改正法と新型コロナが“中古スマホ市場”に与えた影響は? RMJ粟津代表に聞く(1/2 ページ)

» 2020年08月11日 12時16分 公開
[石野純也ITmedia]

 2019年10月の電気通信事業法改正によって、端末価格の割引には2万円までと大きな制限がかかった。これによってにわかに脚光を浴びているのが、中古端末だ。総務省も、法改正にあたって中古端末の流通を促進するよう、SIMロック解除の要件緩和や、取引実態の把握などの取り組みを進めてきた。

 こうした動きを踏まえ、2017年に複数の中古端末販売業者が設立した業界団体が、リユースモバイル・ジャパン(RMJ)になる。同団体は中古端末の認知度向上に加え、加盟企業向けのガイドライン策定などを行っている。端末の状態を示す基準を作ることで、ユーザーの不安感を払拭(ふっしょく)するのが目的だ。

 ガイドラインは2019年3月に策定、11月には第2版に改定された。4月にはRMJ自体が一般社団法人となり、ガイドラインに基づく認証制度を開始している。一方で、3月以降はコロナ禍に見舞われるなど、中古端末を巡る環境も大きく変わりつつある。RMJの代表理事を務める粟津浜一氏に、中古端末の“今”を聞いた。

中古市場 RMJ代表理事の粟津浜一氏

ハイエンド端末が中古でも売れにくくなっている

―― まずは、中古端末市場全体の動向をうかがえればと思います。2019年10月に電気通信事業法が改正されましたが、この影響はどの程度出ているのでしょうか。

粟津氏 RMJで個別具体的に何パーセントアップといった情報は取っていませんが、改正事業法以降、台数が伸びているところは多いですね。端末価格が高騰したということもあって、徐々に浸透し始めているのだと思います。その一方で、iPhone 11やiPhone XSといった、ハイエンドの高額な端末は、中古でも売れにくくなっています。これは、新品で3万円、4万円といった廉価版の端末が出てきているためだと思われます。本来の中古は、7万、8万のものを3万、4万ぐらいで買えるのがメリットでした。ところが、新品が3万、4万ぐらいになってくると、中古で2万円といわれても、「それぐらいなら新品を」となってしまう。7万、8万のハイエンド端末が売れにくくなっています。

中古市場 「iPhone 11 Pro Max」のようなハイエンド端末は中古でも売れにくくなっているという

 また、2月以降は(新型)コロナの影響も出ています。その影響を加味しなければいけないので、純粋に数字を出しにくいのですが、3〜5月に関しては、テレワーク需要でスマホ、タブレット、あとはルーターも伸びました。スマホについては、ルーターとして使うといったケースも多いようです。あとはガラケー(フィーチャーフォン)ですね。電話だけ、ちょっと使えればいいというニーズがあり、こちらも伸びています。

―― ルーターも中古で買う人が多かったんですね。

粟津氏 店頭でなかなか買えず、それがいつ終わるのか分からない状況でしたからね。いつまで使うか分からないから、新品で高いものを買うより、取りあえず中古で買っておくというお客さまが多かったですね。ただし、6月、7月に入り、その需要は落ち着いてきました。ここ最近では、東京都で感染者数が再び増え、6月に比べると5万円以上の端末が動きづらくなっている感覚もあります。消費マインドが落ちているのかもしれません。

 スマホは生活必需品で、買い替えのタイミングとして多いのが、バッテリーの持ちが悪くなったときや、調子が悪くなったときです。ただ、家にずっといれば、バッテリーの持ちが悪くなっても、ずっと充電器につないでいてもいい。その影響もあると見ています。

 仕入れの観点では、国内で仕入れたものを海外に売るというのがメインストリームになっていますが、輸出が難しくなりました。その分、日本国内に端末が来るかと思ったのですが、それもあまりありません。買い取り店が軒並みお店を閉めていたので、買い取り自体が減っているからです。海外に関しても、香港やドバイがあんな状況になっているため、なかなか仕入れができず、需要はありますが、供給がないという状況で進んでいます。

割引制限の影響が分かるのはもう少し先

―― 割引の制限によって、ハイエンドモデルが売れづらくなったという話はよく聞きます。新品の流通量が落ちてしまうと、買い取りに影響が出るといったことはないのでしょうか。

粟津氏 一般的に中古の場合、一次市場の1年後、2年後に影響が出てきます。一次市場が伸び悩むと、二次市場にそれが波及するのは、翌年や翌々年です。ですから、そちらについてはまだ影響は出ていませんが、もうちょっとしたら見えてくると思っています。

 ただ、日本では3割がキャリアのショップで下取りに出し、僕たち中古業者に入ってくるのは全体の5%ほどです。埋蔵されている端末は、全体の65%になります。この65%が本来宝の山で、しっかり回収して国内のユーザーにちゃんと届けるところまでやっていかなければなりません。

 ここは諸外国と違うところでもあるのですが、欧米だと、最初から端末を売る想定で計算して買っているところがあります。国内はそこが度外視されているので、僕たち側で、しっかり説明していかなければならないと考えています。

―― キャリアとの関係でいうと、いわゆるアップグレードプログラムが3社で主流になり、何か状況は変わりましたか。

粟津氏 具体的なデータは取っていませんが、影響は出ると思います。ただしこれも、あと半年から1年後ぐらいたってからですね。キャリアの下取りの割合が3割から、4割、5割に上がっていくことになると思います。

―― 割賦で買って割引も受けていると、売却価値があるものだという認識が薄れてしまうのかもしれないですね。

粟津氏 マヒしているところはあると思います。ただし、そのマヒも10月以降、徐々に解けています。

MVNOで中古端末を使う人も増えている

―― キャリアの下取りは3割ということですが、キャリアはその端末を海外の業者に販売しています。その分を、国内の中古事業者が買い取るということはできないのでしょうか。

粟津氏 買い取ることもできなくはないと思いますが、先方が要求するロットが大きく違い、経済合理性の話になってしまいます。例えば100万台といわれても、1社でそれを買えるところは正直国内にはありませんが、海外にはいっぱいあります。仮に僕が逆の立場だったとして、月10万台取り扱っているところに、携帯市場(粟津氏が社長を務める中古販売会社)に100台欲しいと言われたら、「いちいち分けるか!」と思いますからね(笑)。鶏が先か卵が先かになってしまいますが、国内マーケットにもっと流通すれば、そこから買うことができます。その環境の整備が先かなと思っています。

―― 中古端末の流通促進は、MVNOの普及ともある程度リンクしていたと思いますが、MVNOで使うユーザーはやはり多いのでしょうか。

粟津氏 最近、増えてきている感じがします。ソフトバンク以外は、オンラインで中古端末のSIMロック解除ができるようになったので、その影響も大きいのではないでしょうか。僕たちが買い取るときにロックがかかっていても、解除してSIMフリーとして売るというケースも増えています。マーケット全体の観点でいうと、今まではドコモ端末だとドコモのユーザーにしか売れませんでしたが、SIMロックが解除されれば、どのキャリアでも使えます。売る相手が1台あたり、3倍、4倍に広がるということになります。

―― 一方で、キャリアモデルは、他社の周波数にきちんと対応していないなどの問題もあります。こうした点をきっちり説明することは、RMJのガイドラインに含まれているのでしょうか。

粟津氏 そこにはまだ触れていません。総務省の研究会では楽天モバイルが指摘していましたが、消費者がまだそこまで気にしていないところもあり、できていません。

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