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富士通コネクテッドテクノロジーズ、クアルコムと協業で5Gスマートフォンのリファレンスデザインを開発

 富士通コネクテッドテクノロジーズ(FCNT)は、米Qualcommとの協業により、「Qualcomm Snapdragon 865 5G Modular Platform」を採用した5Gスマートフォンのリファレンスデザインを開発した。

 開発したデザインはSub-6およびミリ波に対応する5Gスマートフォンとしては世界最薄だという(2020年3月現在)。

 リファレンスデザインの開発により、5G対応スマートフォンの設計・製造における低コスト化や薄型化、スマートフォン以外への技術応用が期待できるという。同リファレンスデザインをベースとした最初の製品は、同社の5G対応Androidスマートフォン「arrows 5G」となる。

リファレンスデザインを採用した「arrows 5G」

 リファレンスデザインはメイン基板にQualcommの「Snapdragon 865 5G Modular Platform」を採用する。RFフロントエンドやアプリケーションプロセッサ、モデムがそれぞれモジュール化されている同プラットフォームの採用や、3次元実装を用いた基板埋め込み技術を利用し、実装面積や基板面積の削減、筐体の薄型化が実現した。Snapdragon 810(MSM8994)と比較して実装面積は約35%、基板面積は約20%削減されたという。

メイン基板(背面/ディスプレイ面)のイメージ図

 ミリ波は伝送可能な情報量が多い反面、3Gや4Gで利用されてきた周波数帯に比べて極端に波長が短く、設計にはマイクロメートル単位での精度が求められる。さらに、基板に高密度に配置された部品間のノイズ干渉を回避することや、部品実装のばらつきによる大幅な特性の変化も柔軟に吸収できる高度な設計技術が求められることから、ミリ波への対応は技術的難易度が高いとされている。

 FCNTではミリ波対応の実現に、高周波信号の信号品質を確保できる低誘電基板の採用や、アンテナ配置の自由度を高めるための接続用フレキを使用することで、薄型化と最適なアンテナ配置を両立したという。

 また、ミリ波の性能を確保するために金属と樹脂のハイブリッド筐体を採用し、アンテナへの金属影響を除去しながら、3個のミリ波モジュールを横向きに配置することで、全方向へのアンテナ放射を実現した。

ミリ波アンテナ実装のイメージ図

 また、同リファレンスデザインでは、グラファイトシートに加え、新たに二相流冷却技術「ベイパーチャンバー」を採用した。薄型・軽量のベイパーチャンバーとハイブリッド筐体を一体化することで、装置の内部全体に熱を拡散することによる高い均熱効果と端末の薄型化を両立しているという。

二相流冷却技術「ベイパーチャンバー」
熱・パフォーマンスシミュレーション

 同リファレンスデザインに含まれる各技術は、5G時代のIoT製品や自動車、医療など幅広い産業分野に応用できるという。今後はスマートフォンの枠を超え、さまざまな製品や分野への応用展開も積極的に検討していく。