「IIJmio」や「mineo」など、大手MVNOの個人向けサービス(格安SIM)の契約数がここ最近伸び悩んでいる中で、「LINEモバイル」は急成長を続けている。同社は2018年4月からソフトバンクの子会社となったが、この影響が大きいようだ。2月20日の戦略説明会で嘉戸彩乃社長は、ソフトバンク回線の提供を始めた2018年6月と比べて、2019年1月の月間純増数は「3倍」に伸びたことを明かした。
「MVNO市場は成長が鈍化しているといわれている中で新規ユーザーが3倍まで伸びている事業者はLINEモバイルだけだと認識している」と嘉戸氏は胸を張る。
驚くべきは、ドコモ回線とソフトバンク回線の内訳だ。LINEモバイルでは全体と個別の契約数は公開していないが、グラフを見ると、2018年8月からソフトバンク回線の契約数がドコモ回線を上回っている。ちなみに、mineoもソフトバンク回線のサービスを提供しているが、その契約数はごくわずかだ。なぜ、ここまでソフトバンク回線が増えたのか。
嘉戸氏は「より安定した通信速度を求めるお客さま向けの設定をやっているから」と話す。LINEモバイルでは、ソフトバンク回線を提供した当初から「格安スマホ最速チャレンジ」と銘打った取り組みを続けており、混雑時でも1Mbps以上の速度が出るよう回線を増強している。「帯域の増強は、頻度を高く、細かくやっている。単純に増やす以外にも、どうすれば体感速度が上がるかのチューニングも行っている」(嘉戸氏)
格安SIMの不満点として「混雑時に通信速度が出ない」ことは多方面で指摘されているが、LINEモバイルは、こうした不満を解消する取り組みが功を奏しているようだ。
即日開通店舗が、2018年3月時点の19箇所から、2019年2月に600箇所まで増えたというのも驚きだ。嘉戸氏は「店舗数はMVNOでは最大級。ほぼ全ての都道府県を制覇している」と言い切る。特に「併売店に展開している」そうで、ソフトバンクと一緒に拠点開拓を進めているという。「LINEはオンラインの会社なので、単体だと一気に(拠点を)広げるのは難しい。ここはソフトバンクさんの力をお借りしている」と嘉戸氏も認める。端末調達もソフトバンクと一緒に行ったことでiPhoneも扱えるようになったようだが、「影響は小粒だと思う」と嘉戸氏。ソフトバンク傘下になった最も大きなメリットは、拠点開拓にあるといえる。
LINEモバイルは「LINE」のプラットフォームを活用できるため、ここから認知が進み、75%がオンラインからの申し込みだという。「プロモーション、多様なサービス連携、LINEポイントの活用(ポイントで通信料を支払える)」(嘉戸氏)などで効果が出ているという。また「LINEモバイルは10〜30代のお客さまが多く、オンラインでの申し込みに抵抗感のない人が多いことも影響している」(同氏)という。
一方、マジョリティー層に普及させるためには、対面で契約できる拠点を増やすことも重要だ。「そもそもどうすれば申し込めるのか」「今使っているキャリアからどうすれば乗り換えられるのか」「APN設定とは」「SIMはどうやって挿せばいいのか」という問い合わせが契約時に多いという。こうしたユーザーをケアする上で、対面で相談できる店舗は多いに越したことはない。
2019年第1四半期にはNTTドコモが料金の値下げを予告している。嘉戸氏は「詳細が分からないので何ともいえないが、LINEモバイルの(キャンペーンで展開している)300円までの割引をやることはないだろう」と動じない姿勢。
今後は、2019年上半期に提供予定のau回線も含めた「マルチキャリア」、現在も実施している、3カ月間はSNS使い放題の音声SIMが月額300円から利用できるキャンペーンを含めた「圧倒的な低価格」、オンラインとオフラインの「チャネル拡大」を推進することで、誰もがLINEモバイルをお得に使える環境を作る。LINEモバイルはこれを「誰でも」宣言として掲げている。
大々的なキャンペーンを打っていることもあり、まだ黒字化には至っておらず、「投資フェーズにあると認識している」と嘉戸氏。「キャンペーンは、お客さまに知ってもらう、面白いことをやっていると捉えてもらう良い機会」とし、今はユーザーを集めることに注力する。
ソフトバンク傘下になったことで着々と成果を上げているLINEモバイル。MVNOのシェア上位に姿を現す日も遠くないかもしれない。
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