000円に抑えられている。どちらのGalaxyにするのかを悩むユーザーがいるかもしれないが、価格やボディサイズの好み次第で、Galaxy S9を選ぶのもアリと言えそうだ。

HUAWEI P20 lite HWV32

 今年3月、グローバル向けに発表されたHUAWEI P20シリーズの普及モデルで、昨年、SIMフリースマートフォンで驚異的な売り上げを記録したベストセラー「HUAWEI P10 lite」の後継モデルに位置付けられる。au向けのスマートフォンとしては、今年2月に発売されたHUAWEI nova2に続く、2機種めになる。

HUAWEI P20 lite HWV32(ファーウェイ)6月上旬発売

 ディスプレイはフルHD+対応の5.8インチTFTカラー液晶を搭載し、上位モデルと同じく、上部にノッチ(切り欠き)が備えられたデザインが特徴的。ノッチの左右の部分は非表示に切り替えることもできる。ボディ幅71mm、薄さ7.4mm、重量145gとコンパクトで持ちやすいサイズ感で、ボディの角を丸めた持ちやすい形状に仕上げられている。背面にはファーウェイ製端末でおなじみのダブルレンズカメラを搭載するが、HUAWEI P10やHUAWEI Mate 10 Proなどに搭載されたモノクロセンサーとカラーセンサーを組み合わせたダブルレンズカメラと違い、16Mピクセルのセンサーがメインカメラで、隣に備えられた2Mピクセルのカメラは深度測定用として利用される。この2Mピクセルのカメラで得られた情報を活かし、ボケ味の利いた写真などを撮影できるようにしている。

 基本的なユーザーインターフェイスは上位モデルを継承しており、ビューティーモードをはじめ、ファーウェイ製端末でおなじみの多彩な撮影モードも搭載されている。SNSなどで複数のアカウントを切り替えながら利用できる「ツインアプリ」など、便利な独自機能も搭載されている。おサイフケータイやワンセグなどには対応しないが、SIMフリースマートフォンでベストセラーを記録したモデルの後継だけに、幅広いユーザーに受け入れられるモデルになりそうだ。

かんたんケータイ KYF38

 Androidプラットフォームを利用したかんたんケータイの最新モデル。従来、販売されていた「かんたんケータイ KYF36」の後継で、同じ折りたたみデザインを採用しながら、新たに付属の卓上ホルダーにスピーカー機能を内蔵し、着信音やスピーカーフォンを大きな音で利用できるようにしている。70代を中心としたユーザーが持つことを想定し、帰宅時は卓上ホルダーに載せておくことで、マナーモードに設定していても着信時には卓上ホルダー内蔵のスピーカーから着信音が聞こえるようにしたり、通話時も卓上ホルダーに置いたまま、複数人で相手と通話できるようにしている。たとえば、孫と通話するとき、おじいさんとおばあさんでいっしょに通話するといった使い方を想定している。通話内容をすべて録音できる「あとから録音」を使い、相手と話した内容を通話終了後にもう一度、聞き直すこともできる。

かんたんケータイ KYF38(京セラ)7月下旬発売

 従来モデルに搭載されていた「テレビde写真」も受け継がれており、別売の「テレビde写真受信機」をテレビのHDMI端子に接続しておくことで、受信したり、撮影した写真を簡単にテレビに映し出すことができる。スマートフォン全盛の時代だが、幅広いユーザーの使い勝手もしっかりと考慮し、着実に使いやすさや利便性を追求した堅実なモデルと言えるだろう。

カメラ機能を充実させたが……

 スマートフォンに搭載される数々の機能の中で、今、もっともユーザーが高い関心を持っている機能のひとつがカメラであることは誰の目にも明らかだろう。auが今回、2018年夏モデルとして発表した7機種は、プレスリリースで「充実のカメラ機能と高画質な動画を楽しめるラインアップ」と謳われているように、カメラと写真、動画にこだわったモデルが揃えられている。

 なかでもこれまでauユーザーが指をくわえて見ているしかなかったXperiaシリーズのプレミアムモデルがラインアップに加わったことは、auのXperiaファンのユーザーにはうれしいところだろう。発売は少し先になるが、Xperiaシリーズ初のデュアルカメラが最終的にどのように仕上がるのかが楽しみだ。ただ、その半面、Xperia XZ2の存在感が少し弱くなってしまった印象は否めず、ユーザーとしてはどちらを選べばいいのかを迷ってしまいそうだ。

 今や定番の人気モデルとして定着したGalaxyは、従来モデルと違い、Galaxy S9とGalaxy S9+のスペック差があまり大きくなくなったこともあり、サイズ感のみでどちらでも選びやすくなった印象だ。すでに販売は開始されているが、Galaxy S9/S9+のカメラ、特に暗いところでの撮影については、一見の価値ありと言って差し支えない。

 これら4機種に対し、自らのユニークな路線でカメラに取り組んだのがシャープだ。他社とまったく手法を変え、静止画と動画の専用カメラをそれぞれに用意し、同時に利用できるようにすることで、今までにない新しい利用スタイルを生み出そうとしている。ある意味、シャープらしい取り組みであり、非常に好感が持てる。ファーウェイのHUAWEI P20 liteはSIMフリースマートフォンでベストセラーを記録したモデルの後継モデルであり、リーズナブルな価格でボケ味の利いた写真やビューティーモードのポートレートなどを楽しめるようにしている。

 カメラにこだわったモデルを取り揃えたラインアップであり、各機種ともそれぞれに特徴を持つモデルばかりだが、ひとつ気になるのは「auならでは~」と言えるモデルがない点だ。次回、別途、本連載で取り上げる予定だが、NTTドコモはauの説明会の翌々日、発表会を催し、この春、もっとも注目度が高いと言われていた「HUAWEI P20 Pro」を独占的に扱うことを発表し、関係者を驚かせた。auとしては、待望のXperiaのプレミアムモデル獲得で、NTTドコモのラインアップに対抗できるはずだったが、敵はさらに一歩先に進んでしまった格好だ。もちろん、au独自の機種をラインアップすれば、それに伴うリスクなども生じるため、必ずしもau独自のモデルが必須というわけではないが、カラーバリエーションの選択なども含め、もう少し端末ラインアップの構成に工夫が欲しいところだ。

 さて、こうなってくると、次に注目されるのは、今回の説明会の日に明らかにされた5月下旬開催と予告された次の発表会になる。どんなワクワクが待ち受けているのか、ユーザーとしてはじっくりと待ちたい。ちなみに、今回発表された夏モデルはすでに一部のモデルの販売が開始され、各地のKDDI及び沖縄セルラーの直営店などを中心に、順次、展示される予定だ。ぜひ、各店に足を運んでいただき、実機を手に取り、自分がワクワクする『この夏の一台』を見つけていただきたい。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめるiPhone X/8/8 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidタブレット超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門 改訂2版」、「できるポケット HUAWEI P10 Plus/P10/P10 lite 基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10 改訂3版」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。