ケータイ用語の基礎知識

第941回:NSA・SA方式とは

 5Gに関係するニュースでは、「NSA方式」「SA方式」という言葉が出てくることがあります。これは、5Gのネットワークに関する用語で、NSAは非スタンドアローン(Non-StandAlone)、SAはスタンドアローン(Stand Alone)の略です。スタンドアローンは「単独型」を意味する英単語です。

 通信事業者による5G通信サービスは、初期段階は既存のLTEネットワークを拡張するNSA構成の導入が進められる予定です。その後、SA構成に移行が進む見込みとなっています。

フル5Gとも言える「SA」と迅速な導入が見込める「NSA」

 NSA、非スタンドアローン型のシステム構成は、4G LTEのコアネットワーク(EPC)と5Gの基地局(en-gNB)とを組み合わせた構成になっています。この構成は、ネットワーク内のインタフェースが4G LTEで使用されているものをそのまま流用できることから、通信事業者や通信機器ベンダーにとって導入障壁が低いことが特徴です。つまり、それだけ早く5Gサービスを導入・展開できることになります。

 なお、NSA構成では、端末と基地局が通信する際には、制御信号(コントロールプレーン)に関しては、LTE側の制御機能に依存します。5G側はデータ信号(ユーザープレーン)のみの搬送を行います。

 このNSAの5G通信時には、4G LTEと5Gの通信を同時に行う「デュアルコネクティビティ」や、同時に複数の周波数帯での通信を行う「キャリアアグリゲーション」などの技術も使用されます。特に4G LTEと5G NRでのデュアルコネクティビティのことを「LTE-NRデュアルコネクティビティ」と呼ぶこともあります。

 SA、スタンドアローンのシステム構成では、コアネットワークも含めて5Gの新しい技術に基づいたものとなります。スタンドアローン5G NRは2番目のNRという意味で「Phase2 NR」と呼ばれることもあります。スタンドアローン型の5Gは、4G LTEのコアネットワークに頼らず、コントロールプレーンとユーザープレーンの両方に5Gを利用します。

フル5Gのメリットは「ネットワークスライシング」

 このことによって、制御信号に4Gでは定義されていなかった新たな定義が加わり、高度な制御がネットワークに対して行うことができるようになります。そのひとつが「ネットワークスライシング」です。

 ネットワークスライシングは、要件に応じて仮想的に独立したネットワークを生成することです。5Gでは、「eMBB」(高速大容量)、「URLLC」(超高信頼低遅延)、「mMTC」(超大量端末)という用件が全く異なる用途をひとつの通信規格でサポートすることになります。回線中に仮想的に独立したネットワークを生成して、それぞれのサービスで求められる要件を満たすネットワークを提供するのです。

 ネットワークスライシングでは、送信側が一機である場合はもちろん、受信側の端末も一台の端末が複数のスライスを同時に利用することも、規格上可能となっています。たとえば、高速大容量な通信を行い、また同時に低遅延な通信も行うといったことも可能なわけです。ちなみに1台の端末で、最大8スライスまで接続規格上可能です。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)