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“自転車ながらスマホ”の危険性をVRで体験、KDDIの高校生向けVR授業

 KDDI、au損害保険は、“自転車ながらスマホ”の撲滅や高額賠償への備えに関する意識向上を図る「自転車安全・安心プロジェクト」の第3弾を開始する。

自転車事故での高額賠償が増加、自転車保険義務化の流れ

au損害保険 営業開発部 営業企画室長 水村大祐氏

 兵庫県では、2015年に自転車保険の加入が義務化された。これを皮切りに、全国の自治体で義務化の流れが広がっている。au保険の水村氏は、自転車事故による高額賠償の増加が義務化の背景にあると指摘した。

 au損保の水村氏によれば、同社の損害賠償額実績でも、500万円以上の請求は毎月発生、1件あたりの過去最高額は1億円に及んだという。このように高額な賠償が発生する死亡事故や後遺症の治療が必要なケースも想定し、被害者の救済、および加害者の経済的負担の軽減という両面から、自転車保険への加入が推進されている。

 このような流れを受けて、au損保は「高額賠償への備え」の必要性を訴え、自転車保険の加入促進、啓発活動のサポートといった形で義務化に踏み切った自治体を支援している。

“自転車ながらスマホ”の撲滅に取り組むKDDI

KDDI 総務部 サステナビリティ推進室長 鳥光健太郎氏

 一方で、KDDIは携帯キャリアとしての立場から、事故原因のひとつとなっている“自転車ながらスマホ”の撲滅に取り組む。

 2017年秋に始まった「自転車安全・安心プロジェクト」では、「自転車ナビタイム」アプリの利用者に向けた啓発キャンペーンや、危険性を検証するための実証実験、VRを使った体験コンテンツの制作などを行ってきた。

 同プロジェクトの第3弾と位置付けられる今回の取り組みでは、第2弾で制作された体験コンテンツ「STOP! 自転車ながらスマホ体験VR」を教材として、世代別で見ると自転車事故の発生件数が多いとされる高校生に向けた啓発活動を行う。

 自転車事故の危険性や高額賠償の事例などを伝えるスライドムービー、VR体験に必要な機材などをまとめた「自転車ながらスマホを防ぐVR授業キット」を用意し、全国の高等学校に無償で貸し出す。

 50分1コマの授業で完結する内容で、教員向けの指導要綱なども同梱され、比較的簡易な準備で利用できる授業キットとなっている。貸出機器に限りがあるため、当初は自転車保険の加入が義務化されている自治体にある学校を優先して対応するが、原則として全国の学校が対象。

自転車ながらスマホを防ぐVR授業

 自転車安全・安心プロジェクト第3弾の開始にあたって、鶴見大学附属高等学校(神奈川県)での実際の授業が報道陣に公開された。

 「自転車ながらスマホを防ぐVR授業」は3部構成で、10分程度のスライドムービーを観て“自転車ながらスマホ”に関する社会課題を学んだ後、VR体験を行い、生徒同士で意見交換をして総括する流れとなっている。

 VR体験の内容としては、自転車で走行中に歩行者が飛び出してきたというシチュエーションで、同じコースをながらスマホをしている時、していない時の2通りで走行、ブレーキをかけるまでの反応時間の違いを確認できる。

 実際に体験した生徒たちからは、VR体験そのものが初めてで戸惑う、あるいは驚く声も少なくなかったが、自転車に乗りながらスマートフォンを使うことの危険性を多くの生徒が再認識していた。

鶴見大学附属高等学校 永澤 一久先生