本日の一品

力強い太字が好きな方向けの万能万年筆「ふでDEまんねん」

万年筆の老舗の一つであるセーラーが販売している「ふで文字が書ける万年筆」

 ほとんどの筆記というシーンでキーボード入力が主になってしまっている筆者は、当然のごとくパソコンをその創成期からずっと愛用してきている。その一方で、アイデアを考えたりするときは、タブレットや電子ペーパー、リーガルパッドや大学ノートなどに対象が変わっても、絶対に手書きだ。

 描きこむ内容は決して製図や帳簿のような細かなモノではなく、大半が絵やメインセンテンスのみのラフであることが多い。気の向くまま線種を変えて、色を変えて、文字サイズを変えて、頭に思い浮かんだことを忘れないうちに絵と文字で素早く描きこむことが目的だ。キーボードの入力結果は簡単に使いまわしができるが、まだ未完成なものを最初に上手く表現することは語彙不足の筆者向きではない。

 アイデア作りの最初は、目的のモノの定義やアウトラインを誰の目にも鮮明に分かってもらえることなので、デジタル世界のスタイラスでも、ボールペンでも、万年筆、シャープペンシル、マーカーでも、全ての筆記具でクッキリとした太字の表現でがきる製品が必要だ。

 その結果、万年筆やボールペンコレクションの中でもB(Bold:太字)サイズが90%以上だ。特にボールペンはそのボール径が1.2~1.6mmの超太字の油性インクタイプを愛用している。もちろんシャープペンシルの芯も1.2~2mm辺りの2Bクラスががほとんどだ。

ペンの持ち方で細字の万年筆になったり、筆ペンのように変化する「ふでDEまんねん」
筆圧が高くてペン先を折ってしまったかと思うくらいの反りが特徴だ

 そんな太字の手書きが大好きな筆者が見つけた、毛筆のような太字を描ける万年筆が今回ご紹介する「ふでDEまんねん」だ。今回は自分だけが使うのではなく、書道好きな家族にもぜひとも使ってもらうべく、ピンク色のふでDEまんねんを購入した。

ペン先を立てて(紙面とペンが垂直になる関係)書くと細字
ペン先を寝かせて書くと毛筆のような太字も書ける

 ふでDEまんねんの最大の特徴はその“ペン先のユニークな形状”だ。ボールペンやシャープペンシルは、芯の太さや硬度、ボールのサイズやインクの種類で変化をつける筆記具だが、万年筆は、ペン先に工夫を凝らしたユニークな機構デザインが筆記結果に大きな影響を与える伝統的な筆記具だ。

 セーラー万年筆には、ペン先を大きく反らせることで、一本の万年筆で細字と太字を書き分けられる「コンコルド」という万年筆が存在し、昔懐かしい超音速旅客機を彷彿とさせる。

 ふでDEまんねんはコンコルドとはペン先が逆の反り方ではあるが、狙っている効果は似ているようだ。ペン先を立てて筆記すると、ごく細い文字を書くことが出来て、逆にペン先を寝かせて書くと極太の毛筆イメージになる。

慣れてきてペン先の寝かせる角度を自分で意識して調整出来ればカリグラフィーペンのようにも使えそう
インクフローが多くても……予備カートリッジも入る余裕で安心だ

 当然、毛筆イメージで書き続けると、多くのインクを消費するので、ふでDEまんねんは予備カートリッジも収納できる少し長いサイズだ。筆記時にネジ式のキャップを外して後方に被せるとほぼ20㎝近い筆のような長さになる。

 最後に、実際に書道をやっている家族にふでDEまんねんを使って、昭和・平成・令和と旬の漢字を書いてもらったが、その感想は、「必ず筆を立てて書くのが書道の鉄則なのに、ふでDEまんねんは、毛筆的に書こうとするとペン先を寝かすという矛盾があって、慣れるのに時間がかかりそう」とのコメントだった。

書道は筆を立てて書くのに、ふでDEまんねんは寝かせて書くところに慣れれば書道派にも使えるのかも……。「まんねん」の意味が気になった

 筆者的にはウケ最高だったけど、ふでDEまんねん……やはり筆ではなく万年筆愛好家のための毛筆的万年筆という位置づけが正しいのかもしれない。太字大好きな筆記ユーザーにとっては極めて楽しい一品だ。

製品名発売元購入価格
ふでDEまんねんセーラー万年筆1000円(税別)