特集:5Gでつながる未来

5G正式サービス直前、各社のキーパーソンが語るその姿

 19日~20日、総務省は「5G国際シンポジウム2020」を開催した。20日午前には、携帯4社のキーパーソンが登壇し、それぞれの描く5Gの姿が紹介された。

 5Gの正式サービス直前とあって、その内容はこれまでの実証実験や、講演内容のおさらいといった格好だったが、あらためてこれから訪れる5G時代がどのようなものになるか、示される場となった。

どんな料金になる?

小西氏

 正式サービス前のため、各社のキーパーソンは、料金や端末についてのコメントは控えた今回。それでもKDDI技術統括本部モバイル技術本部副本部長の小西聡氏は「4GのときからUNLIMITED(使い放題)。(5Gでも)上限がない料金を提供したい。体験価値もUNLIMITEDでありたい」と述べ、使い放題プランの提供を示唆した。

 同様のコメントは、ドコモやソフトバンクのトップが、決算会見などで語っており、5Gサービスの料金プランは、通信量に上限のない定額制プランになる可能性が高まっている。

どんなサービスが登場する?

 具体的なサービス内容も5Gの正式サービス発表を待つ形だが、各社からはこれまでの取り組みを踏まえたコメントが披露された。

 NTTドコモの中村氏は「スマートフォンだけではなく、いろんなデバイスが鍵になる。特にXR(AR、VR、MRといった現実と仮想を組み合わせる形態)が重要になる」と指摘。

中村氏
野田氏

 ソフトバンク モバイルネットワーク本部長の野田真氏もコンシューマー向けにはまず、AR、MR、VRが登場すると予測。2019年に手がけたフジロックフェスティバルや、バスケットボールの試合でのトライアルを例に、まずサービスとしてローンチするのでは、と語る。

ソフトバンクが進めてきたスポーツ関連の取り組み
auも「AUGMENT」(拡張)をサービス価値として追求する

6月開始の楽天は

 4月から、4Gの正式サービス開始を予定する楽天モバイルは、その2カ月後、6月に5Gサービスを開始する予定だ

佐藤氏
サービスロードマップ

 楽天モバイル執行役員で事業開発室室長の佐藤祐介氏は、「強みは完全仮想化クラウドネットワーク」とあらためて紹介。クラウド化したコアネットワークで、自動化を進め、管理運用の効率化を図ることで、5Gもスピーディかつ低コストで展開できるとアピールする。

 日本でしっかり運用できるようになれば、その次のステップとして、完全仮想化クラウドネットワークとその上で動作するアプリケーションやサービスをひとつのパッケージとして、海外の携帯電話会社に向けて販売したいと語る。佐藤氏によれば、すでに数社から問い合わせがあるという。

 そうした通信事業者だけではなく、国内でもMVNOや、ローカル5G事業者に向けた提供も検討できると佐藤氏。パッケージ全体での提供か、5Gネットワークの特徴のひとつで、求められる機能ごとにリソースを切り出せる「ネットワークスライシング」での提供か、複数の選択肢を視野に入れつつ「何も決まっていないが、深く検討したい」とコメント。全国各地から出店がある楽天らしく「さまざまな提供方法を準備して、地方の中小企業、地方自治体にも5Gを使っていただけるよう研究している」(佐藤氏)として、地方の企業との連携も視野に入れて進めていく。

 その一方で、パートナー企業を募り、これまで小規模で進めてきた実験を拡充する方針。一般ユーザーでも体験できるスポットなどを整備するとのことで、詳細は今後、発表することが明らかにされた。

 また料金について佐藤氏は、そもそも楽天自身が通販サービスが柱で、新たに携帯電話サービスへ進出することから、既存の通信事業者とアプローチが異なる、と説明し、「通信契約での縛りやオプションという形は想定していない。特に5Gでは、各社ともに大容量プランになるだろうが、僕らもシンプルでわかりやすいものを提供する」とした。

上り通信の重要性が増している

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの各社では、ここ数年、5Gの実用化に向けた技術開発と、パートナー企業との実証実験を進めてきた。

 そうした中で、NTTドコモの中村 武宏5G推進室長は「アップリンクの重要性が増している」と指摘する。消費者向けでは、映像など大容量コンテンツをスピーディにダウンロードする、といった用途が多く挙げられる中、法人ニーズではリモートでの操作などを活用する際には、下り通信だけではなく上り通信もこれまで以上のスペックが求められる。

 中村氏は「TDD(時分割方式、今は下り通信、次のタイミングは上り通信と、時間で区切って上り下りの通信を実現する)は、フレキシビリティはまったくなく、上下を変えられない」と指摘し今後の課題とした。

法人向けサービスでのビジネスモデル

 5Gのサービス開始に向けて、携帯各社では、パートナー企業とともに新たな価値を生み出そうと試みてきた。

 今回のセッションでも、各社からはそうした事例が紹介されるとともに、そのビジネスモデルについてはレベニューシェアモデルに近い形になるとの予測が示された。

今後の課題

 いよいよ始まる5Gだが、すでに課題はいくつか見えている。NTTドコモの中村 武宏5G推進室長は、新たな周波数帯であるミリ波(28GHz以上の帯域)について「遮蔽に弱い」とあらためて指摘する。

 初期に登場する機種はハイエンドが多いと見られ、端末価格がネックになる可能性などは、各社が指摘。また楽天の佐藤氏は「違約金が下がっているが、今、解約率が下がっている(各社間の乗り換えが減っている)。(競争促進を図るはずの政策目標とは)逆の現象が起きている」と指摘し、新規参入組としての懸念を示す。

 ソフトバンクに割り当てられた周波数は衛星通信と干渉するため、ソフトバンクの野田氏は「かなり厳しい。もし衛星通信を受信する場所の周りに壁を作ることができれば、5Gも広げやすい」と大きな課題であることを紹介していた。