スッキリ分かるWi-Fiルーター(ASUS編)

Wi-Fiでやってみた【ZenWiFi編】第6回

5GHzと2.4GHzどっちのSSIDにつなぐ? を勝手に選んでくれる「スマートコネクト」

 PCやスマートフォンなどのWi-Fi子機をルーターに接続するときは、SSIDとパスワードを入力するのはご存知だろう。入力はそう難しい作業ではないので、多くの人は自分で設定した経験があるかと思う。

 SSIDの入力で引っ掛かる点があるとすれば、「SSIDが2つある問題」だ。既存のWi-Fiルーターの多くは、標準で2つのSSIDが設定されている。Wi-Fiルーターの裏面にSSIDとパスワードが書いてあるが、2つ書いてあるうちのどちらを入力すればいいのか、悩んだことがある人もいるだろう。

ASUSのメッシュ対応Wi-Fi 6ルーター「ZenWiFi AX」
ZenWiFi AXは、最大4804Mbpsに対応するトライバンドのWi-Fi 6ルーター。単体でも使える1台構成と、メッシュWi-Fiを構成できる2台セットに加え、Amazon.co.jp限定のブラックモデルが販売されている。さらに1台の環境へ追加してメッシュWi-Fiを構成できる11ac対応の「ZenWiFi AC」もラインアップする

遠距離や障害物に強いが干渉を受けやすい2.4GHz帯高速だが遠距離通信や対障害物で劣る5GHz帯

 SSIDが2つ存在する理由は、Wi-Fiで使われる電波に、2.4GHz帯と5GHz帯という2つの周波数帯があるからだ。

 2.4GHz帯は、遠距離や障害物を挟んだ通信に強い反面、電子レンジなど、ほかの電波を出す機器からの干渉を受けやすいという弱点がある。

 5GHz帯は、Wi-Fi専用の電波帯なので干渉を受けにくく、2.4GHz帯より高速な通信が可能だ。ただし2.4GHz帯に比べ、遠距離や対障害物の面で劣るのがデメリットとなる。

 この2つの周波数帯は、Wi-Fi子機ごとにどちらかを選んで接続する仕組みで、SSIDが2つあるのはそのためだ。

 つまり「SSIDが2つある問題」について言えば、どちらを入力しても接続はできる。ただし、2.4GHz帯を選ぶと通信速度が遅かったり、5GHz帯を選ぶと遠距離で途切れやすかったり、といった問題が出る場合がある。

 では、2つのSSIDの両方をWi-Fi子機に登録しておくとどうなるだろうか。例えばスマートフォンを持って外出してから帰宅すると、自動的に接続するのは電波が遠距離まで届く2.4GHz帯の方になる。それから5GHz帯の電波が十分届く距離になっても、既に2.4GHz帯で通信できているので、そのままになってしまう。接続先を5GHz帯にしたければ、手動で切り替えなければならない。

 Wi-Fiにおける2.4GHz帯と5GHz帯の2つのSSIDの問題は、まとめると2点ある。1点目は、2つの周波数帯を使いこなすにはその違いを理解する必要があること。そして2点目は、2.4GHz帯と5GHz帯の両方とも接続できるようにしてしまうと、遅い方の2.4GHz帯を自動接続でつかみがちになることだ。

近ければ5GHz帯、遠ければ2.4GHz帯に自動でつなぐ「スマートコネクト」

 さて、ここからが今回の本題となる。ASUSでは「スマートコネクト」という機能を用意し、Wi-Fiルーターの2.4GHz帯と5GHz帯のSSIDを1つにまとめている。

 スマートコネクトには、本連載の検証で使用しているメッシュWi-Fiルーター「ZenWiFi AX(XT8)」も対応していて、本体裏には1つのSSIDしか記載されていない。これなら接続先SSIDとしてどちらを選ぶのかを悩むことはない。

 PCから実際にこのSSIDへ接続してみると、5GHz帯に接続しているのが確認できる。2.4GHz帯か5GHz帯か、どちらに接続するかという選択はなく、勝手に5GHzに繋がったという恰好だ。

ルーターのそばでWi-Fiにつないだとき
1つだけのSSIDに接続すると、5GHz帯で接続された
リンク速度も1201Mbpsで何ら問題ない

 この状態で、PCをWi-Fiルーターから遠ざけていく。徐々にリンク速度が落ちて接続が不安定になっていき、次の瞬間、接続が勝手に切り替わった。確認すると、2.4GHz帯で接続していた。距離が遠ざかって5GHz帯では接続が難しくなったため、より遠くまで電波が届く2.4GHz帯に切り替わったわけだ。もちろん接続先のSSIDは同じままだ。

ルーターから遠く離れたところでWi-Fiにつなぐと
Wi-Fiルーターから距離が離れると、接続先SSIDは同じまま、5GHz帯から自動的に2.4GHzへ接続が切り替わった
リンク速度は送信138、受信103Mbpsへと下がっている

 今度は、PCをWi-Fiルーターに近づけていくと、ある程度のところで再び接続が5GHz帯へ切り替わった。5GHz帯でも安定して繋がる距離になったので、より高速な通信ができるよう切り替えられたわけだ。

ZenWiFi AX(XT8)の設定画面では「スマートコネクト」での挙動をカスタマイズできる

 基本的なことを言えば、できれば高速な5GHz帯で家中をカバーして欲しいが、例えば屋外でも自宅の庭くらいはWi-Fiに繋がって欲しいと思うことはあるだろう。そうした場合も5GHz帯では無理でも2.4GHz帯なら届く可能性はあるので、環境や状況によって、2.4GHz帯へ切り替わることには価値がある。それをユーザーが特に意識することなくやってくれるのが「スマートコネクト」だ。

 ちなみにZenWiFi AX(XT8)にはスマートコネクトの設定項目があり、切り替えの閾値や頻度などを細かく調整できる。特に設定を変更しなくても上記のような挙動となるが、ネットワークの知識があり、特にこだわりたいなら、設定を詰めてみても面白いだろう。

(協力:ASUS JAPAN株式会社)

石田 賀津男