DATAで見るケータイ業界

グラフで比較するキャリア決算(2)

「各社揃って増収増益」から一転した、キャリア3社の「収益」を比較

 通信キャリア3社の2019年4~6月期決算(19年度Q1決算)から、主要なオペレーションデータを取り上げる短期連載。2回目は「収益」について比較してみたい。

 通信キャリア3社の19年度Q1決算は明暗が鮮明となった。前年度(18年度Q1)はいずれも「増収増益」だったが、NTTドコモは料金を最大4割値下げした新プラン「ギガホ」「ギガライト」の投入や端末の低価格化の影響などで売上高は前年同期比1.5%減の1兆1593億円、営業利益が10.1%減の2787億円と「減収減益」だった。

 KDDIは4G移行促進を行うため一部端末の評価減や在庫の減損処理したことなどが影響し、売上高が前年同期比2.0%増の1兆2461億円、営業利益が11.4%減の2558億円と「増収減益」を記録した。

 そうしたなか、ソフトバンクは「ワイモバイル」や「LINEモバイル」の契約数増加に伴い平均単価は減少したものの、スマートフォン契約数の増加(前年同月より173万増)と「月月割」割引額の減少などが寄与し、売上高が前年同期比5.8%増の1兆1649億円、営業利益は3.7%増の2689億円の「増収増益」を維持した。

 足元では、端末と回線の完全分離や通信料金の引き下げなど新たな制度改正が10月にもはじまる見込みだ。また、楽天の参入による料金競争への懸念など、通信レイヤーにおける不確実性が高まっている。

 通信キャリア3社はいずれも『非通信分野の強化』を急いでいる。例えばNTTドコモの「スマートライフ領域」の営業収益は前年同期比20億円増の2208億円、営業利益が同42億円増の475億円、KDDIも「ライフデザイン領域」の売上高は前年度比39.6%増の2750億円、営業利益は同15.2%増の380億円といずれも増収増益を達成しており、着実な成果を上げている。

 ソフトバンクは、こうした流れを更に加速させている。2019年6月27日付でヤフーを連結子会社化したが、広告事業を含む非通信事業の比率は売上高で約2割まで上昇し、個人向け携帯事業の売上高に占める比率は4割弱まで低下するなど「収益源の多様化」へギアをチェンジさせている。

 各社、2019年度通期の見通し(NTTドコモ「減収・減益」、KDDI「増収・増益」、ソフトバンク「増収・増益」)に関しては修正せず、現段階では据え置いたままだ。これから起きる通信レイヤーの環境変化に備え、各社の事業ポートフォリオがどのように組み替えられていくのかも大きく注目されそうだ。

MCA

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」などクオリティの高いサービス提供を行う。