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総務省、「公正競争確保の在り方に関する検討会議」を開催、ドコモ完全子会社化による影響など検討

 総務省は3日、「公正競争確保の在り方に関する検討会議」の第1回を開催した。

 同会議は、NTTによるNTTドコモの完全子会社化による市場に対する影響をこれまでに行ってきたような累次の制度整備や市場環境の変化などを踏まえて公正競争の確保の観点から必要な方策について議論するもの。

 NTTは11月17日にドコモに対してTOBを実施。NTTコミュニケーションズやNTTコムウェアをドコモと統合する可能性も視野に入れ、これによりグループ全体を強化。GAFAへの対抗を狙う。

 同会議での主な検討事項案としては、電気通信市場をめぐる環境変化、グループ経営の強化等による市場への影響について検討される。また、それらを踏まえた上で、具体的に公正競争上の問題点としてどのようなものがあるか、現行制度の運用、検証等において見直すべき点はないかに加えて、そのほか公正競争確保の観点から必要な法則が議論される。

 第1回開催の3日は、NTTがドコモ完全子会社化の意義や正当性を説明。KDDIが連名で意見書を提出した28社、またその趣旨に賛同した9社を代表してドコモ完全子会社化のへの意見や問題点を主張した。

子会社化は市場環境への対応のため

 NTTでは、ドコモの完全子会社化について、固定・移動通信の融合や多面的・多層的な市場競争などを含む情報通信市場や新型コロナウイルスの影響による分散型社会やニューグローカリズムの到来といったトレンド変化が背景にあると説明。

 NTTはそうした新しい世界に対応した新サービスの提供やリソースの集中化、世界規模での研究開発の推進や新規事業の強化で成長を目指すという。そうした中で、ドコモを完全子会社化、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアの持つ強みも活かし、新たなサービスやソリューション、6G時代を見据えた通信基盤設備を移動・固定含めた形で推進し、多様なニーズに応える総合ICT企業としての形を目指すとしている。

 また、TOB成立後も、NTT東西はNTT法を遵守し、ドコモ、NTTコム、NTTコムウェアなどとの関係性に変化は起きず、公正競争条件の確保に支障が生じることはないとした。

 NTTでは、市場環境変化の一例として、2000年に初めて携帯電話契約者数が固定電話契約者数を上回ったことを紹介。加えて現在では、ユーザーの選好の中心や通話やメールなどではなく、通信の上で展開されるSNSやECなどのコンテンツやスマートフォンなどのデバイスそのものであるとした。

 キャリア各社も通信のみならずコンテンツや保険などライフスタイルサービスも提供しており、今後の競争は通信以外の多様な分野でのトータルでの付加価値で行われると説明。これに加えて米国のGAFA(M)も仮想化コアの提供企業の買収や提携により、コアネットワーク事業にも進出を始めるなど、従来NTTが強みを持ってきた部分で新たな競争が起きることが予測される。

 加えてNTTでは、20数年前とでは、市場環境は大きく変化。NTT再編以降、いち民間会社となっていたNTTコムやコムウェアとの連携が現在の市場競争環境に悪影響を及ぼすことはなく、今回のどこも完全子会社化による新たな規制を設けるのは不適切とした。

ドコモが一方的に優位になる懸念

 一方、この動きに関して、KDDIやソフトバンクをはじめとした連名28社(賛同9社)は11月、総務大臣へ電気通信市場の公正な競争環境整備を求める意見書を提出。3日の会議では全37社を代表して同社代表取締役社長の髙橋誠氏が説明した。

 同社では、ドコモの完全子会社がNTTの一体化、ひいては過去のNTT独占回帰につながり、電気通信市場における公正な競争環境が失われると主張。これにより利用者利益が損なわれるため、公正な競争環境整備を求めるとしている。

 また、NTTによるドコモの完全子会社化はNTT法に反するもので、従来NTTの在り方を巡って議論・公表された完全民営化や出資比率の低下といった方針に逆行すると指摘。また、NTTコムについても、1999年のNTT再編成の際に生まれた公正競争要件等の対象である特殊なNTTグループ会社であり、同社の組織改編についても別途、議論が必要とした。

 5G時代では、従来より高い周波数帯が使われるためより多数の基地局の展開が必要になる。そうした場合にはより多くの光ファイバー回線が必要で、NTTが全国にもつ光ファイバー回線のボトルネック性が高まる。そうした場合、NTTグループがこれまで以上の優位性を持つことにつながる。

 KDDIでは、ドコモを含めたNTTグループの企業とそのほか、KDDIやソフトバンクなどの競争事業者がNTT東西の光ファイバーなどボトルネック設備を完全に同等な条件・環境で利用できることが必要だとした。

ボトルネック設備の公正利用を

 同会議に参加したソフトバンク 代表取締役社長の宮内兼氏は「ソフトバンクは20年前に1からADSLサービスを展開してきた。その時にNTTの局舎と光ファイバーを活用するのに大変苦労した。今後の5G、6G時代にはますます光ファイバーやNTT局舎が重要になる。ボトルネック設備を公平に利用できる必要がある。そうでなければ日本のデジタル化は進まない」と語り「光が機能分離のみでいいのか、構造分離に踏みこむ議論が必要ではないのか」と危機感を示した。

 同じく楽天モバイルの山田善久氏も「後発の新規参入者として基地局を整備しているが日々、ボトルネック設備の重要性を感じる。オープンな場でさまざまな議論があってほしい」と同様に懸念を示す。

 ただし、NTTでは自社設備を寡占して利益をあげようとする意図はないと反論した。

 また、ドコモ完全子会社化の目的のひとつともされるGAFA(M)対抗についても、KDDI髙橋氏は「GAFA(M)の何に対抗するのかが大いに疑問。日本としてどう対抗していくかなど、いい機会なので議論していきたい」とした。

 NTTは「ドコモの収益が3位に落ちた」ところを問題としていた側面があるが、KDDI髙橋氏はそれらに対しても値下げプランを導入したことによる一時的な落ち込みが効いているだけでそれによる一過性の収益減を根拠にシェアが落ちたとは判断できないとした。また、ソフトバンク宮内氏も「ドコモは圧倒的1位ではないか。スマホユーザー数でも4000万ほどで圧倒的多数の顧客がいる。利益もソフトバンクが参入した頃から維持されている。非常に強い顧客シェアがあり(今後の議論でも)そこは見誤らないでほしい」とした。

 次回会合でNTTからさらに詳細なヒアリングが行われるという。