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Wi-Fi 6(11ax)がフリーWi-Fiで使える! Wi2とRuckusが実店舗でフィールドテスト

DEAN & DELUCAカフェ東京音楽大学中目黒・代官山キャンパスの外観

 株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2)とRuckus Networksは、DEAN & DELUCAカフェ東京音楽大学 中目黒・代官山キャンパスにおいて、次世代規格Wi-Fi 6ことIEEE 802.11axによる国内初のフィールドテストを25日より開始した。

 アクセスポイントには、デュアルバンド対応で屋内向けのRuckus Networks「R730」を用いる。また、エンタープライズ向けスイッチ「ICX 7150」、これらの管理用となるネットワークコントローラー「SmartZone 300」が用いられている。

フィールドテスト環境のシステム構成図

 ただ、当初は一般向けの開放は行なわず、併せて設置されている11ac対応アクセスポイントとの干渉などを検証。チューニングなどを経たあとで11ax対応のアクセスポイントを一般向けに提供するという。フィールドテスト用のSSIDは、Wi2のサービスが「ShowwCase_ax_EAP_LB」、店舗のフリーWi-Fiが「ShowCase_ax_Wi2」となる。

DEAN & DELUCAカフェ店舗中央の天井にアクセスポイントが設置されている
左側がRuckus Networks「R730」
右側は既設の11ac対応アクセスポイント
iPhone 11を用い、11axで接続した場合のSpeedtest結果画面。開店前の時間には616Mbpsの速度を記録したという

 カフェなどの飲食店は、ピーク時間帯に利用が集中し、スマートフォンやPCなど多様なデバイスが同時に接続する環境となる。フィールドテストでは、こうした状況下でWi-Fi 6の最適なチューニングと検証を目的とし、ユーザーのWi-Fiサービス利用のニーズが高い実店舗で実施されるものとなる。

 フィールドテストにおける検証結果は、今回用いられるアクセスポイントのファームウェアや、Wi2が提供する公衆Wi-Fiサービスへ順次反映されていくという。

今回説明を行ったRuckus Networks事業開発部テクニカルディレクターの小宮博美氏(左)、株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレス取締役の江川正氏(中央)、株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレス技術運用本部副本部長の浅貝修一朗氏(右)
株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレスの江川正氏

 株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレス取締役の江川正氏は、今回のフィールドテストについて「2016年から行っているユーザーの体感品質を上げる取り組みの一環」とした。

 そして、「次世代規格に対する国内初の取り組みとなるが、公衆Wi-Fiサービスにおける認証完了までの時間短縮などについて、まず最初に基準を策定し、これに未達だったり、(ユーザーが多いなど)改善に対するニーズの高いところから改善を進めている」とするとともに「ユーザーが増えれば当然トラフィックは低下するので、定期的に改善を行っている」ことを紹介。

 11axの導入については、「ピーク時間には同時接続数が増加するが、そうしたときでも限られた無線リソースを共有して、1人当たりのスループットを維持できる」とした上で、「この店舗は実際にPCを開いて調べものをしている学生も多い。大学側のアクセスポイントと無線のチャネルが競合していたり、スマートフォンやPCなどさまざまな端末が入り乱れている実店舗ならではの環境で、電波出力の調整やチャンネル干渉などについて、11axに最適化された公衆Wi-Fiサービスの設計手法を確立し、体感品質の向上につなげたい」と述べた。

Ruckus Networks事業開発部テクニカルディレクターの小宮博美氏

 Ruckus Networksの小宮博美氏はR730について「11axの規格は、ユーザーが集まる環境で利用されるのがそもそもの目的となっている」ことに触れつつ、「標準機能だけでは解決できない部分について、無線専業メーカーとしてさまざまな機能を追加している」とした。

 その1つとして紹介したのが、ビームフォーミングを利用した「Ruckus BeamFlex+」だ。クライアント方向に向けて電波を送信する技術で、最大6dBの利得があるという。これは距離であれば倍、電波が30m届くなら60mに範囲を伸ばせるという。さらに電波を特定方向に集中させるため、複数のアクセスポイントがある環境で、干渉源を作りにくいメリットもあるという。

 また、無線空間の管理フレーム制御を行うことで、例えばアクセスポイント未接続の端末に対し、距離が遠くて一定のシグナルレベルに達しない場合や、電波範囲内で一定時間を経過するまでは返信を行わず、全体のスループットを落とさないような仕組みも実現しているという。

 これにより、例えば「電車が停車したとき、乗車していない人の端末には返事をしないので、むやみにつながってしまう煩わしさもなくなる」という。また、シグナルレベルや時間は任意に設定を変更できるとのことだ。

当日行われた動作デモの様子。国内版は現時点で未対応のGalaxy S10だが、Ruckus Networksのエンジニアが米国から持ち込んだGalaxy S10グローバル版(左)は、11axでの動作に対応する。中央も11ax接続となるiPhone 11、右は11ac接続となる比較用のiPhone XS
Intel Wi-Fi 6 AX200搭載ノートでの値、平均して500Mbps前後を記録している