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「未来の観光立国をつくる」――KDDIが瀬戸内エリアでの地方創生に取り組み

 KDDIと瀬戸内ブランドコーポレーションは、地方創生に向けた共同での取り組みに向けた協定に合意、締結した。

 今回締結された協定により、瀬戸内ブランドコーポレーションは、KDDIの持つICTビジネス、全国の顧客基盤などを活用して観光産業活性化を加速させ、瀬戸内の観光関連事業者の事業拡大や持続的成長に貢献することを目指す。

締結書内容は

 主な協定内容は、「ICTを活用したソリューションの瀬戸内エリア事業者への普及」「豊富な人財やノウハウ、情報発信力を活用した交流人口や関係人口の創出、拡大支援」「瀬戸内地域産品の、(大)都市圏に向けた発信、普及、販売」「5Gなどの先端技術やでデータを活用した効果的な観光マーケティングの支援、観光をより魅力的位するビジネスサービスの開発」「(大)都市圏の人財による、瀬戸内エつリアでの活躍支援」「観光課題や社会課題を解決するベンチャー企業への共同投資」の7つ。

 取り組みのひとつとして「au Wowma!」において瀬戸内物産展を開催、瀬戸内で生まれたさまざまな魅力的な商品を全国への販売が開始された。

au Wowma!で扱う瀬戸内の名産品

 今回の協定締結に伴い、KDDIと瀬戸内ブランドコーポレーションの両者は18日、広島県広島市において、包括連携協定締結式を開催。KDDI 理事 経営戦略本部 副本部長の松野茂樹氏が、瀬戸内ブランドコーポレーション 代表取締役社長の藤田明久氏が締結書に署名した。

地方創生の成功例をつくるために

 KDDIの松野氏は、「KDDIの特長を活かした形で何ができるかを考えたのが今回の協定」と語る。国民のほとんど誰もが所有している携帯電話網を構築している主要携帯電話事業者3社は、大量のデータを保有している。KDDIについては人口の1/3がユーザー。このような多様なビッグデータを使うことが観光開発につながると松野氏。

KDDI 松野茂樹氏

 「Location Trends」を利用してユーザーのGPS情報を解析して観光客の動きをレポート、効率的な観光客の誘導方法の提供、「KDDI Location Analyzer」によりレストランや小売店などの推定来店社などの分析、「KDDI Location Data」によるデータ活用などが例示された。

 また、「au Wowma!」を始めとしたKDDIの顧客接点や、ベンチャー企業を育てる「KDDI ∞ラボ」や「KDDI Open Innovation Fund」などを利用し、瀬戸内への観光客の誘致や効率化、観光産業の活性化を図り、地方創生のひとつにつなげる。

 加えて、都内だけでも1万人いるというKDDIの社員にも「関係人口」になってもらうべく、社内で瀬戸内の製品を販売することを検討しているという。

 KDDIはこれまで、小笠原諸島の父島でロボットを活用したいわゆる「テレエグジスタンス」の施策を試みており、ほかにも中部国際空港でインバウンド向けの忍者のVRやハウステンボスでARシューティングアトラクションなどの取り組みの実績がある。

 同取り組みでの5Gの活用について、当面のところは高速大容量を活かしてより高精細なxRコンテンツの提供に活用し、将来的には自動運転なども取り入れていきたいと松野氏。

 また今後、そのほか先端テクノロジーを用いた施策の展開、特にドローンを用いた島しょ間の配送サービスや漁網などの監視・確認を行うサービスの提供などについての構想を語った。

 島が多い瀬戸内では、配送ためのドローンは有効な手段となる。また、設置した漁網などの確認のために船を使用することで生じる燃料の削減や、人が行って確認することがなくなるなどの課題解決にも活用したいという。またさらに、xRを扱える人財を地元で育成する考えなども語り、地方創生に対する意気込みを示した。

世界に選ばれる「SETOUCHI」へ

 2019年、米ニューヨーク・タイムズで今年の行くべきところで第7位に選ばれたという瀬戸内。藤田氏は今回の協業により、国内外から人が集まる「SETOUCHI」を実現、関係人口、交流人口を増やすとともに最終的には定住人口を増やし、持続可能な観光地エリアとしての確立を目指したいと語る。

 藤田氏は、同社の活動「せとうちDMO」について解説。同社はこれまで、瀬戸内エリアの観光産業への新規参入者に対し、観光ビジネスの学びや言語や決済、情報発信などの場を提供。また、独自のECCサイト「島と暮らす」を運営。瀬戸内の食文化を発信し、ファンの確保(関係人口増加)、実際の土地を訪れてもらい産地のファンを増やし(交流人口増加)、最終的にU/Iターンによるイノベーションの増加(定住人口の増加)という3つのステップでの産業の活性化を狙っているという。

瀬戸内ブランドコーポレーション 藤田明久氏

 また、ほかのDMOにはない、せとうちDMOの特長として、独自のファンドを有している。これにより、新規参入事業者に対してのリスクマネーの提供が可能。これまでにも古民家を利用した地域活性化「せとうち古民家ステイズHiroshima」や中国四国地方に初進出した「ヒルトンホテル広島」などへの投資実績がある。

 また、「関係人口」を増やすためのメディア「ネイティブ」を運営しており、年間15万人ほどの「関係人口潜在層」が来訪するなどの効果を上げている。

 KDDI 松野氏は「(まずは)成功例をつくらなければならない。瀬戸内での成功は日本全体の観光産業を引っ張ることになる。(今回の協定締結により)先進的な取り組みをたくさん出して、未来の観光立国としての日本を作りたい」と語った。