中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2020/10/15~10/22]

「CEATEC」総まとめ:デジタル技術が創り出すニューノーマル ほか

eHrach/Shutterstock.com

1.「CEATEC」総まとめ:デジタル技術が創り出すニューノーマル

 今週、「CEATEC 2020 ONLINE」が開幕した(INTERNET WatchINTERNET Watch)。新型コロナウイルス感染拡大を防止する観点から、全てがオンラインでの開催という初めての試みとなった。本来、リアルなイベントで、実際に見たり、体験したりすることも重要なことだが、こうしてオンラインにより広く参加ができるということもニューノーマルともいえよう。昨年の登録来場者が14万4491人だったが、今年は物理的な移動が伴わないことから、さらに全国から多くのオンライン参加者が期待された。それもあってのことか、開幕日の朝にはアクセス集中により、ログインができななどの不具合が生じた(INTERNET Watch)。

 そのようななか、各社は「ニューノーマル」を意識した発表内容になった。これはデジタル技術による必然ともいえるが、新型コロナウイルスにより、より課題が明確になり、短期的な要求が高まったことによるだろう。例えば、ワイヤレスやセンシングなどの技術を使用した遠隔・非接触、そして仮想空間などの実現、さらに生成されたデータをAIで分析することで、業務を効率化したり、新たな価値を提供したりするソリューションが多数見られる。具体的な利用例としてあげるなら、スマートシティ、スマートホーム、スマートモビリティなどがその将来像ということができる。

 このようなイベントのコンセプトを象徴するように、開会初日には、慶應義塾大学の村井純教授が「パンデミックを経たインターネット文明」と題した基調講演を行った(INTERNET Watch)。村井氏は内閣官房参与に就任していて、政府のデジタル化戦略に助言をする立場でもある。講演では「文明は、道具を生み出して、道具を用いて、社会を構築することによって生まれるが、デジタルテクノロジーやネットワークをベースにしたインターネット文明を作り上げたところに、パンデミックが起こった」と述べた。その上で、さらにデジタル化を進めるにあたり「デジタル化はいい訳なしですすめるが、一人も置いてけぼりにしないことが最も大切である。実際には、デジタルを使えない人や、使えない業界があり、全部救えないかもしれないが、だからやらないということとは話が違う。地デジのときは、最後は地域の人が助けて、テレビが映るように支援した。国も支援した。(中略)また、締め切りを決めてやるのは、役所を中心に日本は苦手なところがあるが、これもやっていく必要がある」と、今後の課題と解決の方向性を示した。

ニュースソース

  • シャープ、透明ディスプレイを使ったパーティションをCEATECに展示、withコロナ対応で[INTERNET Watch
  • CEATEC 2020 ONLINEがいよいよ開催、今年のAWARDは「富岳」とRNA検出技術[INTERNET Watch
  • ソニー、コロナ禍で需要が高まっている3つの「R」の技術をCEATECで紹介[INTERNET Watch
  • オフグリッド型住宅「OUTPOST」に関する展示を行うトレジャーデータのCEATECブース[INTERNET Watch
  • 働き方改革のための技術をCEATECに展示するパナソニック ソリューションテクノロジー[INTERNET Watch
  • 村井純教授が基調講演「インターネットでグローバルパンデミックに立ち向かえた」CEATEC 2020で[INTERNET Watch
  • ソニー石塚氏が基調講演「長期視点で社会や地球環境への貢献を目指す」[INTERNET Watch
  • LIXIL、IoTで家全体を連携するスマートホームシステム「Life Assist」をCEATECで紹介[INTERNET Watch
  • 東芝情報システム、ニューノーマル時代の受付管理ソリューション「TQSPassport」などをCEATECに展示[INTERNET Watch
  • 東芝、世界最速の計算技術から高精度がん検出技術までCEATECで多彩な展示[INTERNET Watch
  • タイコ エレクトロニクス ジャパン、CEATECでEV向けコネクターなど電子部品やソリューションを展示[INTERNET Watch
  • サイバーリンク、マスク着用でも90%以上認識するAI顔認証エンジン「FaceMe」をCEATECに展示[INTERNET Watch
  • AWSのサービスや事例をCEATECで紹介するアマゾン ウェブ サービスブース[INTERNET Watch
  • 空中ディスプレイやBLEビーコンなどの薄型IoTデバイスをCEATECに展示するMIRAI BAR[INTERNET Watch
  • 地図情報ベースのソリューションを多数展開するCEATECのゼンリンブース[INTERNET Watch
  • PFU、オールインワン本人確認デバイス「Caora」などエッジソリューションをCEATECに展示[INTERNET Watch
  • ドリーム・アーツ、大企業向けデジタル化推進クラウド「SmartDB」をCEATECで展示[INTERNET Watch
  • 「Smart Factory」をテーマに工場の自動化ソリューションを紹介するテクノアートブース[INTERNET Watch
  • 日本ガイシ、IoTデバイス用電源として高容量・大電流の「EnerCera(エナセラ)」をCEATECで展示[INTERNET Watch
  • JRCモビリティ、4次元センシングで危険予測する「RAC 4D-Ai」などCEATECで展示[INTERNET Watch
  • スマートホームは「家電データ活用」で新段階に、新事業を生む「JEITAスマートホームデータカタログ」がCEATECで初公開 「フィットネス+調理履歴」「生活診断+空気清浄機」「アパート経営+各種家電」など………[INTERNET Watch
  • 初の「オンラインCEATEC」開催直前、エグゼクティブプロデューサー・鹿野氏にインタビュー 10月20日~23日に初の完全オンライン開催 320社/団体以上が出展[INTERNET Watch
  • 「テクノロジーで感動」を目指すソニー、CEATEC展示はエンタメ、スポーツから医療まで! CEATECブースで「体感」を[INTERNET Watch
  • 現実になっていく「空飛ぶクルマ」の今日と明日、国と大企業、ベンチャーが協力していく近未来像とは? CEATECで「次世代空モビリティシンポジウム」、10月23日に開催[INTERNET Watch
  • CEATEC 2020 ONLINEのバーチャルツアーを開催 10月22日(木)と23日(金)の2回、Zoomウェビナーへの事前登録を受付中[INTERNET Watch
  • 「CEATEC 2020 ONLINE」が大混雑、開幕するもアクセス集中で入場制限中[INTERNET Watch
  • 「CEATEC 2020 ONLINE」アクセス障害の原因は? 協議会が原因と対策を報告[INTERNET Watch
  • 初の「オンラインCEATEC」は出展者から見てどうなのか? 今晩19時、会場より生放送 ゲストは神戸市、竹中工務店、LIXIL、主催はDIGITAL X[INTERNET Watch
  • FCNTのCEATECブース、ローカル5G対応スマートデバイスやAIカメラなど展示[ケータイWatch
  • ベッドとIoT連携で部屋全体を入眠環境へ、パラマウントベッドのCEATECブース[ケータイWatch
  • シャープ、AIでビジネス会話のストレス減らす「スマートヒアラブル」[ケータイWatch

2.「AI/SUM & TRAN/SUM」:菅内閣のデジタル戦略の本気度

 今週はAI(人工知能)を中心テーマとするイベント「AI/SUM & TRAN/SUM with CEATEC 2020」も開催された。開幕セレモニーには菅義偉内閣総理大臣によるあいさつと、梶山弘志経済産業大臣による基調講演が行われた(INTERNET Watch)。

 菅総理大臣は「政府も全力でデジタル化を進める決意。行政の縦割り、既得権益、あしき前例主義を打破し大胆な改革を進める。そのため、現在複数の省庁に分かれている政策を強力に進める体制としてデジタル庁を設立した」とデジタル化を本気で推進する強い意志を示した。

 そして、梶山弘志経済産業大臣は、ウィズコロナ、ポストコロナ時代のデータやAI技術の活用を推進する方向性を示した。社会全体でのデータ連携・共有の基盤づくりを担う「デジタルアーキテクチャ・デザインセンター」、産総研の「人工知能研究センター」、「AI Quest」という実践的な人材育成事業などについて紹介をした。

 また、平井卓也デジタル改革・IT担当大臣は「デジタル庁のミッションとは」と題する講演で、「デジタル庁の立ち上げではIT基本法を『抜本的に改正』し、政治主導の『とてつもない権限』を持たせ、スタートアップ企業のようなスピード感で立ち上げる」と述べた(INTERNET Watch)。これまでの取り組みについて「デジタル敗戦」だったとし、「今まで投資してきたインフラやIT政策が国民の期待に全く応えることができなかった」という反省の上から、自民党デジタル社会推進特別委員会で「デジタル・ニッポン2020」(自由民主党)という提言を発表している。こうした提言をベースとして、今後の政策が進められると見られる。

 各大臣の講演からは、いうまでもないことだが、ファクシミリをウェブに置き換えるだけのような電子化がゴールではなく、高いレベルでの情報通信技術により「日本の公的機関が保有するデータの活用」を目指していることが明確になっている。

ニュースソース

  • 菅総理と梶山経産相はAI&データ戦略について何を話したのか[INTERNET Watch
  • 平井デジタル相、新設デジタル庁は「とてつもない権限」とスタートアップ精神で、まずIT基本法改正[INTERNET Watch

3.「データ流通」がキーワード――政府が「Trusted Web」推進協議会を設置

 平井卓也デジタル改革・IT担当大臣が日本経済新聞のインタビューで、「行政のデジタル化を進めるだけでなく、民間の金融や交通など14分野と相互にデータをやりとりできるようにする」と述べたことが報じられている(日本経済新聞)。実現すれば、国民が転居した場合にも、行政へ届け出をすれば、利用している情報通信、金融、航空、空港、鉄道、電力、ガス、政府・行政サービス、医療、水道、物流、化学、クレジット、石油などの公共性が高いインフラサービスへの変更もワンストップで実現するという基本的な社会サービス全体の変革が期待されるところだ。

 また、内閣官房デジタル市場競争本部に「Trusted Web推進協議会」が設置された。座長には慶應義塾大学の村井純教授が就いた。第1回のオンライン会合で、西村康稔経済再生担当大臣は「社会全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進にはトラスト(信頼)に基づいたデータ流通が必要」だとし、「自らがデータ管理し、それを通じてトラストが担保されるデータガバナンスをインターネット上に構築することが重要だ」と設立趣旨を述べた(日経XTECH)。それを受けて、村井純教授は「デジタル社会に基盤となるアーキテクチャーを聖域なく議論していく」とし、インターネットインフラ、オペレーティングシステム(OS)、プロトコル、ウェブ、暗号化技術など幅広く議論し、全体のアーキテクチャーとして取りまとめていくという方向性を示した。

 「デジタル化」「デジタル改革」という漠然とした単語ではなく、「データ流通」というより具体的なイメージを示す単語が今後の重要なキーワードとして浮上している。

ニュースソース

  • 金融など14分野、官民でもデータ共有 平井デジタル相[日本経済新聞
  • 政府が「Trusted Web推進協議会」を設置、慶大村井教授が座長に[日経XTECH

4. 米司法省がグーグルを独占禁止法違反で提訴

 米司法省と11州は米グーグルを反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)違反でワシントンの連邦地裁に提訴したことを発表した(ケータイWatch)。グーグルの検索や検索連動型広告で、独占的な地位を維持するために、競争を阻害しているというのが趣旨である。これに対してグーグルは強く反発している(グーグル(ブログ))。「ユーザーがグーグル検索を利用するのは、強制されたり、代替手段が見つからなかったりするためではなく、利用することを自ら選択したからだ」という主張である。

 日本でも無縁な話題ではなく、今後の事態の推移を見守る必要がある。すでに、日本の公正取引委員会委員長に就任した前官房副長官補の古谷一之氏も「Google・Apple・Facebook・AmazonをアメリカやEUと共に厳しく監視する」とする見解を述べている(Gigazine)。

ニュースソース

  • 米司法省がグーグルを提訴、独占禁止法違反で[ケータイWatch
  • 日本の公正取引委員会が「Google・Apple・Facebook・AmazonをアメリカやEUと共に厳しく監視する」と表明[Gigazine

5. iPhoneだけではない――アップル社の次の新製品発表は?

 アップル社の新製品発表はiPhoneだけではない。ARMアーキテクチャーを採用したアップル社のCPUを搭載したMacの発表もあるはずだ(Engadget日本版)。また、これまでも噂になっている忘れ物防止タグであるAirTagsの発表もまだだ(Engadget日本版)。いずれも新型コロナウイルス感染症によるサプライチェーンの営業活動自粛などの影響があったとみられるが、年末に向け発表されるのではないかともいわれているようだ。

ニュースソース

  • アップル、11月17日にApple Silicon Mac発表イベント開催のうわさ[Engadget日本版
  • アップル忘れ物防止タグAirTags(仮)11月発表?AirPods Studio(仮)は遅れる噂[Engadget日本版

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。