ケータイ用語の基礎知識

第876回:aptX Adaptive とは

 「aptX Adaptive」は、米クアルコム(Qualcomm)が2018年に発表したイヤホン・ヘッドホン向けのオーディオコーデックです。

 音質や遅延、さまざまな環境で利用できることなど、性能向上を目指して開発されました。

 データ伝送レートでは、279~420kbpsのVBR(Variable Bit Rate、可変長ビットレート)が採用されています。イヤホンとスマートフォンのような音楽を再生するデバイスとの間で、互いに電波状況をやり取りして、環境の良いときには高速で、環境のよくないときには低速で通信を行います。

 Bluetoothが用いる周波数帯(電波)である2.4GHz帯が混雑する場合などで、途切れにくくなるといった効果が期待できます。クアルコムが日本国内で10月に開催した説明会では、そうした電波が混雑する例として電車内が挙げられています。また遅延については、Android 9 PieのAOSP(Androidオープンソースプロジェクト)を用いた環境で80~100ミリ秒以内になることが想定されています。

 クアルコムでは英国サルフォード大学による調査結果を紹介しています。それによれば6カ月間、96kHz/24bitのオリジナル音源と、420kbpsのaptX Adaptiveと体験したところ、「統計的に著しい違いは無かったという結果が得られた」としています。

対応機種は2019年中頃に登場か

 これまでも主にAndroidスマートフォンで、BluetoothのオーディオコーデックとしてaptXシリーズが採用されています。「aptX」のほか、48KHz/24bitまでのハイレゾに対応した「aptX HD」、40ミリ秒未満の遅延で再生できる「aptX Low latency」といった規格です。

 こうしたラインアップは少し整理されており、今回紹介する「aptX Adaptive」は、従来のaptX、aptHDの機能を含む互換性を持ち、aptX Low Latencyを置き換える形となります。

 aptX Adaptiveを再生するためのデコーダー、デコーダーチップ「QCC5100」「CSRA68100/68105」は既に出荷が開始されています。スマートフォンメーカーがいつ採用するかによりますが、クアルコムでは対応製品が登場するのは、2019年半ばと予測しています。

 Androidの最新バージョンであるAndroid 9 Pieでは、12月頃からサポートされる予定です。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)