法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「Galaxy Note20 Ultra」は進化を極めたSペンで最強のデジタルツールに

 サムスンは8月5日、Galaxy UNPACKED 2020をはじめてオンラインで開催し、同社のフラッグシップモデル「Galaxy Note20」シリーズやスマートウォッチ「Galaxy Watch3」、完全ワイヤレスイヤホン「Galaxy Buds Live」などが発表された。これらの内、フラッグシップモデル「Galaxy Note20 Ultra」のグローバル版を試用することができたので、レポートをお送りしよう。

サムスン「Galaxy Note20 Ultra」(グローバル版)、164.8mm(高さ)×77.2mm(幅)×8.1mm(厚さ)、208g(重さ)、Mystic Bronze(写真)、Mystic Black、Mystic Whiteをラインアップ

「Galaxy Note20」シリーズは2モデル展開に

 サムスンと言えば、「Galaxy S」シリーズがフラッグシップとして位置付けられ、国内でも夏モデルとして登場することで広く知られている。今年も「Galaxy S20」と「Galaxy S20+」がNTTドコモとauから発売され、高い人気を得ている。筆者自身もGalaxy S20+を愛用中だ。

 そして、もうひとつのフラッグシップに位置付けられるのが「Galaxy Note」シリーズだ。サムスンのラインアップにおいて、Galaxy Sシリーズがスタンダードなデザインを追求してきたのに対し、Galaxy Noteシリーズは2011年に発表された初代モデルで「大画面」「大容量バッテリー」というコンセプトを打ち出し、「Sペン」という特長を組み込むことで、他製品にはない新しい市場を開拓してきた。Galaxy Noteシリーズが登場した当時、「こんなデカいスマートフォンは市場に受け入れられない」と評されたが、動画視聴のニーズ拡大などとも相まって、ライバルメーカーも大画面、大容量バッテリーのモデルをラインアップに加え、新しい市場が形成されたことで、当時、示した方向性は正しかったことが裏付けられたと言えそうだ。

 また、Galaxy Noteシリーズが常に高い人気を保ち続ける理由のひとつがワコムのペンタブレットの技術を応用した「Sペン」にある。「手のひらサイズのデバイスにペンで書く」というスタイルは、紙の手帳やノートを進化させた形であり、古くからPDAなどに触れてきた筆者のような世代のユーザーには、かつてのデジタルツールを追求した進化形という印象もある。そんなSペンも最近では書き味を追求するだけでなく、2018年に発売された「Galaxy Note9」では、カメラ撮影などのリモコンとしての機能を追加するなど、新しい方向性を打ち出している。

Galaxy Note10+(左/NTTドコモ向け)、Galaxy Note20 Ultra(中央/グローバル版)、Galaxy Note9(右/au向け)を並べてみると、Galaxy Note10+からデザインが大きく変更された印象

 こうしたGalaxy Noteシリーズの新しい方向性が示された背景には、サムスンとして、新しい世代のGalaxy Noteユーザーの期待に応えたいという思いがあるようだ。Galaxy Noteシリーズは前述のように、「Sペンで書く」ことをひとつの特長としてきた。たとえば、打ち合わせでメモを取ったり、思いついたことを書き留めておくなどの使い方があるが、イラストなどを描くクリエイターにも支持されてきた。しかし、こうしたプロ、もしくはそれに近いようなユーザーだけでなく、カメラで撮影した写真にさまざまなエフェクトを描き加えて楽しむカジュアルなユーザーにも活用して欲しいと考えているわけだ。

 しかし、プロフェッショナルなニーズにも応えられる進化を遂げてきたフラッグシップモデルのGalaxy Noteシリーズは価格もやや高めで、ミッドレンジが主流となり始めている市場では、なかなか受け入れてもらえそうにない。そこで、昨年のGalaxy Note10シリーズでは主力の「Galaxy Note10+」に加え、ディスプレイの解像度などが異なる「Galaxy Note10」をラインアップし、今年1月にはよりライトな仕様の「Galaxy Note10 Lite」を「Galaxy S10 Lite」と共に発表している。

 そして、今回、発表された「Galaxy Note20」シリーズでは、よりモデルの性格付けが明確になり、フラッグシップ「Galaxy Note20 Ultra」と「Galaxy Note20」の2つモデルがラインアップされた。Galaxy Note20 Ultraは言うまでもなく、Galaxy Noteシリーズの最高峰モデルであり、スペックもベストなものが選ばれている。これに対し、Galaxy Note20はネーミングこそ、スタンダードだが、ディスプレイやカメラのスペックは抑えられ、価格も25%程度、割安に設定されている。しかし、Sペンなどの仕様は基本的に共通であり、Galaxy Noteシリーズならではの機能をカジュアルなユーザーに楽しんで欲しいモデルに位置付けられている。

 2モデル展開となったGalaxy Note20シリーズだが、今回はグローバル向けに発売されている「Galaxy Note20 Ultra」を入手し、試用することができた。グローバル版の端末の試用については、誤解も多いので、少し補足しておこう。

 本来、今回のGalaxy Note20 Ultraのグローバル版を含め、海外向けに販売されている端末は、一般的に日本国内の技術適合の認定を受けていないため、国内でそのまま使うことができない。しかし、昨年11月の電波法改正により、「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」が設けられたため、技適のない機器でも最大180日のテストが可能となっている。手続きもマイナンバーカードを使い、オンラインで届け出が可能になっており、今回はその申請をしたうえで、試用している。ただし、この特例制度で利用できるのは、Wi-FiやBluetoothのみで、3Gや4G LTE、5Gなど、モバイルネットワークは利用できないため、基本的には自宅やオフィスなどのWi-Fiの環境下、もしくは国内契約のスマートフォンのテザリングやモバイルWi-Fiルーターの配下で利用することになる。

 では、モバイルネットワークで利用できないかというと、必ずしもそうではない。これまでに本誌記事などで取り上げられてきたが、海外で契約した回線を国際ローミングという形で利用する場合は、入国から90日間の利用が可能となっている。この90日ルールについて、ネット上では「日本人が使うのはダメで、訪日外国人なら、許される」といった解釈が散見されるが、電波法では利用者の国籍を定めておらず、「外国の通信局」と表記しており、海外の携帯電話事業者で契約した回線(SIMカード)を挿した端末を国内に持ち込んで利用するケースを想定している。今回は筆者がタイで契約しているAISという携帯電話事業者のSIMカードを挿して利用したが、データローミングはオフにしており、基本的には前述のWi-Fiの配下のみで試用している。

 話を元に戻そう。今回試用したGalaxy Note20 Ultraは、グローバル版であり、国内での発売については、まだ何もアナウンスされていない。ただし、例年通り、サムスン電子ジャパンのWebページには製品情報が掲載されており、昨年までのパターンを踏襲すれば、NTTドコモとauから発売されることになりそうだ。気になるのはGalaxy Note20の方の扱いで、幅広いユーザーに売っていきたいというメーカーの意図を携帯電話事業者が認めるのなら、2モデル展開で売ることも考えられる。また、Galaxy S10やGalaxy Note10+を扱う楽天モバイルもいずれかのモデルを扱う可能性がある。グローバル向け発表時の価格は「Galaxy Note20 Ultra」が1299ドル(約13万8000円)、「Galaxy Note20」が999ドル(10万6000円)となっており、国内展開時はこれらよりも少し高くなるかもしれない。

存在感のある美しく上質なデザインのボディ

 さて、外観からチェックしてみよう。従来モデルの記事でも説明してきたが、Galaxy Noteシリーズは同じフラッグシップモデルのGalaxy Sシリーズ比べ、やや四つの角を立てたスクエアなデザインを採用しており、そのデザインを今回のGalaxy Note20 Ultraも継承している。サイズ感としては従来のGalaxy Note10+と比べ、高さがわずかに長いものの、幅はまったく同じで、厚さはスペック上、0.2mmしか違わない。ただし、これはボディのみの厚みで、Galaxy Note20 Ultraは背面のカメラ部がかなり突起しているため、実測値で約2.5~2.7mm程度、厚くなっており、最厚部は約11mmになる。パッケージにはクリアタイプのカバーが同梱されていたが、安心して使うにはカバー類の装着が避けられないと言えそうだ。

背面は左右の側面部分がラウンドしているが、上下はほぼフラット。カメラ部がかなり目立つ
Galaxy Note20 Ultra(左)とGalaxy Note10+(右)の前面。高さ(長さ)が少し大きくなっている
Galaxy Note20 Ultra(左)とGalaxy Note10+(右)の上部から見た厚みの比較。本体はわずかながら、厚みが増しているが、カメラ部はかなり厚くなった

 また、ボディ周りでGalaxy Note10+と異なるのは、ボタン類の配置と発表会でも触れられていたSペンの格納位置だ。まず、ボタン類だが、Galaxy Note9は当時のGalaxy S9+などと同じように、右側面に電源ボタン、左側面に音量ボタンとサイドキー(Bixbyボタン)というレイアウトだったが、Galaxy Note10+ではボタン類が左側面に集約され、電源ボタンはサイドキー(Bixbyボタン)と統合された。今回のGalaxy Note20 Ultraは再びレイアウトが変更され、右側面にサイドキーと音量ボタンが並び、サイドキーは長押しでBixbyと電源OFFメニューのいずれかを起動できる。ちなみに、このレイアウトはGalaxy S20シリーズでも採用されており、今後はこのレイアウトが標準になると予想される。

右側面はシーソー式音量ボタン、サイドキーを備える。サイドキーは電源ボタンとしても利用可能
左側面は従来モデルと違い、ボタン類が何もない仕上がりとなった

 次に、Sペンの格納位置については、Galaxy Note10+までの歴代モデルが下部右端だったのに対し、Galaxy Note20 Ultraは下部左端に移動している。これは背面を見ると、わかりやすいが、Sペンを下部右端(背面から見ると、下部左端)に収めると、カメラ部と同じサイドにレイアウトされるため、おそらくパーツ類の収まりが悪く、しかたなく、下部左端に移動したということだろう。特に、Galaxy Note20 Ultraのカメラは後述するように、ペリスコープ式の望遠カメラを搭載しているため、周囲のパーツのスペース的な制約はかなり大きかったと推察される。ちなみに、本体はIP68規格に準拠した防水防塵に対応する。

Galaxy Note20 Ultra(左)とGalaxy Note10+(右)の背面。カメラ部の存在感がまったく違う
上部はSIMカードスロット、マイクなどを備える。カメラ部の突起がかなり目立つ
下部はUSB Type-C外部接続端子、Sペンの格納口がある。Sペンはワンプッシュで、頭の部分が飛び出す構造

 ディスプレイはシリーズ最大となる6.9インチのDynamic AMOLED 2X(有機EL)ディスプレイを搭載する。解像度は1440×3088ドット表示のWQHD+対応となっており、縦横比は19.3:9、画面占有率は91.7%になる。ちなみに、Galaxy Note20はひと回り小さい(といっても十分に大画面だが)6.2インチのSuperAMOLED(有機EL)ディスプレイを採用しており、こちらは解像度が2400×1080ドット表示のフルHD+対応で、縦横比は20:9、画面占有率89.2%となっており、ややスペックは抑えられている。しかし、両モデル共、HDR10+に対応するなど、映像コンテンツ視聴には十分な性能を持つ。今回はImpress Watch Videoの動画に加え、YouTubeで公開されている4K動画やQHD動画なども視聴してみたが、非常に解像感が高く、美しい映像を楽しむことができた。ステレオスピーカーの音量も十分な印象だ。ちなみに、ディスプレイ上部中央にはインカメラのためのパンチホールが開けられているが、Galaxy Note10+に比べ、ひと回り小さくなっている。

ディスプレイは両側面に回り込むような形状のエッジスクリーンを採用

大容量インテリジェントバッテリー搭載

 生体認証は超音波式の画面内指紋センサーを利用した指紋認証、インカメラを利用した顔認証に対応する。顔認証は3D対応ではなく、一般的な顔認証のため、よく似た顔でもロックが解除されてしまうため、セキュアに使いたいときは指紋認証のみで利用することをおすすめしたい。ちなみに、顔認証はマスクを装着した状態での認証には対応していない。ニューノーマルの環境を考慮すると、やはり、指紋認証がもっとも堅実ということになりそうだ。

 バッテリーは4500mAhの大容量インテリジェントバッテリーを搭載する。Galaxy Note20や従来のGalaxy Note10+と比べ、5%ほど、増えた計算になる。パッケージに同梱される25WのACアダプターによる急速充電を利用すれば、バッテリー残量がゼロの状態から約30分で50%まで充電することができる。Qi/PMA規格準拠の15Wワイヤレス充電に対応するほか、従来モデルに引き続き、Wireless PowerShareを有効にすることで、4.5Wでのワイヤレス給電にも対応する。同時発表されたGalaxy Buds Liveなど、ウェアラブルデバイスを充電したいときにも便利だ。

 チップセットは発売する国と地域によって違い、米Qualcomm製Snapdragon 865 Plusと韓サムスン製Exynos 990のどちらかが搭載されるとのことだったが、今回試用したモデルはExynos 990が搭載されていた。メモリーとストレージについてはRAM 12GB、ROM 256GBのモデルで、microSDメモリーカードも利用可能なモデルだったが、市場にはRAM/ROMの容量が異なるモデルも販売される。

 ネットワークについては5GがNA/NSAの両対応で、周波数帯域はSub6/mmWave(ミリ波)対応。4G LTEはCat.20準拠で、4×4MIMOや7CAに対応し、受信時最大2Gbps、送信時最大1.2Gbpsに対応する。Wi-FiはIEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax準拠、Bluetooth 5.0対応となっているほか、近隣の機器とファイル共有などに利用できるUWBにも対応する。

 SIMカードはnanoSIMカードを利用したデュアルSIMに加え、eSIMにも対応する。ただし、これらはいずれも発売される国と地域によって、仕様が異なり、当然のことながら、国内のNTTドコモやauなどが扱う場合は、シングルSIMのモデルが供給されることが予想される。

ピンを挿して取り出すタイプのSIMカードトレイを本体上部に備える。nanoSIMカードのデュアルSIM対応だが、2枚目のSIMカードはmicroSDメモリーカードと排他利用
2枚のSIMカードのほかに、eSIMにも対応する。QRコードなどを読み取って、追加するしくみを採用

 プラットフォームはAndroid 10を搭載し、ユーザーインターフェイスはOne UIを採用する。Androidプラットフォームのセキュリティパッチは2020年8月1日版が適用されていた。基本的なユーザーインターフェイスはこれまでのGalaxyシリーズと同様で、[戻る][ホーム]などのナビゲーション操作はナビゲーションボタンとジェスチャーが選ぶことができ、ボタンの配列も変更できる。

GalaxyシリーズのOne UIを採用。上方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示される

 ディスプレイのエッジ部分を内側にドラッグして表示する「エッジスクリーン」も継承されていて、よく使うアプリをすぐに起動できるようにしている。アプリ一覧はホーム画面から上方向にスワイプすると表示され、複数のアプリをフォルダにまとめる機能もサポートされている。アプリ一覧では並べ替えやページの整頓などができ、ホーム画面にはウィジェットを設定できる。ちなみに、サイドキーは前述のように、長押しでBixbyの起動と電源OFFメニューを選べるが、2回押しではカメラのクイック起動、Bixby起動のほか、特定のアプリを起動する機能も備える。今回試用したものはグローバル版だが、国内版のときは「d払い」や「au PAY」などの決済サービスのアプリを割り当てると便利そうだ。

画面を内側にスワイプして表示できるエッジスクリーンのメニュー
アプリ一覧は左右にスワイプして、ページを切り替える。フォルダを作成して、アプリをまとめることも可能
通知パネルにはQRコードリーダーなどのショートカットも登録されている
大画面を活かし、複数のアプリを分割して表示することも可能
ライバルメーカーがGoogleフォトに移行する中、独自の[Gallery]アプリで写真などを確認可能。バックアップに利用できるマイクロソフトの[OneDrive]もプリインストールされている

 また、従来モデルに引き続き、端末をディスプレイに接続して表示するDeXも進化を遂げている。従来は端末をUSB Type-C to HDMIケーブルなどで接続したり、DeX対応アプリケーションをインストールしたパソコンと接続することで利用できたが、今回は対応するテレビにワイヤレスで出力することも可能となっている。残念ながら、対応するテレビがないため、今回はUSBケーブルでディスプレイと接続する環境で試したが、単独での利用だけでなく、パソコンなどと併用する使い方なども便利で、出張先や外出先でのリモートワークにも適していると言えそうだ。

PC用ディスプレイにUSB Type-C to HDMIケーブルを接続し、DeXのデスクトップ画面を表示。Galaxy Note20 Ultraの画面をタッチパッドとして使える

月も撮影できる最大50倍超解像度ズーム

 今回のGalaxy Note20 Ultraが昨年のGalaxy Note10+ともっとも大きく異なる点としては、やはり、カメラが挙げられる。ここ数年、スマートフォンのカメラはサムスンやファーウェイ、シャオミ、OPPOの4社が激しい開発競争をくり広げており、一般的なデジタルカメラとは違った新しい写真や動画の世界を作り出している。個人的にはひとつの指標としか捉えていないが、カメラ性能を数値的に比較するDxOMARKでもトップ10にランクインするのは、この4社(サブブランドを含む)のスマートフォンで占められている。

Galaxy Note20 Ultra(右)とGalaxy Note10+(左)のカメラ部。ペリスコープ式カメラを搭載するなど、カメラの仕様は大きく異なるが、2倍以上のスペースを取っている印象。背面にはカバーを装着して、カメラ部をしっかり保護したい

 今回のGalaxy Note20 Ultraの背面には、3つのカメラが搭載される。まず、最上段に位置するのがワイドに撮影するときに使う12Mピクセル(1.4μm)/F2.2の超広角カメラ(13mm)で、センサーサイズは1/2.55インチ、視野角は120度となっている。

超広角カメラで撮影。雲があったが、青空もきれいに再現できている

 真ん中に位置するのがもっとも広く利用されるのが108Mピクセル(0.8μm)/F1.8の広角カメラ(26mm)で、センサーサイズは1/1.33インチと大きく、視野角は79度、光学手ブレ補正に対応する。

広角カメラで撮影。倍率の「1.0x」を選んだ状態
広角カメラで撮影。倍率の「2.0x」を選んだ状態
広角カメラで撮影。倍率の「4.0x」を選んだ状態

 最下段に位置するのが遠景を撮影するときに利用するのが12Mピクセル(1.0μm)/F3.0の望遠カメラ(120mm)で、ペリスコープ式による光学5倍ズーム、光学手ブレ補正に対応する。望遠カメラを使い、デジタルズームを組み合わせた超解像度ズームは、最大50倍となっており、かなりの遠景でもブレを抑えた写真を撮ることができる。今回は屋外だけでなく、夜の月も撮ってみたが、見事に月の表面の模様を含めた写真を撮ることができた。こうした月の写真はファーウェイが得意としていたが、Galaxy Note20 Ultraでも同じように、AIが月を認識して、撮影できるようになったようだ。トリプルカメラの右側には、レーザーAFセンサー、LEDフラッシュが備える。

望遠カメラで撮影。倍率の「10.0x」を選んだ状態
望遠カメラで撮影。倍率の「20.0x」を選んだ状態
望遠カメラで撮影。倍率の「50.0x」を選んだ状態
夜間、屋外で撮影。広角カメラで撮影したが、全体的に明るく撮影できている
手持ちでの撮影だが、模様を含めた月を撮影することができた。身体を固定すれば、もう少しきれいに撮れたかもしれない

 本体前面のパンチホールに収められたセルフィーカメラは、10Mピクセル(1.22μm)/F2.2という仕様で、80度の視野角とデュアルピクセルAFにより、メインの被写体をしっかりと捉えた撮影ができる。撮影モードの「その他」で「ライブフォーカス」を選べば、背景をぼかしたポートレートを撮影することもできる。

飛行機の窓から富士山の頂上を望遠カメラで撮影。飛行機の窓や機内の照明の影響を受けたのか、やや色味が黄色い印象
室内でミニカーを撮影。近い距離だが、後ろにあるミニカーがボケている

 カメラのユーザーインターフェイスは最近のGalaxyシリーズのものを継承しており、Galaxy Z Flipで初採用され、Galaxy S20シリーズなどにも搭載された「シングルテイク」もサポートされる。新しいところでは動画がGalaxy S20シリーズなどに引き続き、24fpsの8K動画の撮影に対応する。撮影モードで「プロ動画」を選ぶと、動画撮影時のさまざまな設定が変更できるなど、動画撮影が目を引く。具体的には、サウンドやISO感度、オートフォーカス、ホワイトバランス、露出、ズーム速度などを細かく設定でき、サウンドも全方向の[オムニ]、前方向の[フロント]、後ろ方向の[リア]が選べるほか、USB Type-C外部接続端子に接続したマイクやBluetooth接続のマイクを有効にできる。この他にも撮影した8K動画を編集する機能を備えるなど、自分で撮影(制作)した動画をYouTubeなどで配信するクリエイティブなユーザーにも魅力的なカメラに仕上がっていると言えそうだ。

カメラ起動時にズームを利用するときのユーザーインターフェイス。中央右側の木のアイコンをタップすると、倍率が表示され、すぐに選べる
背景のボケ具合はエフェクトを変更することが可能。視覚的でわかりやすいユーザーインターフェイスだ

 ちなみに、同時発表のGalaxy Note20はGalaxy Note20 Ultraに比べ、カメラのスペックが抑えられており、光学5倍ズームや108Mピクセルカメラなどは搭載されていないが、セルフィーカメラは同等のものが搭載されている。こうした仕様の共通部分と相違からも2つのモデルの方向性の違いをうかがい知ることができる。

一段と書きやすさが向上したSペン

 さて、Galaxy Noteシリーズのアイデンティティとも言える「Sペン」。冒頭でも触れたように、歴代のモデルでも着実に使いやすさや書きやすさを向上させ、エアコマンドなどの機能面もかなりバージョンアップを重ねてきた。手書きで入力するための「ペン」としてはもちろん、カメラ利用時やプレゼンテーション実行時のリモコンとしても使えるようにするなど、新しい領域の機能も増えてきた。

 そんな中、今回のGalaxy Note20 Ultraでは、Sペンそのものの改良を図り、レイテンシ(遅延)を9msまで向上させ、大幅に書きやすさを改善している。筆者の手元にはGalaxy Note10+とGalaxy Note9があり、実際に書き比べてみたが、世代が古いほど、浮いた画面にSペンで文字を書いているような感覚があるのに対し、Galaxy Note20 Ultraは画面によりダイレクトに書いているような印象が残った。旧機種を体験してないユーザーや書いた回数が少ないユーザーには、ちょっと違いがつかみにくいかもしれないが、5分ほど、各機種を取っかえ引っかえ触っていると、わかってくるレベルの違いがある。裏を返せば、実使用で使い込んでいくほど、旧機種との差は明確に感じられるようになるはずだ。

Galaxy Note20 UltraではSペンのレイテンシが向上し、一段と書きやすくなった

 また、前述のように、Galaxy Note20 UltraではこれまでのGalaxy Noteシリーズと違い、Sペンの格納位置が下部右端から下部左端に移動している。端末を左手に持った場合、下部右端の方がSペンを取り出しやすかったが、Galaxy Note20 Ultraの下部左端でも慣れてしまえば、それほど苦にならなさそうだ。

Sペンの格納部は下部左側に移動。少し慣れが必要だが、意外に苦にならなかった

 機能的には従来同様、Sペンを引き抜くと、Sペンのメニューが表示され、「ノートを作成」を選び、「Samsung Notes(国内版は「Galaxy Notes」)」を起動し、Sペンでメモを書く。手書き文字は傾いて書いてしまったとき、正対させるようにしたり、フリーハンドで書いた図形を成形表示するなどの機能も備える。これらの機能の多くは、すでにGalaxy Note10+のアプリでも利用できるようになっている。

Sペンの設定画面では「エアアクション」や「画面オフメモ」などの設定が可能
「エアアクション」のメニューではSペンのボタンの長押しでの動作、ペンを押しながらのジェスチャーの設定ができる
Sペンを取り出すと、Sペンに関連する機能のメニューが表示される
翻訳機能を使えば、外国語が表示されたWebページにSペンを近づけるだけで、翻訳内容が表示される
手書きの文字を斜めに書いてしまうことは多いが……
[傾き補正]をタップするだけで、まっすぐに補正される

 また、発表会でアナウンスされていたが、日本のセルシスが開発したペイントツール「CLIP STUDIO PAINT」の限定版となる「CLIP STUDIO PAINT for Galaxy」がサムスンのアプリ配信サービス「Galaxy Store」を通じて配信される。すでに配信は開始されており、既存のGalaxy Noteユーザーもダウンロードすることが可能だ。Android版は当面、Galaxyユーザー向けのみに展開され、その後、Google Playストアで他機種ユーザー向けにも配信される予定となっている。筆者は絵を描く心得がないが、マンガやイラストを描く人には高い評価を得ているアプリであり、今まで以上にクリエイティブなユーザーに支持を拡げることになりそうだ。

Galaxy Storeではセルシスの「CLIP STUDIO PAINT for Galaxy」を配信中
イラストやマンガのペイントツールとして高い評価を得ている「CLIP STUDIO PAINT」。チュートリアルも充実している

国内向けの販売が待ち遠しい最強モデル

 5G元年と言われる国内のモバイル市場は、今年3月に各社の5Gサービスがスタートし、5G対応スマートフォンが発売されたものの、コロナ禍の影響もあり、今ひとつ市場に存在感を示すことができていない。エリアが限られていることや5Gならではのユースケースが見つかっていないことなどが挙げられるが、その一方で、スマートフォンそのものに今ひとつワクワクする要素が欠けているという指摘もある。本連載でも注目機種を順次、取り上げているが、正直なところ、絶対的な個性を持つスマートフォンは、徐々に少なくなってきた印象も残る。

今回試用したGalaxy Note20 Ultraは「Mystic Bronze」だったが、完全ワイヤレスイヤホンの最新モデル「Galaxy Buds Live」も同じカラーが発売中。今後、サムスンではこのカラーをテーマカラーとして展開していくという

 そんな中、サムスンは昨年のGalaxy Fold、今年のGalaxy Z Flip、先日のGalaxy Z Fold2をリリースする一方、フラッグシップモデルのGalaxy S20シリーズに加え、Galaxy Note20シリーズにも新たな進化を加えてきた。特に、今回のモデルはGalaxy Noteシリーズのアイデンティティとも言えるSペンを強化する一方、ユーザーからの注目度が高いカメラにもペリスコープ式の光学ズームを取り入れるなど、全体的なスペックアップが図られている。5Gについてはまだ未知数だが、スマートフォンとしての基本仕様をしっかりと充実させながら、「書く」便利さと「描く」楽しさにも磨きをかけ、ユーザーが使いたくなるスマートフォンとして仕上げられている。今回、試用した製品はグローバル版だが、おそらく登場するであろう国内版の発売が待ち遠しい一台と言えるだろう。サムスンと国内の各携帯電話会社の発表を楽しみに待ちたい。

※本記事で掲載している無線設備は電波法第三章に定める技術基準への適合が確認されておらず、法に定める特別な条件の下でのみ使用が認められています。当該条件に違反して当該無線設備を使用することは、法に定める罰則その他の措置の対象となります。