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大手キャリアの5G、今後5年の計画から見える各社の違い

 4月10日、NTTドコモ、KDDI(沖縄セルラー含む)、ソフトバンク、楽天モバイルの4キャリアへ5G向けの電波が割り当てられた。

 5Gと一口にいっても、各社が提出した計画を見ると、実はそれなりに違いがある。前総務大臣政務官の小林史明衆院議員(自民党)の解説を踏まえ、計画からわかる各社の違いを見てみよう。

新たに取り入れられた「5G基盤展開率」

 消費者だけではなく、全国各地のビジネスでの活用が期待される5Gの免許付与にあたり、新たに取り入れられた指標が「5G基盤展開率」。これは、全国を10km四方のメッシュで区切り、そこに基地局を設置すればカバー率が上がるというものだ。

 各社の計画を見ると、「5G基盤展開率」の5年後の目標は、ドコモが97%、auが93.2%、ソフトバンクが64%、楽天が56.1%となった。小林議員によれば、総務省が打ち出した「5G基盤展開率」は5年で50%以上になることを求めており、東名阪といった大都市部だけではなく、地方もそれなりにカバーする必要がある数値。「5Gは地方の課題解決にも使いたい。地方をカバーするというのは政策の意思だった」と解説する。

圧倒的な基地局設置数を計画するKDDI

 審査項目のひとつである基地局の開設数を見ると、auの基地局数が他社の倍以上を予定している。計画での数値は「実現可能な保守的な数値」(小林議員)と見てよさそうだが、auは、3.7GHz帯および4.5GHz帯で他社の3倍以上、28GHz帯で2倍以上のプランを示した。

 これは、地方を含めた全国での5Gの利活用を想定したためで、「そのくらいの基地局数は必要かなと考えている」(KDDI広報)ことからはじき出された数字だ。

 他社も今後、事業の進み具合にあわせて計画を前倒ししていくことは想像できるが、免許付与の段階で意欲的な数字を盛り込んだau。地方創生への意気込みが垣間見える。

楽天のMVNO計画は「0点」

 MVNOへの回線提供もまた審査項目のひとつであり、ここで一番高い得点を得たのはNTTドコモ。既に多くの実績を持つことが評価された格好だ。

 一方、この項目で0点に留まったのは、2019年秋に新規参入する楽天モバイル。計画では、2020年以降、MVNO向けに回線を提供する予定とされ、41社/約70万契約に利用されるとアピール。

 しかし、審査では、MVNOへの提供数について、明確な根拠が示されていないため評価されず、0点になってしまった。

ソフトバンクは既存の周波数活用へ

 NTTドコモ、auと比べ、5G向けの周波数の獲得枠が少なくなったソフトバンク。「5G基盤展開率」の計画が、5年後までに全国で64%という点が目をひくが、免許割当後、囲み取材に応じたソフトバンク CTOの宮川潤一氏は「既存の周波数と足して、どんなネットワークを作るのかという部分で勝負していきたい」というコメントを残している。

 小林議員によれば、ソフトバンクは、制度上の整備を踏まえて、現在LTEで利用している周波数を5Gへ転用する考え。そのため宮川氏は、2021年末までに人口カバー率では90%を超えたいと語っており、早期に5Gエリアを広げていく方針。

 ただし、5G向け周波数は、従来よりも大きな帯域幅を活用して、4Gよりも段違いな高速・大容量なスペックを実現できる。短期的な影響は少ないのかもしれないが、長期的に競合他社との差がつきかねない部分だ。

「重要なのは5Gの社会実装」

 海外では、米国や韓国の一部都市で5Gサービスがスタートしており、2020年に本格的な商用サービスの時期を迎える日本の取り組みは「遅れている」と評する声が一部にある。

 だが、小林議員は「生活で使うのならば全国で使えることが重要。そういう意味では、負け惜しみではなく決して遅れていない。重要なのは5Gの社会実装だ」と評価。今後、携帯各社がスピーディにエリアを整備していく計画であり、IoTや、いわゆるB2B2Xと呼ばれる形での企業向けサービスや、携帯各社と異業種とのコラボレーションによるサービスの実現が面白くなると期待しているという。