2019年は折りたたみスマートフォンが大きな話題となりました。曲がるディスプレイは製造コストもかかるため、各社の折りたたみスマートフォンは日本円で20万円以上と値付けはかなり高くなっています。ただでさえ高い折りたたみスマートフォンですが、中国では高級モデルとして30万円を超える製品が出てきました。それがSamsungの「W20 5G」です。
W20はSamsungのGalaxyシリーズではなく、Samsung中国とChina Telecomによるコラボモデル「W」シリーズに属する製品です。このWシリーズは「心系天下」(XinXiTianXia、シンシーティエンシア)という高級ブランドとして毎年1機種ずつが出てきました。いずれも縦折式のモデルで、ここ数年はフリップ部分が表も裏もデイスプレイ、すなわち「閉じればスマートフォンスタイル」「開けば10キーをそなえたガラホスタイル」として使える製品を輩出してきました。
SamsungとChina Telecomの両者は、2020年の心系天下も縦折り式としたかったかもしれませんが、開発が間に合わなかったため、横折式のGalaxy Foldを高級化して「W20 5G」として出したのかもしれません。China Telecomとしては5Gを開始し、他の通信キャリアと差別化するためにも心系天下新モデルのリリースを遅らせることはできません。なお、縦折り式の折りたたみスマートフォンはMotorolaが「razr」を発表しましたが、1月の販売予定が延期されるなど、他社も安定した品質の製品を送り出すのには苦労しているようです。
さて、W20 5Gの基本スペックはGalaxy FoldのプロセッサをSnapdragon 855からSnapdaragon 855+へと引き上げ、より高速化が図られています。メモリ12GB+ストレージ512GB、外側4.6型+内側7.3型のディスプレイ、内外のトリプルカメラなど他のスペックはGalaxy Foldの5Gモデルと変わりません。
背面はホワイト仕上げ、うっすらとピンク色が隠されているようです。下部には心系天下のロゴが印刷されています。またカメラ部分を見るとLEDフラッシュが1つ増え、2つになっているようです。
一方、側面はフレームの角をきっちりと目立たせたデザインとなっており、Galaxy Foldとは異なる印象を与えてくれます。シャープなイメージは高級感だけではなく、どことなく「メカっぽさ」も感じさせてくれます。
本体を開くとフレーム部分の違いはあまり目立たなくなり、Galaxy Foldと見た目はほぼ同等です。
ところで、Galaxy Foldはディスプレイを折りたためることをアピールするために、壁紙には蝶のグラフィックがデフォルトで表示されます。一方、W20 5Gは蝶ではなく花のグラフィックが標準となっており、イメージを変えています。
プリインストールアプリには心系天下のカスタマー向けアプリやChina Telecomのアプリが入っています。
中国市場でのSamsungスマートフォンは、ここ数年、存在感を全く示せないほどシェアが落ち込んでいます。しかしこの心系天下シリーズは固定ファンが多く、高級スマートフォンとしてのブランドも確立されています。価格は標準版が19999元(約31万7000円)ですが、この価格に価値を見いだす消費者が中国では一定数存在するのです。なお、Galaxy Fold 5Gの中国の販売価格は15999元(約25万3000円)なので、W20 5Gは6万円ほど高いことになります。
Samsungは今後、縦折り式のスマートフォンも投入する予定だといわれています。そちらのモデルも高級版として心系天下シリーズから出てくるのか、気になるところです。
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