清水理史の「イニシャルB」

テレワークの悲劇! ビデオ会議なのにWi-Fiが届かない!?

在宅勤務のWi-Fi環境をASUSのメッシュWi-Fi「ZenWiFi」で整えてみた

 1人になれて、しかも背景が恥ずかしくない場所――。家中さまよい歩いて、ようやく見つけたビデオ会議に絶好のポジションなのに、肝心のWi-Fiが届かない……。そんな悲劇に見舞われないために、今スグやっておきたいのが家庭内のWi-Fi環境の見直しだ。

 階段や廊下など、見通しのいい場所に「メッシュの基幹」を通しておけば、普段Wi-Fiを使わない隅のスペースでも、映像や音声の品質をバッチリ確保できる。

むしろ普段使わない部屋にWi-Fiを

 Wi-Fiの電波は、人が集まるリビングをカバーできれば十分――。

 テレワークが身近な存在となった今、こうした従来型のWi-Fi設計では、不都合なことが多く発生することになりそうだ。

 例えばビデオ会議。

 まさかリビングで家族がくつろいでいる様子を背景に会議を始めるわけにもいかず、かといって「これから会議だから」と言って家族にガマンを強いるわけにもいかない。

 よって、家の中で1人になれる場所を探すことになるのだが、寝室や書斎など、離れた部屋ではWi-Fiの電波が十分に届かない可能性がある。

 ZoomやTeamsのビデオ会議機能は、比較的低速なネットワークでも十分な品質を実現できるが、それでも限界はある。

仕事をしようとした場所にWi-Fiの電波が届かなければ、テレワークにならない

 全くWi-Fiの電波が届かなければ話にならないが、つながったとしても速度が遅ければ、映像が安定しなかったり音声が途切れ途切れになったりして、さすがに会議にならない。まさか、会議中にほかの参加者に待ってもらって、電波の届きやすい場所を探し回るなんてこともできない。

 1度や2度ならそれも許されるかもしれないが、今後、ビデオ会議が長期間にわたり定期的に開催されるようになれば、さすがにまともに会議ができず、仕事にならない。

 意思疎通ができないことによる遅れや、コミュニケーションミスによる行き違いが起こったり、自分の意見が届かない状況が続いたりすれば、会社にとっても自分にとっても大きな損失になるだろう。

どうやってテレワーク向けのWi-Fi環境を整備するか?

 では、具体的にどうやってテレワーク向きのWi-Fi環境を整備すればいいのだろうか?

 そのポイントは2つある。

  1. 電波が遠くまで届くようにする
  2. 複数台の同時通信に強い環境にする

 1.は、先のビデオ会議の例を避けるためにはもちろん、テレワーク全般で非常に役に立つ。

 家中のどの部屋でも、部屋内のどのポイントでも、さらに、どの方向を向いているときにも、Wi-Fiが使えるようにしておけば、ビデオ会議、チャットを用いた同僚との相談、クラウドストレージを使った書類作成、グループウェア上での報告など、シーンに応じて、家中の適した場所へ移動しながら、作業ができる。

 最近では、テレワークならではのストレスが話題になっているが、家の中であっても、ときどき場所を変えながら仕事をすれば、集中力が維持できるし、気分を変えることもできるだろう。

 一方の2.は、家庭内でWi-Fiの利用が集中することに対する対策だ。

 学校が休校となる状況下で、子どもが家にいるケースなどでは、自分だけがWi-Fiを利用するとは限らない。むしろ、ヒマを持て余した子どものために動画配信サービスを多用したり、ゲームをダウンロード購入してプレーしたりと、Wi-Fiの利用頻度は確実に高くなっていく。

 こうした状況では、Wi-Fiルーターやアクセスポイントの性能が大きく問われる。複数台の端末の同時通信が発生した場合も、各端末の通信速度が低下しにくかったり、家族の利用と仕事の利用で周波数帯を分けて運用できたり、QoSを利用して仕事で使う端末の通信を優先処理できたりする機種を選んでおかないと、テレワークに支障が出る可能性が高いだろう。

トライバンド対応メッシュのメリット

 これらの条件を満たすWi-Fiとなると、やはりトライバンド対応のメッシュ製品が最有力となる。その理由を見ていこう。

複数台のアクセスポイントで広いエリアをカバーできる

 メッシュWi-Fiは、複数台のアクセスポイントを連携させられるWi-Fiシステムだ。従来のWi-Fiであれば、1台で家中をカバーする必要があったが、メッシュWi-Fiでは2台、もしくは3台で分担して家中をカバーできる仕組みとなっている。

 このため、仮に1台では電波が届かない部屋があっても、2台目でカバーができる。

2台で広いエリアをカバーするメッシュWi-Fi。写真は「ASUS ZenWiFi(CT8)」

トライバンドならアクセスポイント間の速度が速い

 しかも、単なるメッシュWi-Fiではなく、トライバンドに対応する点が非常に重要だ。

 トライバンドというのは、同時に扱える電波の周波数帯が3種類あることを指す。

 現在、日本で許可されているWi-Fiの電波の周波数帯は、大きく分けて2.4GHz帯と5GHz帯の2種類だ。

 多くのWi-Fiルーターはデュアルバンドまでの対応となるため、この2種類の周波数帯しか同時に扱えない。それがトライバンド対応製品であれば、2.4GHz帯+5GHz帯+5GHz帯と、5GHz帯をさらにもう1つ同時に使って通信することができる。

 この、もう1つの5GHz帯を、2台のメッシュWi-Fi同士をつなぐ専用帯域として使えるのがトライバンドのメリットとなる。

 この経路は、各アクセスポイントの配下につながれたPCやスマートフォンの通信が集中する基幹となる。このため、ここに専用の帯域を割り当てられることは非常に大きい。

 デュアルバンドでは、PCやスマートフォンをつなぐための経路と基幹となる経路に同じ周波数帯を使わなければならないため、理論上の速度が半減してしまうが、トライバンドでは基幹の理論上の速度をフルに利用できる。

トライバンドに対応したASUSのメッシュWi-Fiルーター「ZenWiFi AC(CT8)」のウェブページ。メッシュWi-Fi製品を購入するときは、トライバンド対応であるかを事前に確認しておきたい

処理を分散できる

 複数台の連携するメッシュWi-Fiでは、複数台で処理を分散できる。

 例えば、リビングに設置した方がゲーム機やスマートフォンの接続をカバーし、廊下に設置した方では書斎のPCの接続をカバーするといったように、接続先の機器が分かれる。

 PC、スマートフォン、ゲーム機、家電など、家庭内で使われる機器が増えてきた状況では、家中の全ての機器の接続を1台で処理するのは負荷が高くなりすぎる。メッシュWi-Fiでは、こうした複数台の処理を分散できるのがメリットだ。

メッシュWi-Fiでは複数台のアクセスポイントで処理を分担できる

手の届く価格の「トライバンドメッシュ」、ASUS「ZenWiFi AC(CT8)」をテストしてみる

 このように、テレワークでの利用を想定して家のWi-Fi環境を改善するのであれば、トライバンドのメッシュWi-Fiを導入するのが適している。

 トライバンドのメッシュWi-Fiは、従来、高価なハイエンドモデルが中心だったが、実売価格でも3万7928円のASUS「ZenWiFi AC(CT8)」のように、手の届く価格帯の製品も登場してきた。

正面
背面
側面

 ZenWiFi ACは、対応する規格がWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)のメッシュWi-Fiルーターだ。詳細はこちらの記事も参照してほしいが、2台がセットになっており、それぞれ最大400Mbpsの2.4GHz帯、最大867Mbpsの5GHz帯、最大1733Mbpsの5GHz帯の同時利用が可能なトライバンドに対応している。

 そして、このZenWiFiの最大の特徴は高い性能だ。以下は、木造3階建ての筆者宅の1階の仕事部屋と3階階段踊り場の2カ所にZenWiFi ACを設置し、各階でiPerf3による速度を計測した結果だ。

1F2F3F入口3F窓際
PC上り503346402491
下り552499446496
iPhone 11上り447194473477
下り666250584610

※サーバー:Synology DS1517+、PC:ThinkPad P1(Intel AX200)
※ノード(2台目)は3階の階段踊り場に設置

 結果を見ると、iPhone 11の場合に2階が約200Mbps(それでも十分に高い)となるものの、そのほかの場所では、ほぼ400Mbps以上の速度をコンスタントに実現できていることが分かる。

 これは、1台では考えられない結果だ。通常、1台のみを1階に設置した場合、2階、3階と離れていくほどの速度が低下していく。そして、筆者のこれまでの経験から言えば、一番遠い3階の端では、Wi-Fi 5対応の低価格な製品だと10Mbps前後しか実現できず、200Mbps以上を実現しようとすると、1台3~4万円クラスの高性能なWi-Fi 6対応ルーターが必要になってくる。

 これに対して、ZenWiFi AC(CT8)は、2台1組で3万円台とリーズナブルながら、家中ほぼ400Mbpsを実現できる。これはコストパフォーマンスという点で考えると、非常に高いと言えるだろう。

 前述したようにメッシュWi-Fiの場合、複数台のアクセスポイント間を中継する基幹の速度が重要だが、ZenWiFi AC(CT8)は、トライバンドのうちの最大1733Mbpsの5GHz帯を中継に利用するため、2台の間が極太で超高速の専用路で結ばれる。このメリットが、前述の高速な測定結果に大きく貢献している印象だ。

 このため、本製品を設置するときは、この基幹の帯域をいかに減衰させないかが重要なポイントとなる。

 例えば、階段の下と上、廊下の端と端など、2台の間に障害物が少なく、距離があまり遠くならない場所に設置することで、十分な実力を発揮させることができるはずだ。

撮影のため階段近くに設置したが、間になるべく障害物がないように設置すると、メッシュWi-Fiでは効果的だ

数日以内でWi-Fi環境を整えられる速いだけじゃないメッシュWi-Fi

 しかも、このZenWiFi AC(CT8)は速いだけではない。設定が非常に簡単だ。

 初期設定は、Bluetoothを使ってスマートフォンのアプリから実施可能で、ウィザードに従って必要な情報を入力していくだけで簡単にセットアップできる。

スマートフォンのアプリを利用すれば、Bluetooth経由で簡単にセットアップ可能
状態の確認や設定変更なども、アプリから行える

 ここまで、トライバンドだとか、メッシュだとか、さまざまなことを述べてきたが、実際に使う場合、こうした面倒なことは一切意識せず、2台を最適な状態で連携させることが可能だ。

 これなら、急にテレワークでビデオ会議の予定が入ったとしても、急いで購入してセットアップすれば、数日以内でWi-Fi環境を整えることができるだろう。

PCのウェブブラウザーでからZenWiFi AC(CT8)の設定画面にアクセス。メッシュWi-Fiは自動的に最適な設定で構成されるため、利用者は難しいことを意識しなくて済む

 さらに、ASUSのルーターは家庭向けと言えども高度な機能を搭載していることで知られている。次のような機能を活用することで、テレワーク環境をより快適にすることができるわけだ。

QoSでビデオ会議の通信を優先処理

 QoS(Quality of Service)は、特定の通信を優先的に処理するための機能だ。通信の種類や端末を対象として設定できるので、複数台の端末が一斉に通信した場合に、テレワーク用の端末の速度は応答速度が下がらないよう優先処理できる。

 コンシューマー向けモデルでは、そもそもQoSの機能を搭載しているWi-Fiルーターが少ない上、搭載されていたとしてもポート単位(有線LANの)や端末単位での設定しかできないことがある。

 一方、ZenWiFi AC(CT8)に搭載されている「Adaptive QoS」では、アプリや通信プロトコルを自動的に判断して、特定の通信を優先処理することができる。

 例えば、Adaptive QoSで「Video Conferencing」を優先処理するように設定しておくと、PCだろうが、スマートフォンだろうが、端末を問わず、ビデオ会議の通信を優先処理できる。

 家族が一緒に過ごす環境でテレワークをする場合は、必ずテレワーク用のPCの有線順位を上げておこう。そうすれば、ビデオ会議中に、家族やゲームやウェブの閲覧をしたとしても、ビデオ映像や音声が途切れる心配がない。

Adaptive QoSによってアプリごとに優先度を設定できる

「AiProtection」でセキュリティ対策

 オフィスと違って、自宅でPCを仕事に使う場合に注意しなければならないのがセキュリティだ。

 PCやスマートフォンのOSを最新版に更新したり、セキュリティ対策ソフトを有効にしておくのはもちろんだが、ZenWiFi AC(CT8)の「AiProtection」機能を併用すると、より安心してテレワークが可能だ。

 トレンドマイクロの技術を使った悪質サイトブロック機能などが利用できるので、テレワーク用のPCから、うっかり危険なサイトにアクセスしそうになっても自動的にブロックしたり、脆弱性を悪用した不正な通信を検知して遮断することが可能だ。

トレンドマイクロの技術を使ったセキュリティ機能も搭載される

 このように、テレワークが快適にできるかどうかは、Wi-Fiルーター選びが非常に重要と言える。いざビデオ会議が迫った段階でWi-Fiがつながらない、混雑で品質が悪いと気付いても遅いので、なるべく早い段階で、ZenWiFi AC(CT8)のようなWi-Fiルーターの導入を済ませておくことをお勧めしたいところだ。

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(協力:ASUS JAPAN株式会社)

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。