法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

国内初のディスプレイ指紋認証を搭載、UQ mobile「OPPO R17 Neo」

 2018年に国内のモバイル市場に参入し、次々と新モデルをリリースしてきたOPPO。これまではオープン市場向けにSIMフリー端末を展開してきたが、年末商戦へ向けて、「UQ mobile」独占販売を実現した新モデル「R17 Neo」が発表された。発売に先駆け、ひと足早く実機を試すことができたので、レビューをお送りしよう。

OPPO「R17 Neo」、約158.3mm(高さ)×75.5mm(幅)×7.4mm(厚さ)、約156g(重量)、レッド(写真)、ブルーをラインナップ

日本市場でのビジネス定着を目指すOPPO

 現在、国内のモバイル市場には、ケータイからスマートフォンへの移行に生き残った国産メーカー、ケータイ時代から国内市場で事業を展開する海外メーカー、スマートフォンで新たに国内市場に参入してきた海外メーカーなどが存在する。

 国内のモバイル市場は1990年代の第二世代携帯電話が「PDC」という国内独自の方式だったこともあり、海外メーカーの活躍は限られていたが、2000年代の3G時代に入ると、ノキアやモトローラなどがグローバル向けの端末を国内向けに投入して、注目を集めた。2000年代末から2010年代は言うまでもなく、スマートフォンの時代であり、2010年代前半はNECやパナソニックといった国内のメーカーが撤退する一方、サムスン電子やLGエレクトロニクスといった既存の海外メーカーに加え、AppleやASUS、ファーウェイなども日本市場にスマートフォンを投入し、シェアを拡大していった。

 ここ数年はSIMフリースマートフォンを扱うオープン市場も機種数が増え、ユーザーからの注目度も高くなっているが、各調査会社のデータなどを見ると、まだまだオープン市場の規模は限定的で、各携帯電話会社が販売する規模には遠く及ばないと言われている。つまり、国内のモバイル市場で勝ち残っていくためには、各携帯電話会社とのビジネスが大きなカギを握っているわけだ。

 そんな国内のオープン市場に2018年1月に参入し、アグレッシブな戦いをくり広げているのが中国の「OPPO」だ。本誌でもニュースで取り上げられ、本連載でも第一弾「R11s」や第二弾「R15 Pro」「R15 Neo」のレビューを紹介してきた。いずれも完成度の高い製品だが、如何せん、「OPPO」というブランドがまだ日本で認知されておらず、店頭やオンラインでの販売はまだ十分な結果を残せていないのも実状だ。

2018年1月に「R11s」で日本市場に参入したOPPO

 一部では「国内市場向けは採算を度外視?」などの見方も伝えられているが、これまで国内で製品を展開したことがなく(オーディオ製品は出したが……)、国内市場の9割近くを各携帯電話会社(大手キャリア)での販売が占めている現状を鑑みれば、致し方ないというのが実状だろう。むしろ、そんな制約の中、本誌を含め、専門メディアにも着実に露出が増えているのは、それだけ製品そのものにポテンシャルがあるからだと見る向きも多い。

 そんなOPPOがいよいよ「UQ mobile」の独占販売という形で供給するのが「R17 Neo」だ。UQ mobileはauからネットワークを借り受け、サービスを提供するUQコミュニケーションズのMVNOサービスだが、携帯電話会社ではないものの、UQコミュニケーションズとしてはauにWiMAX 2+のネットワークを貸す立場にあり、KDDIの子会社という立場では、auの『サブブランド』に位置付けられる。

 こうした携帯電話会社に近い立場のUQ mobileが独占販売として、端末をラインナップを加えることは、au向けに供給された端末の同等品を扱うケース以外にあまり例がなく、UQ mobileとしてのR17 Neoに対する期待の高さをうかがわせる。

 また、R17 NeoはこれまでのOPPO製品の流れを継承しながら、国内初のディスプレイ内蔵指紋認証や水滴型ノッチスクリーン、AI対応のカメラなど、価格面以外にもアドバンテージがあり、注目点の多い端末だ。UQ mobileが独占販売という形を採っているが、端末としてはSIMフリーであり、デュアルSIMのSIMカードスロットに他事業者のSIMカードもそのまま装着して利用できるなど、自由度の高さもオープン市場を重視するユーザーにも納得できる仕様となっている。

6.4インチOLEDに国内初のディスプレイ指紋認証を搭載

 まず、外観からチェックしてみよう。これまで国内市場向けに発売されてきたモデルも含め、美しい仕上がりのモデルをラインナップしてきたOPPOのスマートフォンだが、今回のR17 Neoも背面から側面にかけて、印象的なボディカラーをあしらい、スリムなボディに仕上げられている。前面のディスプレイ側がフラットであるのに対し、背面側は両端が湾曲しており、手にフィットする持ちやすい形状となっている。

 7.4mmというスリムなボディながら、下面にはmicroUSB端子に加え、3.5mmイヤホンマイク端子も備える。ただ、この時期にmicroUSB端子という仕様はやや残念な印象は否めない。右側面には電源キー、左側面には分割タイプの音量キーを備える。防水防塵には対応しておらず、R15 Proで採用されたおサイフケータイにも対応しない。このあたりは価格帯を考慮すると、しかたないだろう。

 本体前面には2340×1080ドット表示が可能な6.4インチの有機ELディスプレイを搭載する。画面の縦横比は19:9で、画面占有率は91%となっている。ディスプレイの上部には後述するインカメラが内蔵されているが、ノッチ部分はカメラのみの水滴型で、iPhone XSなどの凹型に比べると、存在があまり邪魔にならない。端末を横向きにして、動画を視聴したときは、ノッチ部分よりも内側で表示されるため、自然に視聴することができ、拡大表示時もノッチ部分が水滴型のため、凹型に比べると、違和感が少ない。

 画面最上段のステータスバーには右側にバッテリー残量など、左側にネットワークのアンテナピクト、時刻などが表示される。非常に細かい表示だが、VoLTE対応なども表示される。設定を切り替えることで、バッテリー残量をパーセントで表示したり、ネットワーク速度を表示することもできる。

 本体には3600mAhの大容量バッテリーを搭載する。R15 Proなどが対応していたOPPOの急速充電規格「VOOC」はサポートされていないが、5V 2Aでの充電が可能で、設定画面の[電池]では予想される残りの利用可能時間が表示されるほか、省エネモードにも対応する。一般的な利用であれば、それほどバッテリー残量の減り具合を気にすることは少なさそうだ。

背面はデュアルカメラとロゴのみのすっきりとしたデザイン。パッケージには背面に装着するカバーも同梱される
左側面は音量キー、ピンで取り出すタイプのSIMカードトレイを備える
右側面は電源キーを備える。アウトカメラはわずかに突起している
下面にはmicroUSB外部接続端子、3.5mmイヤホンマイク端子を備える
ノッチはインカメラのみを内蔵した水滴型
SIMカードトレイは2枚のnanoSIMカードとmicroSDメモリーカードを装着できるトリプルカードトレイ
UQ mobile独占販売のため、UQ mobileのAPNは出荷時に設定されているが、他事業者のAPNは同じauのネットワークを利用するMVNOも含め、何も登録されていない
UQ mobileの「ポータルアプリ」がプリインストールされる。データ残量が確認できるほか、ターボ高速のON/OFFが切り替えられる
設定画面内の[電池]では残量を確認できるだけでなく、予想される利用時間なども確認できる

 そして、R17 Neoの最大の特徴のひとつとも言えるのがディスプレイ指紋認証だ。指紋センサーによる指紋認証は従来から数多くの端末に搭載されてきたが、指紋センサーを備える場所が前面か、背面か、側面かによって、操作性が大きく変わってしまううえ、指紋センサーが本体をデザインするときの制約になってしまうという側面もあった。R17 Neoに搭載されたディスプレイ指紋認証はディスプレイの内側に指紋センサーと光源を内蔵することで、指紋の登録と認証を行なえるようにしている。このしくみはすでにグローバル向けに発表されているHUAWEI Mate 20 Proなどにも搭載されているが、国内向けはR17 Neoが初搭載になる。

ディスプレイ指紋認証の設定画面。下の指紋のアイコンの部分に指先を当てて、登録する
ロック画面に表示されたディスプレイ指紋認証画面。画面の下に表示されている指紋のアイコン部分に指先を当てて、認証する

 実際の操作感については、指紋登録時の操作が一般的な外付けタイプの指紋センサーなどに比べ、少し時間がかかる印象も残るが、ロック解除をするときは画面中央に指紋を読み取る位置が表示され、指先を当てれば、すぐに認証される。今回試用した限り、認識率は外付けタイプの指紋センサーに比べ、やや下がるかどうかというレベルで、実用面ではほとんど不満を感じることはなかった。

 ただ、ディスプレイ指紋認証で注意が必要なのは、購入後にディスプレイに保護フィルムや保護ガラスを貼ったり、ディスプレイのガラスを割ってしまうと、指紋認証に影響が出てしまうかもしれない点だ。ちなみに、R17 Neoは実使用が可能な保護フィルムが出荷時に貼られているため、購入後に貼らなくても安心して使うことができる。ちなみに、UQ mobileでは「端末補償サービス」(月額380円)を提供しており、R17 NeoもUQ mobile端末になるため、補償サービスを受けることができる(市販のSIMフリー端末は対象外)。

 また、ディスプレイ指紋認証と併用できる顔認証にも対応する。顔認証は本体前面のノッチに内蔵されるインカメラで認証するものだが、よく似た顔などで解除される可能性があるうえ、マスクを付けたり、サングラスをかけていると、認証に失敗することがある。よりセキュアに使うのであれば、ディスプレイ指紋認証のみを使う方が望ましいが、一般的な利用であれば、ディスプレイ指紋認証と顔認証を併用する形でも問題なさそうだ。この2つの認証を利用することにより、端末を手に持ったときは顔認証、机の上などに置いてあるときはディスプレイ指紋認証といった使い分けができる。

 チップセットは米Qualcomm製SDM660、RAM 4GB、ROM 128GBで、最大256GBまでのmicroSDメモリーカードに対応する。本体のストレージが128GBと、このクラスのモデルにしては大容量なうえ、microSDメモリーカードは2枚のnanoSIMカードと同時に利用できるトリプルカードスロットを採用しているため、本体により多くのデータを保存できる。

 UQ mobile独占販売ではあるものの、対応する通信方式とバンドは他の製品とほぼ同じで、auのネットワークを利用した他のMVNO、NTTドコモやソフトバンクのネットワークなどでも利用でき、VoLTEにも対応する。プラットフォームはAndroid 8.1をベースとしたOPPO独自のColor OS 5.2を搭載する。インストールされているアプリはホーム画面にすべて表示されるユーザーインターフェイスだが、従来に比べ、基本的な使い勝手はAndroidプラットフォームに近付いた印象で、ストレスなく、利用できる。よく使うアプリを登録しておくことができる「スマートサイドバー」なども用意されているうえ、カスタマイズが可能なメニューも数多く用意されている。

ホーム画面にアプリが登録されているユーザーインターフェイス。UQ mobileのアプリも標準でインストールされている。時計が表示されているウィジェットは時刻をタップして[時計]アプリ、天気予報をタップして[天気]アプリ、日付をタップして[カレンダー]アプリを起動できる
ホーム画面の2ページ目。最下段のDockは固定表示。[あんしんフィルター for UQ mobile]や[ギガぞう開始]などのアプリもプリインストールされている
ホーム画面の1ページ目を右方向にフリックすると、通知画面が表示される。このあたりの操作性はiOSに近い
設定画面の[通知とステータスバー]ではステータスバーのカスタマイズが可能。ネットワーク速度の表示は珍しい
ナビゲーションキーはユーザーの好みに合わせて、カスタマイズが可能
「スワイプアップジェスチャーナビゲーション」を選ぶと、iPhone XなどのようなUIになる
スマートサイドバーを有効にすると、画面の端から内側にスワイプするとよく使う機能などが表示される
ステータルパネルは各機能のほか、計算機などのアプリも起動できる。配置は自由に並べ替えることができるほか、他の機能も追加できる
設定画面の[キッズスペース]は子どもが利用することを考慮し、さまざまな機能をオフにできる。スマートフォンでは意外に採用例が少ない機能のひとつ

A.I.対応デュアルカメラ&ビューティーカメラ

 OPPOは国内市場参入時の会見でもアピールしていたように、グローバル市場では「Camera Phone」のキャッチコピーを使うなど、スマートフォンのカメラ機能に注力してきたことで知られる。今やほとんどの端末がサポートするビューティーモードも世界で初めて搭載したとアピールするなど、カメラに対する強いこだわりを持っている。

背面のデュアルカメラは周囲にメタルパーツをあしらったデザイン。やや突起があるので、付属のカバーの装着がおすすめ

 今回のR17 Neoでは背面にソニー製IMX398の1600万画素イメージセンサーに、200万画素のイメージセンサーを組み合わせたA.I.デュアルアウトカメラ、前面の水滴型ノッチにソニー製IMX576の2500万画素イメージセンサーによるA.I.ビューティーカメラを搭載する。

 背面のA.I.デュアルアウトカメラは基本的に1600万画素のイメージセンサーで撮影する仕様で、200万画素のイメージセンサーは深度を計測するために利用される。AIにより、120のシーンが自動認識され、それぞれに適した設定で撮影される。120のシーンの内、代表的な16のシーンについては撮影時のファインダー内にアイコンが表示される。

 前面のA.I.ビューティーカメラは296カ所の顔の特徴点を正確に捉え、800万通りの美顔データを元に、それぞれの顔に合わせた最適な補正ができるとしている。ビューティー効果については6段階の設定のほか、スマート美顔と呼ばれるAIによる効果も選ぶことができる。「奥行き効果」と呼ばれる設定を使い、被写体にピントを合わせ、背景をぼかすこともできる。

 今回の試用では夜景や暗いところでの撮影、ポートレートなどを試したが、屋外の夜景は十分明るく撮影できるものの、ややノイズが残る。暗い室内なども明るいライトなどにやや引っ張られてしまう印象で、エキスパートモードに切り替えないと、調整ができない点が気になった。夜景モードなどの暗いところに強いモードも別途、用意して欲しいところだ。

夜景のビルを撮影。目の前のパネルや左右の建物の中段当たり前はクリアだが、曇りの夜空は少しざらついている印象 (リンク先は2592×1940ドット)
いつもの暗いバーで撮影。グラスは明るく撮影できているが、隣のボトルはラベルが今ひとつ見えない。背景のランプや明るい棚に明るさが引っ張られてしまった (リンク先は3456×4608ドット)

 逆に、人物の撮影については非常にバランスが良く、夜景をバックにしたシーンでも人物を明るくしつつ、背景もボケ味が利いた写真を撮ることができた。また、撮影後の編集機能も充実しており、ビューティー効果やフィルター、明るさの調整などに加え、ステッカーや落書きなども用意されており、撮った後も遊べる環境が整っていた。

ポートレートモードで撮影。人物はきれいに撮影でき、背景の建物の明かりがうまくボケている。モデル:るびぃ(ボンボンファミンプロダクション) (リンク先は3456×4608ドット)
インカメラで自分撮り。周辺も含め、かなり明るく撮れている (リンク先は4312×5706ドット)
撮影した写真は[写真]アプリ内で編集が可能。「ワンタップ美化」は人物にビューティー効果を加えられる。モデルがかなり若いので、今回は不要だったが……

新機能の面白さと扱いやすさがバランス良くまとまった一台

 これまで国内のモバイル市場では、各携帯電話会社が販売するモデルが圧倒的多数を占め、オープン市場向けのSIMフリー端末はここ数年で伸びてきたと言われるものの、まだ少数派でしかないというのが実状だ。しかし、今年に入り、政府が不可思議な(?)介入をしたことで、今後、端末販売の流れが変わってくるかもしれない状況にある、分離プランが主流になると予想されていることから、端末メーカーとしてもこれまでのような各携帯電話会社向け、オープン市場向けといった枠組にとらわれない販売を検討する必要性が見えてきている。今回取り上げたOPPOのR17 NeoはSIMフリー端末でありながら、UQ mobileで独占販売するという手法を採っており、まさに今後の端末販売のビジネスを考えるうえで、ひとつの試金石になる取り組みになるかもしれない。

 一方、端末としての内容を見てみると、国内初となるディスプレイ指紋認証を搭載する一方、カメラもAIを活かした美しい撮影機能サポートし、ストレージなどのハードウェアの仕様を充実させ、デザインもスリムで美しいボディに仕上げられている。オンラインショップでの価格は4万円を切っており、新機能と価格と扱いやすさが非常にバランス良くまとめられているという印象だ。

UQ mobile オンラインショップ
OPPO R17 Neoの情報をチェック

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめるiPhone X/8/8 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidタブレット超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門 改訂2版」、「できるポケット HUAWEI P10 Plus/P10/P10 lite 基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10 改訂3版」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。