8月2日に閉幕した「写真甲子園2019」(全国高等学校写真選手権大会)。常連校が持てる力を発揮して上位を占める結果となりましたが、自分たちのスタイルを最後まで貫き通した初出場校がありました。群馬県立富岡実業高等学校です。

ファースト、セカンド公開審査会で、審査委員の各氏から愛のある“ダメ出し”をもらった彼女たち。それでも自分たちのスタイルを貫き通した写真甲子園の初舞台は、初登場とは思えない度胸のある内容でした。そんな彼女たちに密着取材したドキュメントをご覧ください。

  • 戦いを終え、笑顔が弾ける群馬県立富岡実業高校のメンバー。左から三ツ木夢夏さん、石井百香さん、宮下星来さんと、顧問の布目紀佳監督

経験豊富な監督が写真部の意識を変えた

「ホントに? 夢じゃないの?」――目標としてきた写真甲子園の大舞台に初出場を決めた時、群馬県立富岡実業高校のメンバーは驚きと喜びに声が出ないほどだったといいます。

2年前に富岡実業高校に異動してきた顧問の布目紀佳監督は、2014年に前任校・群馬県立藤岡北高校で写真甲子園の出場経験を持ちます。群馬県が属する北関東ブロックは、例年2校の出場枠となっており、今年も2枠を54校で争いました。「北関東ブロックは埼玉県勢の層が厚く、埼玉栄高校と埼玉県立芸術総合高校の壁を乗り越えないと本戦出場できません。さらに、群馬には新島学園高校が、栃木には足利工業高校という名だたる強豪校がひしめくブロックなんです」と布目監督は話します。

富岡実業高校に赴任してきた当初、写真部の活動はほとんど行われていなかったそう。「名前だけ所属して“帰宅部”の生徒が多かったんです。やる気のない生徒は出てこなくていいと言ったら、本当に来なくなったんですね(笑)。残った当時の1年生を中心に、カメラの操作や写真の基本から指導してきました」

  • セレクト会議のテクニカルタイム中に選手たちへアドバイスする布目監督

「今回連れてきた選手のなかには、引っ込み思案で無口な子もいました。それが、部活動で仲間と一緒に撮影したり、作品を作り上げる作業を通じて、よく笑い、話すようになったんです。もちろん、本人の嗜好と写真がマッチしたのだと思いますが、写真を撮ることで前向きになってくれたのは本当にうれしく思っています」と語る布目監督。

3人のニコパチ写真に審査員も苦笑い

そんな彼女たちが写真甲子園の本戦、ファーストステージでテーマに選んだのが「北海道を楽しむ自分たちの姿を写す」という作戦でした。

  • 富岡実業高校のファーストステージ作品『進め、止まれ、ちょっと待て。』

26回を数える写真甲子園の歴史で、自分たちを撮影した作品を提出するチームは何校かありました。ただ、この大舞台では審査員から高い評価を得ることが難しく、上位に入賞したチームは数えるほどしかありません。

ファースト公開審査会でも、審査委員の写真家・鶴巻育子氏が苦笑しつつ「ちょっと混乱しています。この作品をどう評価したらいいか悩んでいます」とコメント。審査委員長の立木義浩氏も「とても幼児性の強い作品。これが真顔で撮られていればシュールさがあって悪くはないが、ニコパチでは記念写真の域を出ない」と断じました。