スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

エレキもiPhoneも全部ワイヤレスのアンプ!

じつに良いRolandの「BOSS KATANA-AIR」

 以前から気になっていた「ギターの音をワイヤレスでアンプに飛ばす機材」。最近結構イロイロ出ていて、評判も悪くない様子。なかでも超気になっていたのがRoland(ローランド)はBOSS(ボス)ブランドから2018年4月に発売された「BOSS KATANA-AIR」(公式ページ)です。

 KATANA-AIRは、有線でも無線でも使えるギターアンプで、無線で使うときは専用ワイヤレスアダプターをギターにセットすればOK。ギターのシールドケーブル無しでワイヤレス演奏が可能になるという製品です。実勢税込価格は4万3200円で、ミョーに高いので躊躇していたわけですが、「日本メーカー製ならまあ安心だし」と思って購入しました。

Rolandの「BOSS KATANA-AIR」。有線/無線両対応のギターアンプで、ギターにトランスミッターを挿せばワイヤレスで使えます。出力は30W(15W+15W/ACアダプター使用時)もしくは20W(10W+10W/単3形電池使用時)で、ステレオBluetoothスピーカーとしても使えます。電源は専用ACアダプターのほか、単3形電池(アルカリ電池/ニッケル水素電池)×8本。アンプの各機能はスマートフォンなどから制御できますので、ギター音伝送からアンプ操作まで含めて完全ワイヤレスで使用可能です。

 9月に買って約2カ月弱使っていますが、コレ、非常にイイです。躊躇せずもっと早く買えば良かったと思うほど、使い勝手もいいし音もいい。とくにワイヤレス関連が良く、スマートフォンともスマートに連携。BOSSすげー! とか喜びつつ使い続けている感じです。ともあれ移行、KATANA-AIRの機能や使用感についてレビューしてみます。

あ~ら手軽♪ すご~く身近♪

 KATANA-AIRを使い始めてすぐ感じたのは、エレキギターがより手軽&身近になったこと。エレアコとエレキギターを使っていますが、どちらも演奏時はギターアンプにつないでいました。でも、KATANA-AIRの場合は「つながなくてOK」なのが便利。シールドケーブルが要らないんです。

KATANA-AIRのトランスミッターをギターに挿すだけでOK。シールドケーブルを扱わずに済むのは予想以上に快適です。ちなみに、トランスミッターはKATANA-AIRに挿しておくと充電されます(アンプ電源オフ時以外/USB充電も可能)。

 KATANA-AIR購入前、躊躇していたんですが、その理由は「部屋のなかでギター弾くのにワイヤレスにする必要ってあるか?」ということ。シールドケーブル1本使えばいいだけですし、どうせ座って弾くんだからワイヤレス化なんて必要ないような……みたいな。

 でも実際にワイヤレスにすると、シールドケーブルを扱う手間も無ければ、ケーブルが邪魔になることもありません。うっかりと椅子のキャスターでケーブルを踏んじゃうとか、ケーブルで小物を引っ掛かけて床に落としたとか、そういうフラストレーションも皆無。

 電気ナシで弾けるクラッシックギターやウクレレなどのアコースティック楽器って、パッと手に持ってすぐ弾き始められるし、弾き終えたら置けば終了で、手軽じゃないですか。手軽に弾けるから身近。KATANA-AIRは、エレキギターにそういう手軽さ身近さをもたらしてくれました。

 細かい話をしますと、実際はもっと快適です。筆者の場合、弾くときに、シールドケーブルをギターとアンプに接続。弾き終えたら、シールドケーブルを抜いて、ギターやアンプを片付けていました。

ギターやアンプは本棚に吊したり立てたりして保管しています。アンプは小型で電池でも使えて音もいいヤマハ「THR10 (V.2)」(レビュー記事)。弾くときだけギターやアンプを出してシールドケーブルでつないでいました。ギターを弾く場所は仕事場。各種機材テストや撮影なんかもするので、スペースの都合上、弾き終えたらまた本棚に片付けるというスタイル。

 で、KATANA-AIRを使い始めてからはシールドケーブルを扱う必要がなくなって手軽化したんですが、ギターを手にする頻度も上がりました気がします。シールドケーブルの小さな面倒が「ギターはまたでいいや~」的な気持ちを起こしていたんだと思います。KATANA-AIRなら棚からアンプとギターを出してトランスミッター挿す程度ですから、「あっ今すぐ弾こう!」という気分になりがちです。

 また、じつはKATANA-AIR、アンプの電源を入れたりギターにトランスミッターを挿したりする必要も(あまり)なかったりします。アンプは電源入れっぱなしで、トランスミッターはギターに挿しっぱなしでOK。KATANA-AIRを一定時間使わないと、トランスミッターもアンプもスタンバイモードに移行します。省電力な待機モードですね。

 そしてトランスミッターが振動を検知すると、トランスミッターもアンプも自動的に電源オンとなってワイヤレス接続が再開。すぐに音を出せる状態になり、ギターを弾くことができます。なお、スタンバイへの移行時間は専用アプリ「BOSS TONE STUDIO」から設定でき、5分/15分/30分から選べるほか、オフにすることもできます。

スマートデバイス用アプリ「BOSS TONE STUDIO」。画像はiOS版ですが、Android版もあります。このアプリからKATANA-AIRの各機能を制御でき、スタンバイへの移行時間など細かな設定もできます。

 スタンバイモードがあるので、アンプは電源入れっぱなしで、ギターにはトランスミッター挿しっぱなしで使っちゃってもOK……というかそのスタイルが超便利&ラクなので、ついそうしちゃいます。もちろん、使用時間に応じてトランスミッターを充電する必要が出てきますし、アンプ側も電池で使っていたら電池交換が必要です。でもトランスミッターは満充電から連続約12時間使用可能。アンプ側も電池使用で約7~10時間(電池種による)使えます。

 ともあれ、このスタンバイモードにより、「弾こうかな」と思ったらギターを手に取って弾くだけでOKとなり、弾き終えたらギターを置くなり吊すなりすればよくなりました。結果、エレキギターがすご~く手軽ですご~く身近になったというわけでした♪

音の遅延はどうよ?

 ワイヤレスで音モノと言うと、気になるのがレイテンシー(音の遅延)やノイズです。KATANA-AIRによるワイヤレスなエレキギター環境ってマジでホントに快適なんですが、その快適さと、レイテンシーやノイズ、もしかしてトレードオフな部分がある?

 とか思いがちですが、筆者的感触では、KATANA-AIRには遅延が感じられません。率直なところ「遅延は全然ない!」みたいな印象です。

 KATANA-AIRの発売後、7月にワイヤレスのトランスミッターのみの製品も発売されました。「WLシリーズ」(ニュースリリース)の3モデル。これらにもKATANA-AIRの独自ワイヤレス技術が使われていて、その遅延は2.3ミリ秒(0.0023秒)だそうです。

エレキギター用のワイヤレスアダプター「WL-20」(公式ページ)。手持ちのエレキギターとギターアンプに挿すだけでワイヤレス化できます。このほか、様々な電子楽器に対応する「WL-20L」、コンパクト・エフェクター・サイズでペダルボードへ組み込むのに向く「WL-50」が発売されています。これらWLシリーズの遅延は2.3ミリ秒(0.0023秒)。

 KATANA-AIRの遅延は数値として公表されていないようですが、後発の「WLシリーズ」と同等か、もしくはそれより長い遅延時間があるかもしれません。でも、よ~く注意深く聴いても遅延がわからないレベル。とは言え、筆者がわからないだけかもしれませんので、気になる方はぜひ実機で音を出してみてください。

 ノイズですが、一度だけ経験しています。KATANA-AIRには非対応のギター(メーカーQ&A)があるんですが、それに該当するヤマハのサイレントギター「SLG200N」(レビュー記事)とつないだとき、連続的な小さなノイズが出ました。

 メーカー的には非対応だけど、なんだサイレントギターとKATANA-AIRってつながるじゃん! でもノイズ出るけど……みたいな経験。サイレントギターとKATANA-AIRについては後述しますが、そのとき一度だけノイズが出て、その後は経験していません。

 ちなみに、電源オンの状態でKATANA-AIRアンプ側にトランスミッターを挿すと、自動的に周囲の2.4GHz帯の無線を10秒間確認して最適な周波数を選んで改めてワイヤレス接続するとのこと。筆者も時々この操作を行っているんですが、そのためか無線接続が不安定になったりノイズが出たりした経験は上記の一度しかありません。

 KATANA-AIRを使って人前で演奏をするときなど、上記操作を行うとノイズなどのトラブルが減らせるかもしれないので、いいかも。また、KATANA-AIRはPCとUSB接続して、その出音をそのままPCで録音できますので、その場合にも上記操作を行った方がいいのかもしれません。

スマートフォンとつながるンだ!

 KATANA-AIRはスマホやタブレットなどスマートデバイスとの接続性も良好です。2パターンでつながりまして、ひとつはKATANA-AIRとスマートでバイズをBluetooth接続して、KATANA-AIRをステレオBluetoothスピーカーとして使うパターン。もうひとつは、KATANA-AIRとスマートデバイスをBluetooth MIDI接続し、スマートデバイスからKATANA-AIRをコントロールするというパターン。もちろん両パターンを同時に行えます。

 まずBluetoothスピーカーとして。購入前はそーんなに期待していなかったんですけど、音質はクセがなくて良好。ステレオの分離もなかなか良く、音楽をじっくり楽しめるレベルだと思います。また、YouTubeなどの動画の音声を鳴らした場合でも、遅延があまりなく、トーク番組などもまあ楽しめる範疇。スマートデバイス用の汎用Bluetoothスピーカーとしてイイ感じです。

 スマートデバイスの音楽をKATANA-AIRで流しつつ、同じKATANA-AIRからギター演奏の音を流すことも、もちろんできます。有名曲の練習とか、曲に合わせてセッションとか。なお、スマートデバイス上の音はそのまま(KATANA-AIRのエフェクトなどとは関わりなく)出ます。

 それからスマートデバイスからKATANA-AIRをコントロールするパターン。スマートデバイス側に「BOSS TONE STUDIO」をインストールし、Bluetooth MIDI接続を経由してKATANA-AIRを操作するわけですが、KATANA-AIRの大半の機能をスマートデバイスから使えます。たとえば、アンプのツマミを手でいじる必要はありません。ぜーんぶスマホ側から操作可能。

KATANA-AIRアンプ部上にあるツマミ類。通常のギターアンプだとこの部分に手を伸ばして音質などを変えていきますが、KATANA-AIRの場合はスマートフォンなどから操作できます。
「BOSS TONE STUDIO」で操作。アプリ側の操作で、音量や音質やエフェクトなどをリアルタイムで調節できます。
調節したパラメーター一式は、アプリ内あるいはKATANA-AIRに保存できます。KATANA-AIR本体側の設定をアプリにコピーすることも可能。無料でダウンロードして使える設定済みパラメーターセットも多々あります。
ほか、チューナー機能があったり、本体ではできない細かな設定が行えたり、アンプ部やトランスミッター部の電池残量がわかったり。もちろんタブレットからでも行えます。

 という感じで、KATANA-AIRがちょっと遠くにあっても、アプリからほとんどの操作・調節が可能です。アンプに触れる必要ナシ。また、アプリの使用感・機能も良好で、非常にしっかり作り込んであるところも好印象。やるなBOSS! みたいな感じです。

 大きな難点は感じられませんが、強いて挙げれば、本体操作部右側に並ぶ小さな横型ボタンの操作性がイマイチなところ。押しにくいわけではないんですが、ボタン上部に内蔵されたLEDが光って状態を示すタイプのもので、押しているときに何色に光っているのかわらないんです。

 たとえばプリセットのパラメータを呼び出す場合、ボタン上部の発光色がグリーンなのかレッドなのかオレンジなのかで呼び出されるパラメータを判断するわけですが、ボタンを押すと指でボタンが隠れて何色で光っているのか不明。「一度押したら指をボタンから外すように離す」を繰り返せばいいんですが、なーんか腑に落ちない操作感です。ボタンとLED発光部を離した設計にして欲しかったところ。まあ操作に慣れればさほど気にならなくなりますが。

 てな感じのKATANA-AIR。予想を遙かに超えた良さがあるワイヤレスギターアンプです。もう今後はギターもワイヤレスじゃないとイヤ! みたいな気分。とても快適でナイスな製品ですので、興味があればぜひ一度実機を試してみてください♪

おまけ KATANA-AIRでは使えないギターについて

 最後にちょっとオマケ。KATANA-AIRにはメーカーが公式に「非対応」としているギターがあります。具体的にはBOSSのQ&Aページにあるとおり。以下に抜粋しておきます。

KATANA-AIRの仕様が制限されるギター

・OUTPUT端子がステレオ標準タイプ(TRS標準タイプ)の機器 → L側(Tip側)の信号のみ出力されます。

KATANA-AIRが対応しないギター

・取り付けジャック部分にトランスミッターを取り付けるための空間(直径18.5mm、深さ 5mmの円柱状の空間)が確保できないギター

・一部のアクティブ・ピックアップ搭載ギター → 一般的なTRSジャック出力の配線方法は、Tip=オーディオ、Sleeve=グラウンド、Ring がバッテリー・グラウンド用です。稀にこのRingとSleeveが逆に配線されているギターがあり、その場合は、ギターのアクティブ回路が正しく動作しません。

・YAMAHAサイレント・ギター → 電気的な配線仕様のため動作しません。

 ヤマハのサイレントギターを使っている筆者は、最後の「電気的な配線仕様のため動作しません」という冷酷な内容を読んで「ズギャーン!」とか一時的に滅亡した気分になりました。が、その後探してみると回避策……っぽい情報が。

 KATANA-AIRとは全然別の製品で、LINE6の「RELAY G10」(公式ページ)という製品があります。これもエレキギターをワイヤレス化する機材。最初コレを買おうと思っていたんですけど、これもヤマハのサイレントギターだと問題が起きるという情報がありました(RELAY G10のQ&A)。ただ、これには回避策があり、トランスミッターの間にモノラル変換プラグを入れるという方法です。

LINE6「RELAY G10」の場合、トランスミッターとギターの間にモノラル変換プラグを噛ませると、トラブルを回避できるとのこと。※画像はRELAY G10のQ&Aより抜粋。

 これを見て「じゃあKATANA-AIRも同じ方法でイケんじゃね? 似たような製品だし!」とか根拠不明で雑で大胆なことを思いまして、同じ方法をKATANA-AIRで試してみました。結果、KATANA-AIRは手持ちのサイレントギター(SLG200N)で使えました。やった~♪ でもやるなら自己責任でネ!

KATANA-AIRとサイレントギター(SLG200N・ほかの機種は未検証)を組み合わせる場合、ギターとトランスミッターの間にモノラル変換プラグを入れればいいようです。しかし、サイレントギターにプラグを装着すると体に当たりがちなので、筆者はモノラルメス・モノラルオスの変換ケーブルをつくって使用しました。

 ただ、後々いろいろ検証してみたところ、サイレントギター(SLG200N)にKATANA-AIRを接続したときの問題は、トランスミッターをサイレントギターに挿しても「サイレントギター側の電源が自動でオンにならない」というだけっぽいです。……ほかにもあるかもしれませんが発見していません。

 なので、サイレントギターにトランスミッターを挿して、サイレントギター側の電源スイッチを押せば、上のような変換プラグ類は要らないっぽいです。ていうかその方法で使えております。でもやるなら自己責任で(←くどい)。以上、ごく一部の人に役立つかもしれないピンポイント情報でした。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。