本日の一品

コミュニケーションを妨げない、ながらイヤホン「ambie」

「ambie」。「ワイヤレスイヤホン」ではなく「ワイヤレスイヤーカフ」とわざわざプリントしているので、イヤホンと呼ばないほうがいいのかもしれない

 かなり昔のこと、「駅から会社までの道中、いつも大きなヘッドホンを着けているから、見かけても話しかけづらい」と言われたことがある。「何を聞いているのか」ときかれたのだが、何も聞いていないことがほとんど。なぜヘッドホンを着けているかというと、「話しかけられたくないから」というのがその理由だった。

 とはいえ、ヘッドホンやイヤホンをしている人がみな話しかけられたくないと思っているのかといえば、そういうわけでもないようで、純粋に「No music, No life」を実際にしていることもある。その上でいつも音楽と一緒に生活したいけど、コミュニケーションも取りたい……。そう考える人に最適なのがながらイヤホン「ambie」(アンビー)だ。

 ambieは、イヤホンとしては少し変わった形をしている。耳たぶをはさむイヤーカフのようなデザインで、音は耳孔近くに空けられた穴まで音導管で届けられる。そのため耳の穴は、ambie装着中でも、オープンでフリー。

ambieを横から見たところ。クリップのようにして耳介をはさみ固定する
耳孔近くまで音を運ぶ音導管。音は写真下部にあるドライバーユニットで生成される

 音の出る穴と耳の穴の間に空間があるので、「周りの音が大きいと音が耳まで届かない」「純粋に音楽を楽しめない」「音質に期待できない」「音量を大きくしすぎると周りに再生中の音楽が丸聞こえになる」といったデメリットが生じる。

 とはいえ、それらを上回るメリットがあると筆者は感じている。ひとつは何も着けていないときと同じように周りのことが聞こえるため、さまざまな危険を回避できること。別の点は、耳孔をふさぐイヤホンにありがちな体内音(血流の「サーッ」というものや心音など)が聞こえて不快になることがない、というものだ。そのほかのメリットについては後述する。

 音漏れをデメリットのひとつとして挙げたが、実を言えばそれほど気にすることでもないように感じている。中レベルの音量では、周りに聞こえることがなかったからだ。もしかすると、某開放型のイヤホンのほうが音漏れが激しいのでは? と思うほど。とはいえ、電車に乗っているときなどはボリュームを上げがちなので、ひとりで行動する際には使わないほうが無難かもしれない。

 音質も「期待できない」と書いたが、確かに低音は弱い。だが、ボーカルが伸びやかで高音がはっきり聞こえるという感じで、悪くはない。「ドライバーユニットはソニーの音響技術による」というのをサイトで読んだので、そのプラシーボ効果なのかもしれないが……。

イヤホンをしているのに会話できる不思議な感覚

 ambieは、耳の穴がオープンになっているため、外部の音も普通に聞くことができる。いつものように道を歩く、買い物をする、自転車に乗るという行為に自分だけのBGMが追加されたようなイメージ。車が後ろから近づく音や、風で木の葉が揺れる音、公園で遊ぶ子どもたちの声が、自分の好みの音楽とともに聞こえてくる、というのはなんとも新鮮な感覚だ。

装着していても、耳の穴はしっかり空いている。自分専用のスピーカーを持ち歩いていて、これまた自分専用のBGMといつも一緒に行動しているような感覚だ

 耳をふさいでいないので、会話もスムーズになる。ふたりで同じ動画を視聴しながらああでもないこうでもないと意見を言い合えるのではないかと思い、Bluetoothトランスミッターを使って、ひとつのスマホを音源にし、2台のambieに音を分配してみた。有線に例えるなら、イヤホンジャックを分岐させてカップルで聞けるようにするようなアレだ。

 試してみたところ、スピーカーから音声を流しているのと同じような会話ができた。これが耳をすっぽりと覆うヘッドホンや、耳の穴をしっかりふさぐインイヤーイヤホンであれば、「え? え!?」と何度も聞き返すはめになってしまい、会話が成立しないばかりでなくお互い不機嫌になるのがオチだろう。耳の穴がフリーになっているだけなのに、こんなにも日常会話に支障がなくなるのだ。

 アクセサリーのようにしか見えないことも、話しかけやすさや会話の続けやすさのハードルを下げているのではないか、と感じる。

 自分の声が何も着けていないときと同じように聞こえるので、カラオケの練習にもいいのではないか? と思い、JOYSOUNDが提供しているカラオケアプリをダウンロードして練習してみた。今までのヘッドホンやイヤホンでは、歌っている自分の声の高さがよくわからず、音程を外しまくっていたが、ambieではカラオケボックス並みの音量で音楽が聞こえ、同時に自分の声もきちんと聞こえるため、音程が取りやすい。おかげで予想以上に良い点数を取れて大満足。

 耳孔をふさがないので、圧迫感がないし、頭痛が起きづらいし、夏など汗をかきやすい時期に蒸れることもない。耳の形にもよるが、わたしの場合では、6時間ほど装着していてもつらくなるようなことはなかった。

 使いはじめがカンタンなところも良い。NFCに対応しているので、Android端末であれば、ほんの一瞬でペアリング設定が完了する。マルチポイントモードにすれば、2台の端末と接続し、両機器からの着信を受けられるので、仕事用とプライベート用の端末を持ち歩くユーザーにもありがたい。

右側に電源、再生(一時停止、受話、終話)などの操作ボタン。NFCもこちら
左側に音量アップ(長押しで曲送り)、ダウン(長押しで曲戻し)操作用ボタン

 話しかけやすく、「聞こえているのかな?」という不安を抱かせない形をした「ながらイヤホン」ambieは、音楽を生活の一部にしつつ、ほかの人との関係も大切にしている人にうってつけ。今後も可能性を探っていきたいと感じさせられる、ひさびさにワクワクしたアイテムだ。

製品名販売元実売価格
ambie wireless earcuffsambie1万2960円