【CES 2020】

フォルダブルスマホとして復活した「razr」を触った

 モトローラは、「CES 2020」のレノボが構えるプライベートブースで、折りたたみスマートフォンの「razr」を公開した。折り曲げ可能なプラスチック素材の有機ELを採用しているのはサムスン電子の「Galaxy Fold」や、ファーウェイの「Mate X」と同じだが、最大の特徴はフィーチャーフォンのように縦折りにできることだ。

 同端末は、19年11月に中国・北京で発表されていたが、大規模な展示会では初のお披露目となる。米国では、最大手キャリアのベライゾンが独占的に取り扱う。当初はCES会期中の1月9日に発売される予定だったが、需要の高まりを受け、予約受付や出荷を延期した。

折りたためるスマホとして復活したモトローラのrazr

伝統のケータイを最新技術でリバイバル

 日本では、NTTドコモがiモード端末として販売した経緯のあるrazrだが、モトローラはその後、同ブランドをスマートフォンでも展開。過去には、auやソフトバンクが取り扱ってきた。一方で、razrといえば、やはり薄型でスタイリッシュな折りたたみケータイというイメージが強く、スマートフォンのブランドとして定着しなかったのも事実だ。現状、同社のスマートフォンは「moto」ブランドで統一されており、日本でもSIMフリー端末として販売されている。

 これに対し、新たに発売されるrazrは、グローバルで一世を風靡した折りたたみ端末の姿を再現したもの。折り曲げられるディスプレイを活用し、フィーチャーフォン風のギミックを実現したというわけだ。

ディスプレイそのものを折り曲げることで、本体がコンパクトになる

 ただし、かつてのrazrとは異なり、10キーなどは搭載せず、開いたときはフルタッチのスマートフォンになる。外観をフィーチャーフォンに近づけている関係で、ディスプレイは縦に長く、比率は「Xperia 1」などと同じ21:9。サイズは6.2インチだが横幅はスリムで、手に取ったときには持ちやすいと感じた。

 一見すると、最新技術で過去の名機を復活させただけに思えるかもしれないが、ディスプレイサイズが21:9と縦に長いため、アプリを上下に並べやすいのはメリット。いわゆるシネマスコープサイズのため、映画を見るときも、画面に目いっぱい映像を広げることができる。こうした点は、21:9のディスプレイを採用したスマートフォンと同じで、意外と実用的。飛び道具的な側面はあるかもしれないが、それ以上に、持ち運びやすさのために折りたたみ機構が採用されたことが分かる。

2つのアプリを上下に並べて使う際に均等に分割でき、どちらの表示も見やすい

 ディスプレイは中央部分を折り曲げられる仕様で、折り曲げられる位置の左右にはヒンジがあり、ディスプレイをしっかりと固定している。この部分をじっくり見ると、ギアのようなパーツが見える。このギアで、上半分と下半分の動きを連動させ、スムーズに折り曲げられるようになっていることが分かる。

ヒンジ部分にはギアのようなパーツがある

自撮りモニターにもなるサブディスプレイに「Moto Actions」も

 閉じるとサブディスプレイがお目見えする。このサブディスプレイは2.7インチでタッチ操作も可能。残念ながら、展示機ではすぐにデモモードに切り替わってしまったため、十分な操作はできなかったものの、電話を取ったり、メールを見たりといったことはできるようだ。また、カメラがサブディスプレイ下に搭載されているため、自撮り用のモニターにもなる。他のモトローラ端末にも共通しているUIだが、カメラは、端末を振ることですぐに起動できる。

サブディスプレイは自撮り用に使うことが可能

 側面にある電源ボタンを長押しすると、Googleアシスタントが起動する。これも、本体を閉じたまま使うことができてスムーズ。本体下部が盛り上がっているデザインはrazrそのものだが、スマートフォンらしく、ここには指紋センサーが搭載されている。

Googleアシスタントもすぐに起動できる
下部に指紋センサーを搭載する

 上記の端末を振ってカメラを起動するようなUIは「Moto Actions」と呼ばれるが、これはmotoブランドのスマートフォンで培ってきた機能。razrにもこのMoto Actionsが搭載されており、3本指でタッチしてスクリーンショットを取ったり、本体を裏返して通知が鳴らないようにしたりといった操作を行える。

本体の動きを検知して各種機能を呼び出すMoto Actionsに対応

 Pure Android戦略を取っているモトローラらしく、折りたたみ型ながらUIは非常にシンプルで、素のAndroidに近い。開くとディスプレイサイズが変わる他社のフォルダブルスマートフォンとは異なり、ディスプレイを収納するために折り曲げるディスプレイを利用しているため、UIを大きく変える必要はなかったようだ。

UIは標準のAndroidに近く、シンプルだ

当時を知る人には懐かしい遊び心も

 遊び心があるのが、かつてのrazrらしいキーを搭載した外観にできる「Retro Razr」と呼ばれる機能。端末上部から引き出すクイック設定パネルから呼び出すことができ、タッチパネル上に10キーやカーソルキーを再現する。キーを直接タップすると、すぐに電話番号の入力が始まるなど、フィーチャーフォン時代の使い勝手を再現している。

かつてのrazrを再現したRetro Razrモード
Retro Razrは、クイック設定パネルから呼び出すことができる

 ただし、これはあくまでオマケ的なもので、フィーチャーフォンの操作方法に慣れた人向けのモードではない。razrのUIを再現したのはあくまで第1階層のみで、実際に電話をかけようとすると、電話アプリが立ち上がる。電話帳ボタンを押したときも同じで、標準の電話帳が起動する。あくまで、当時の雰囲気を楽しむための、お遊び的な機能と捉えた方がよさそうだ。

 実機を確認したところ、残念ながら日本語フォントがインストールされておらず、言語の変更もできなかった。eSIMを採用しているため、SIMカードスロットがなく、外観がすっきりしている半面、SIMフリー端末として日本に導入するハードルはかなり高そうだ。とは言え、日本はフィーチャーフォン時代、折りたたみ端末の需要が他国に比べ、突出して高かったことで知られる。後継機も含め、今後の展開に期待したい。