“Huawei問題”で世界のスマホシェアはどう変わる? 注目すべき競合メーカー(1/2 ページ)

» 2019年06月06日 06時00分 公開
[山根康宏ITmedia]
Huawei 今や先の見えない米中経済問題に巻き込まれたHuawei

 米政府による「Huaweiつぶし」といえる制裁が通信業界に大きな影響を落とし始めている。5G特許を多数所有するHuawei抜きで5Gの世界的な普及は進まない。また、ここ数年スマートフォンのカメラ性能が大きく引き上がったのもHuaweiの功績だ。「特許数」「研究開発費」「スマートフォン売り上げ台数」という事実を見れば、Huaweiの技術力の高さは誰も否定できない。しかしそのHuaweiが今、通信市場から締め出しを受けようとしている。

ユーザーは“代替製品”がないことに気付く

 Huaweiに対する制裁は米国や同盟国による機器の輸出だけではなく、あらゆる通商にまで拡大している。その結果、ネットワーク製品だけではなくスマートフォン事業も大きなダメージを受けようとしている。Huaweiの今後の製品開発は順調に行えるのか? そして販売された既存の端末のOSアップデートやサポートはどうなるのか? スマートフォンを販売する通信事業者側も、顧客サポートを考えるとHuawei製品の販売を一時的に中止せざるを得ない状況だろう。日本以外でも英国のEEが開始したばかりの5Gサービスで、Huaweiのスマートフォンの取り扱いを取りやめている。

Huawei 5Gを開始したEE。取り扱い端末にHuaweiのスマートフォンはない

 Huawei問題は状況が日々変化している。米政府の落としどころがはっきりと見えていないこともあり、中国政府側も強硬手段に出られないというのが実情だろう。しかし制裁がこのまま続けば、その影響はわれわれ一般消費者にも及んでくる。Huaweiの優れたカメラフォンを購入予定だった消費者は、代替の製品がないことに気が付くはずだ。IDCやガートナーが2019年第1四半期のスマートフォン販売台数を発表したが、HuaweiはAppleを大差で抜き去り2位の座を確固たるものにした。だがこの座も年末には他社に明け渡すことになるかもしれない。

スマートフォンの世界シェア2位にまで上り詰めたが……

 Huaweiのスマートフォンはカメラを強化した「P」シリーズ、大画面&最新プロセッサ採用の「Mate」シリーズ、インカメラ重視の「Nova」シリーズ、さらに各ラインアップの入門機としてそれぞれ「lite」が存在する。「ハイエンドモデルを頂点に、その下に複数のラインアップを擁する」のではなく、「複数のラインそれぞれに上下のモデルを用意する」というぜいたくな陣営だ。

Huawei 縦横に製品を展開するHuawei

 しかもサブブランドの「Honor」も持っており、このHonorシリーズはP/Mate/Novaにはない特徴を持った製品も加わっている。例えば本体が上下に分離しスライドする「Honor Magic 2」はHuaweiブランドのメインラインにない製品だ。ターゲットユーザーは20〜30代の若い世代で、持つことを楽しめるブランドづくりを行っている。

 縦横無尽とも呼べる製品ラインアップを構築できたことで、Huaweiはスマートフォンの世界シェア2位にまで上り詰めた。先進国から新興国まで全ての市場に投入できるモデルを複数持っているメーカーはHuaweiのみといっても過言ではない。Huaweiの存在感のない市場は、もはや参入障壁のある米国市場のみだろう。

 だがOSアップデートを含むGoogleとの関係、これからの新製品向けの部材調達、そしてセンセーショナルに問題を大げさに報道するメディアもあるなど、Huaweiに吹く風は今や「逆風」ばかりである。

 Huaweiのスマートフォンの販売数が減少すれば、ライバルに顧客が流れるのは当然だ。ではHuaweiの影響はどれほど大きくなると予想されるのだろうか。Huaweiの2018年のスマートフォン販売台数は2億台を超えた。例えばこのうち15%が販売減となるとすると、その数は日本のスマートフォンの年間販売台数にほぼ匹敵する。すなわちHuaweiがわずかにつまずくだけでも、日本1国のスマートフォン市場がまるまる消失するほどの影響を市場に与えるのである。

Huawei IDCによる2019年第1四半期のスマートフォン出荷台数。HuaweiはAppleに大差をつけて2位の座についている

Huaweiの顧客を奪う可能性のあるメーカーは?

 ライバルメーカーは、Huawei製品の下取り価格を引き上げて自社製品に乗り換えを促すなど早くも消費者の獲得に動いているところもある。だがスマートフォンはもはやスペックを競うだけの製品ではなくなっている。HuaweiのPシリーズほどのカメラ性能を持つスマートフォンの種類は少なく、カメラでスマートフォンを選ぶ消費者が「Huaweiか、Appleか」と悩むことはないだろう。

 つまりHuaweiが仮に失速したとしても、それらの顧客がiPhoneに流れ、Appleの販売数が再びHuaweiを抜くとは考えにくい。それよりも「売れているHuawei端末」のライバルとなる製品が、2019年は販売数を伸ばす、あるいはブランド力を高めるものと想像できる。

 ではHuaweiの潜在的顧客を奪いそうなメーカー、製品は何だろうか? 筆者が考えるのは以下3つの製品群だ。

 まずはカメラフォンとしてのHuaweiに真っ向から挑む、OPPOの「Reno」シリーズがダークホースとして面白い存在になりそうだ。「Reno 10倍ズーム版」は光学8倍、ハイブリッドの10倍ズームレンズを搭載する。Huaweiの「P30 Pro」が光学5倍、ハイブリッド10倍だから、光学ズーム性能はRenoの方が上回っている。

Huawei OPPOはRenoでカメラフォンとしてのブランドを強化

 OPPOのブランド力は新興国では高いものの、先進国ではまだ欧州や日本など数カ国でしか展開しておらず、カメラフォンとしての知名度は皆無に近い。そもそもOPPOがここまで販売数を伸ばしてきたのはインカメラの強さであり、アウトカメラ性能も高めてきてはいるものの評価は低い。RenoはそんなOPPOのイメージを一変させ、「OPPO=光学ズームカメラフォン」というイメージを広めるための戦略的な製品だ。今後の展開次第ではHuawei製品を検討している消費者の目を向かせることもできるだろう。

 なおReno 10倍ズーム版は5Gに対応した製品がスイスやイギリスで販売になった。現在販売されている5Gスマートフォンの中で、最もカメラ性能が高いスマートフォンなのだ。5Gに興味のある先進的なユーザーがOPPOを選ぶようになれば、Huaweiどころか他のメーカーにとっても脅威になるだろう。

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