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「Pixel 3 XL」を魔法の杖に、魔法界の危機を救いに行ってみた

【Pixel 3 XL】

 現実世界を盤面にして遊ぶゲームを手がけてきた米ナイアンティックが、ワーナー・ブラザースとともに手がけた新作アプリ「ハリー・ポッター:魔法同盟」がついに日本でもプレイできるようになりました。

 あの世界的大ヒット作「Pokémon GO」から3年、開発中には“ハリポタGO”とも呼ばれていた「ハリー・ポッター:魔法同盟」はどんなゲームになったのか……ナイアンティックの作品を長く楽しんできた筆者は、かなり高い関心を持ってこの1週間プレイしてみたのです。

 といっても今回ご紹介するのは、ゲーム全体のレビューではなく、ナイアンティックが得意としてきた部分を中心した視点です。ゲームの内容は、本誌レポートでもご紹介しておりますが、ざっくり言えば、スマートフォンがいわば“魔法の杖”となって、現実世界にあふれ出た“魔法の痕跡”を回収していきます。

 現実世界をトレースした「魔法同盟」のマップ上には、いくつものスポットがあります。魔法の痕跡はそこかしこに出現するのですが、宿屋、温室、砦というスポットは、現実世界にあるアートや公園などに由来しています。

魔法の痕跡をタップすると、コンファウンダブルを呪文で追い払い、魔法界の人や生物を助けていく

 そうしたスポットは、同じくナイアンティックが長く提供する「Ingress」のエージェント(プレイヤーのこと)が投稿したものがほとんどと言っていいでしょう。他の位置ゲームと大きな違い、そしてナイアンティックの特徴は、このスポット情報にあります。なぜそこにスポットがあるのか、それは現実にちゃんと心引かれる何かがあるから、なのです。

魔法同盟のマップ
同じ場所でのIngress
こちらはPokémon GO

 そうした場所の中には、ユーザーがまるでいたずらしたかのような“低品質”なものも紛れてはいますが、それを差し引いても、このスポット情報の本質的な価値は揺らぎません。

 筆者自身、「Ingress」や「Pokémon GO」を通じてたびたび街を歩き回ってきましたが、スポットを訪れるたびに、その場所が小説など何らかの舞台になったこと、あるいは地元の人でも忘れかけているような歴史を伝えていることを知ってきたわけです。

 ただ、実際に「Pixel 3 XL」片手に魔法使いになってみると、街中のスポット情報は、ゲーム中、わりと控えめな存在感という印象。ゲーム内で描かれる施設の窓から見える風景が、スポットの写真という形で、ちょっとそこに気づくまで時間がかかった次第。ゲームとしての操作(宿屋での魔力回復や、温室での材料回収など)に目が奪われ、スポット情報である写真や名称に気づきにくいかもしれません。

スポンサーのスポットはさすがにわかりやすい

 ナイアンティックのゲームと言えば、リアルでのコミュニケーションを生み出す性質もあります。「魔法同盟」の発表会でもそうした特徴は紹介されたのですが、ローンチ時点では、率直に言って、他のプレイヤーと協力して遊ぶという場面はほとんどありません。唯一、「砦」は最大5人で同時に……ということになっていますが、「Pokémon GO」のレイドバトルと違い、同時参戦を募る時間が十数秒~1分弱といった形が多くて、とても短い。同時プレイしたくなる要因も少ない。このあたりは、今後の機能追加で変化していく部分かもしれませんし、ナイアンティックが手がけたものとはいえ、IngressやPokémon GOと異なる部分になっていくのかもしれません。

 あ、あとひとつ、ナイアンティックを長く追いかけてきた記者のひとりとしては「ポートキー」を紹介しなくてはいけません。「ポートキー」を使うと、ユーザーのスマートフォンに、魔法界にあるさまざまな場所が描かれます。お店や学校の一室といったあたりで、いわばVR(仮想現実)へ誘われる。現実世界を舞台にするというAR(拡張現実)技術を特徴としてきた同社ですが、ここへきてVRコンテンツを内包することになったのは、ハリー・ポッターというテーマにマッチさせる形とはいえ、実に興味深いところです。

ポートキー、いろんな意味で興味津々です

 「Pixel 3 XL」では、AR+を使った場面もスムーズにプレイできます。バッテリーの消耗が気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、筆者はいつもモバイルバッテリーをカバンに忍ばせており……いや、これはちょっと「Ingress」で訓練されすぎたかもしれません。

 「魔法同盟」をプレイしていると、ゲームとして「もっとこうなったら」なんて欲求を持つこともあるのですが、それはそれで、現時点での「魔法同盟」に夢中になっている証かも。職業、砦でのバトル、魔法の痕跡の回収など「できること」はわりと多めなんですが、実際は「魔法の痕跡」だけでもけっこう満足しています。

 数あるスマートフォンのゲームのなかでも、ナイアンティックの作品は、ただ単に実世界のマップと位置情報を使っただけではなく、現実世界に由来のあるスポット情報、人と人を引き合わせるゲーム上の巧みな仕掛けが特徴です。人を動かす力が今後の「魔法同盟」へどう組み込まれていくのか、「Pixel 3 XL」片手にじっくり遊んでみようと思います。