インタビュー

ケータイの「動画見放題」はもうすぐ終わり? さらに高まるWi-Fi需要 一人暮らしの「ギガ不足」を解消!

新世代Wi-Fiルーターについてネットギアに聞いてみた

「自宅に高速なWi-Fi環境があれば、『節約』や『我慢』すら意識せずに動画が楽しめます」(曽利氏)

 「『ギガ不足』は心配だけど、動画やSNSは見放題だから大丈夫」。そんな現状が、どうやら規制されそうな、怪しい雲行きになって来た。動画やSNSなどの通信量をカウントしない通信プランに、総務省の有識者会議で「規制が必要」との意見が出されたのだ。

 そんな状況で提案したいのが、自宅のWi-Fi環境の見直しだ。動画やSNSの利用、OSやアプリのアップデート、ゲームのダウンロードといった“ギガを消費する”通信を、自宅Wi-Fiへの接続時に行うことで、通信量の節約&高速化を同時に実現しようというものだ。

 「一人暮らしだから、自宅に固定ネット回線やWi-Fiは要らない」という考えは、もう時代に合わないのかもしれない。

動画30分で約300~500MB、一人暮らしに重くのしかかるスマホの「ギガ不足」

 スマートフォンの通信量が、毎月足りなくなってしまう……。そんな悩みを抱えている人は多いことだろう。

 特に、一人暮らしの環境では、自宅に固定の回線を引かないことも多い。公衆Wi-Fiなどの通信が使える環境が、会社や学校、ファストフード店などに限られていれば、いわゆるギガ不足に陥ってしまう可能性が高くなる。

 実家であれば何も考えずに使えた、高速な固定ネット回線とWi-Fiが、いかにありがたかった実感させられることも多いのではないだろうか。

 それもそのはず、今や日常のエンターテイメントの主役と言っても過言ではないYouTubeやNetflixなどのサービスは、容量の大きい動画を配信するため、日常的に利用すれば、あっという間に「ギガ不足」に陥ってしまう。こうした現状を、ネットギアジャパン合同会社プロダクトマーケティングの曽利雅樹氏は、次のように分析してくれた。

 「通信速度によって自動調整される場合もあったり、画質設定や再生するコンテンツの内容などによっても違いますが、動画配信ではおよそ数百MBの容量を消費します(筆者注:30分間で300MB~500MBほど。高画質になると600~1000MBほど)。仮に10分間で100MB消費するとしても、毎日見れば1カ月で3GBを軽く超えてしまうので、1日に動画を何本も見たり、長時間のドラマを楽しんだり、さらにはSNSで友だちが投稿した動画を何度も再生したりすれば、あっという間に通信量がなくなってしまうこともあるわけです」。

ネットギアジャパン合同会社プロダクトマーケティングの曽利雅樹氏

 ついつい使いすぎて、緊急避難的に1GB、1000円程度のデータ容量をチャージした経験がある人も、少なくないだろう。

 こうした状況に対し、通信事業者の側も、動画やSNSといった一部のサービスの通信量をカウントしない(ゼロレーティング)サービスを提供してきた。しかし先ごろ、総務省の有識者会議で、こうしたサービスに対して一定の規制が必要ではないかという意見が出されている(詳しくは2019年2月21日付ケータイWatch記事『「動画やSNSの見放題」はアリなのか? 総務省から中間報告案』を参照)。

総務省「ネットワーク中立性に関する研究会」第7回配付資料

 仮に規制が進めば、スマートフォンの契約プランだけで動画サービスを思う存分楽しむのは、難しい状況になる可能性もある。

「何時間でも通信量を気にせずにすむ」一人暮らしだからこそ高速なWi-Fi環境でリラックス

 こうした状況の下、曽利氏が提案するのが、自宅のWi-Fi環境の整備だ。

 ファミリー層なら自宅に固定ネット回線があるのは珍しいことではないが、一人暮らしの環境では、「費用面の負担が大きい」「在宅時間が短い」といった理由で、固定ネット回線の導入を避ける例がこれまでは多かった。しかし、上記のような状況から、むしろ自宅でのWi-Fiの整備に注目が集まりつつある。

 実際、動画やSNSを腰を落ち着けて楽しめるのは、自宅にいる場合が多い。会社や学校から帰宅した後の短い時間でも、動画を日常的に楽しめば「ギガ不足」に陥ってしまう。だから、こうしたパケット通信量を節約するのが重要というわけだ。

 曽利氏によると、「もちろん、画質を落とすなどの工夫をすることで、パケット通信量を減らすことはできます。しかし、画質が低い動画を見ても、楽しいと思えるとは限りません。せっかくの息抜きでも我慢を強いられるのであれば、意味がないわけです。しかし、自宅に高速なWi-Fi環境があれば、そもそも『節約』や『我慢』ということすら、意識せずに済みます。お風呂でのひとときや、就寝前のリラックスタイムで、余計な気を回すのでは意味がないですから」という。

 もちろん、自宅に固定ネット回線やWi-Fiを導入するには費用がかかる。固定回線の費用であれば月々3000円前後、さらにWi-Fiルーターの購入に1万円前後が必要だ。

 しかし、この投資で、自宅にいる限りは、通信容量の上限を気にせず、何時間でも最高の画質で、動画を楽しめるようになる。このメリットは大きい。

 また、曽利氏によると「自宅のWi-Fi環境が充実すれば、スマートフォンだけでなくいろいろな機器も使えるようになります。大画面のテレビで動画サービスを楽しむのはもちろん、ゲームをダウンロード購入したり、対戦を楽しむこともできます。スマートスピーカーや各種家電製品など、これから増えてくるIoT機器も使えるようになります」とのことだ。

 さらに、学校の課題に自宅で取り組んだり、社会人であれば自宅に仕事の一部を持ち帰ったりするにも、自宅のWi-Fiは役立つはずだ。最近では、公衆Wi-Fiが使えるスポットも増えたが、資料にほんの少し手を入れたいだけなのに、わざわざファストフードショップに出掛けるのは、時間と労力に見合わない。

自分に合ったWi-Fiルーターの選び方「レンタルは必ずしもベストではない」

 自宅に固定ネット回線とWi-Fiを導入することは、十分に検討に値することは納得頂けただろう。ただ、このうちWi-Fiに関しては、回線事業者からレンタルして、費用を節約するという手もある。

 しかし、曽利氏は「レンタルで提供されるWi-Fiルーターは『アベレージ』を狙ったものが多く、必ずしもベストではないことがあります」という。

 確かにレンタルルーターは規格が古かったり、パフォーマンスも高いとは言えないことがある。価格面でも、月額数百円程度のレンタル料金が必要で、1年もしくは数年の単位で見れば、市販のWi-Fiルーターと同等以上のコストがかかってしまう。

 では、具体的にどのような製品を選べばいいのだろうか? 曽利氏は、環境や用途、予算に応じた4つのケースを挙げて説明してくれた。

「とにかく安く済ませたいなら実売3500円の『R6120』」

 「あまり費用を掛けたくないなら、弊社のラインナップに『R6120』というモデルがあります。(税込の)実売価格は3500円前後なので、月300円程度のレンタルルーターを使うことを考えると、1年で元が取れる計算です。無線は最大867MbpsのIEEE 802.11ac対応ですが、LANポートは100Mbpsまでとなっています。マンションなどでは、固定ネット回線のインターネット接続サービスが100Mbps前後ということもありますので、そうした環境に適しています。一人暮らしで、常につなぐのはスマホ1台程度という環境なら、快適に使えます」(曽利氏)。

「複数台の機器をつないだり動画配信サービスを使うなら中堅モデル『R6350/R6850』」

 「スマートフォンだけでなく、PCをつないだり、ChromecastやFire TV Stichといった映像配信端末をつないだり、ゲーム機もつなぎたいという場合は、複数台の機器を快適につなげる上位モデルの利用をお勧めします」と語る曽利氏は、1450+300Mbps対応の「R6350」(実売6980円前後)と、1733+300Mbps対応の「R6850」(実売9800円前後)の2機種をおすすめしてくれた。

 「これなら、Wi-Fiの性能も高い上、LANポートも1Gbps対応なので、より多くの機器を快適につなげられます。お風呂など、届きにくいところでも電波が届きやすいので、お風呂でリラックスしながらスマートフォンを使いたいという人にもお勧めです」(曽利氏)。

「ルームシェアならメッシュWi-Fi対応の『Orbi micro』」

 「最近では、友人や兄弟と2LDKなど広めのマンションをルームシェアするという人も多いようです。こうした環境では、複数の部屋に電波を届ける必要があるので、メッシュWi-Fiの利用を検討すべきです。もちろん、最初から2台セットのOrbiを利用することもできますが、Orbi Microなら、最初は1台だけで導入し、電波が届かない場所があることが分かってから2台目を追加することができます。このように柔軟に対応できるメッシュWi-Fi[*1]がお勧めです(曽利氏)」。

[*1]……メッシュWi-Fi対応ルーターについては、前回のインタビュー記事『打倒「ギガ泥棒」!「メッシュWi-Fiを家庭に導入すべき理由」をネットギアに聞いてみた』も参照。

「ゲームが趣味なら、費用を惜しまず高性能なNighthawkシリーズを」

 「もし、ゲームが趣味であれば、一人暮らしのワンルームと言えども高性能なモデルをお勧めします。ゲーミングルータ-の「Nighthawk Pro Gaming XR500」(実売3万3000円前後)などは、ゲーミング専用のDumaOSを搭載しており、ゲームの大敵とも言える通信の遅延を防ぐさまざまな工夫がなされています(曽利氏)」。

 このように、環境や用途、予算に合わせて、いろいろなモデルから自分に合った製品を選ぶといいだろう。

 なお、曽利氏によると、Wi-Fiルーターを購入するときは、どれくらい使うのかという期間も考慮するといいそうだ。「例えば、引っ越す可能性があって一人暮らしで使う期間が短いなら、とにかく費用を抑える方向で低価格な製品で乗り切るという考え方もあります。また、結婚などで広い家に引っ越す予定があるなら、通信エリアを簡単に広げられるメッシュWi-Fiルーターを1台で使っておき、後から追加するのがお勧めです(曽利氏)」とのことだ。

ファイル共有やVPNサーバーなどの付加機能で選ぶ手も

 プロバイダーからのレンタルルーターではなく、市販のWi-Fiルーターを使うメリットには、こうした豊富なラインアップから自分に適した製品やメッシュWi-Fiを選べることに加え、付加的な機能を使える点もある。

 例えば、USBポートを備えたWi-Fiルーターに、USB接続のHDDやSSDなどをつないでファイルを保存すると、ファイル共有機能が使える製品がある。

 曽利氏によると、「外出先からアクセスするためのReadyCloudを使うにはNighthawkシリーズが必要ですが、低価格のR6120やR6350でも、同じネットワーク内のLAN上のPCやスマートフォンからもファイルを保存できます。外付けHDDを思い浮かべていただけると分かりやすいかもしれませんが、外付けHDDと違って複数台の機器から使える点がメリットです。データの保存やバックアップ、スマホの写真の保管などに活用できます」とのことだ。

 また、プリンターの共有にも対応しているため、「先ほどのルームシェアなどの環境では、複数の住人で1台のプリンターを共有することもできます。わざわざつなぎかえたり、プリンターがつながっているPCを借りたりする必要もないので、それぞれの生活やプライバシーなどを気遣った生活にも貢献するでしょう」と曽利氏は付け加えた。

 一方、VPNサーバー機能については、以前と使い方が少し変わりつつある。これまでは、小規模なオフィスのユーザーが、外出先からオフィスに安全に接続するために使われることが多かった。しかし最近は、個人ユーザーが公衆Wi-Fiを安全に接続するため、自宅ルーターのVPNサーバー機能が使われるようになってきた。

 公衆Wi-Fiの接続先によっては、Wi-Fiの暗号化が設定されていないため、通信内容を盗聴されてしまう恐れがある。これを防ぐために、VPNを使って通信を暗号化することが推奨されているが、そのVPNの接続先として、自宅を利用できるわけだ。

 通常、VPNサービスは有料だったり、無料でも広告が表示されるものがあるが、自宅のルーターをVPNサーバーにすれば、完全に無料で利用できる。VPNサーバーを管理しているのも自分自身なので、VPNサーバー経由でプライバシーにかかわる通信をしても、接続先や利用頻度などの情報がVPNサービスを運営する事業社などに把握されることは絶対にない。

 曽利氏によると、「R6350以上のネットギアWi-Fiルーターには、OpenVPNによるVPNサーバー機能が搭載されており、手軽に設定できるので、これを使うと安全な通信環境が簡単に構築できます」とのことなので、そう言った意味でも、同社の製品を検討する価値は高そうだ。

一人暮らしに最適なWi-Fiルーターを見つけよう

 以上、スマートフォンの「ギガ不足」がさらに進む可能性があることをきっかけに、自宅のWi-Fi環境の重要性を見ながら、ケースバイケースで最適なWi-Fiルーターのラインナップを見てきた。

 今後、スマートフォンの通信プランがどのように変わるかは難しい問題ではあるが、それだけでなく、自宅に固定ネット回線とWi-Fiルーターを用意するメリットは大きい。

 スマートフォンだけでなく、ゲーム機でも、ゲームをダウンロードしたりアップデートをすれば、簡単に数GBの通信が発生してしまう。その上、定期的に繰り返されるWindows Update、スマートフォンのOSやアプリのアップデートも、かなりの通信量になる。こうした知らず知らずのうちに発生する通信をしっかりと自宅のWi-Fiにオフロードできるようにしておくことが重要だろう。

 ネットギアのWi-Fiルーターは、低価格なわりに高性能な製品もあるため、手軽な投資でWi-Fi環境を整備できる。このままスマホの「ギガ不足」に悩まされたり、追加でデータ容量をチャージする生活は無駄なので、この機会に導入を検討しておきたいところだ。

(協力:ネットギアジャパン)