スマートフォンからの音源を車内のスピーカーで再生しようとしたときに、Bluetooth接続のトランスミッターを利用する人は多いだろう。しかし、一部の「Apple CarPlay(カープレイ)」対応のカーナビシステムを搭載する車種であれば、USBケーブルで車とiPhoneを接続するだけでiPhoneから音楽を再生できることをご存じだろうか。また、スマートフォンで普段使いの地図アプリが備えるナビゲーションを利用することも可能だ。
本稿では、こうしたCarPlay関連の機能について、iOS 14におけるアップデートをおさらいする。
iOS 14におけるCarPlayのアップデートは主に2種類ある。1つは特定の車でiPhoneやApple Watchが「車のキー」になるという機能。もう1つはカーナビシステムと有線接続して使用する”一般的なCarPlay”としての機能だ。
対象となるiPhoneは、記事執筆時点(2020年10月28日)でXR/XS/XS Max/11/11 Pro/11 Pro Max/SE(第2世代)(iPhone 12シリーズも対象となるはず)。また、Apple Watchは、Series 5が対象となる。一方、対応する車種は公式サイトを確認する限りBMWの2021年モデルのみだ。CarPlayの基本機能に対応する車種のバリエーションと比べれば、同機能が使える車種は非常に限定的であり、筆者の環境では試せない。
公開されている内容をおさらいすると、対応車種では、ドアハンドルをタップするだけでNFCを使って車のロックを解除できる。また、車内リーダーやワイヤレス充電器にiPhoneを置くだけで車のエンジンをかけられるという。
Walletアプリに追加することで、家族や友達に仮想的な車の鍵を柔軟に共有できる機能も先進的だ。共有した鍵は簡単に取り消せるという。
iPhone自体のバッテリーが切れても、最大5時間は車のロックを解除してエンジンをかけられるという。これはApple Payのエクスプレスカードと同様の仕組みなのだろう。
「制限付きの運転」という設定をカスタマイズすることで、車の加速や最高速度、トラクションコントロール、ステレオの音量などを制限できることも興味深い。
「車のキー」機能を除いた一般的なCarPlayにも、iOS 14ではわずかながらアップデートが施されている。こちらは筆者の親族がたまたまホンダの対応車種を所有していたので、一部検証させてもらえた。
例えば、CarPlay利用中に壁紙を変えられるようになった。これはカーナビのディスプレイに表示されるホーム画面に相当する「Dashboard」と呼ばれる画面の壁紙を指す。CarPlay画面にある「設定」アプリから「壁紙」を選ぶと、設定可能な壁紙の候補が表示される。デフォルトではカラフルな模様が表示されているが、これをモノトーンにしたり、無地の背景に切り替えるようなことが可能だった。
Siriに関するアップデートもCarPlayで使用できた。例えば、特定の相手にオーディオメッセージを送信したり、ナビゲーション利用中に目的地までの到着予定時刻を特定の相手に共有したりというものだ。どちらもiOSで利用できるものと基本的に差はないと思われた。
ホンダの対応車種の場合には、ハンドル付近にある、人が話しているアイコンの描かれたボタンを長押しすることでSiriが起動した。Hey Siriと声をかけずとも、Siriを起動して、オーディオメッセージを送信できる。実際に使ってみた印象としては、テキストメッセージよりも便利だと感じた。
ただし、連絡先に紛らわしい名前の人が複数人登録されている場合には、正しい相手を選択する手順が煩雑だし、急にメッセージアプリでボイスメッセージが送られてきて戸惑う相手も多いだろう。そのため、連絡先を正しく呼び出せるように登録名を工夫したり、運転中にボイスメッセージの送信を行うことを、事前に相手と共有しておくなどの根回しは必須だとも感じた。
今回は十分な検証ができていないが、駐車、電気自動車の充電、食事の注文のための他社製アプリに対応したこと、縦長のスクリーンに表示する場合には、下部にステータスバーが表示されるようになったこと、中国語と日本語のキーボードに対応したことなども、iOS 14のトピックだ。CarPlay対応車をお持ちの方は、上述の進化点と合わせて試してみてほしい。
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