ドコモ井伊社長インタビュー(前編):「ahamo」が他社への流出抑止に、ドコモショップは当面維持する(1/3 ページ)

» 2021年01月15日 19時21分 公開
[石野純也ITmedia]

 持株会社による完全子会社化の直後から、NTTドコモは矢継ぎ早に新料金プランを繰り出している。大きな話題を集めたのは、オンライン専用の料金プラン「ahamo」だ。その後、ソフトバンクやKDDIも対抗策の打ち出しを余儀なくされたが、20GBの“値下げプラン”はドコモが先鞭(せんべん)をつけた格好だ。同時にドコモは、大容量プランにあたる「ギガホ」や「5Gギガホ」も改定。5G用のギガホは4月に「5Gギガホ プレミア」に名称を変え、データ容量無制限を正式に導入する。

 この新生ドコモを率いるのが、新社長に就任した井伊基之氏だ。ドコモの変革を掲げる井伊氏だが、どのような戦略を打ち立てていくのか。新料金の狙いや今後の見通しをグループインタビューで聞いた。

NTTドコモ井伊基之社長 NTTドコモの井伊基之社長

この3カ月は戦争のようだった

―― 完全子会社化の発表から3カ月が過ぎ、その間にahamoも投入しました。振り返ってみて、いかがでしたか。

井伊氏 戦争みたいでした。TOBが成立するまでの間は、一切口を開けない。こういうことに対しても、株価に影響を与える動きが出てしまうと、TOBの状況が崩れてしまうからです。「そんな新しいことをやるのか」という話が一切出ないように進めなければいけなかったので、非常に限られたメンバーでプロジェクトコードをつけてやってきました。

 あっという間にマネされて、「なんだ」となるかもしれませんが、皆さんも同じようなことを考えていたんですよね。コストを下げるためには、オンラインが絶対条件になりますから。若い人に考えさせると、ショップに行かないという。であればショップで売る必要がないということで、踏ん切りました。前任の吉澤はサブブランドをやりたくないとこだわっていましたが、メインブランドの料金でやれたので、そうであればもっと早くからできたはずです。

ahamo 2020年12月に発表した新料金プラン「ahamo」

 心の中ではサブブランドでという作戦も考えましたが、僕は廉価版と考えているのではありません。ドコモに20GBのメニューがなく、UQ mobileやY!mobileに抜けているのに、何で止めないんだと思っていました。そう思っていたら、お国が20GBと言っていた。総務省に説明したときに、「これはサブブランドではない」と言ったら、「サブじゃないですか」と言われてしまいましたが(笑)。僕らは新しい料金プランとして出していると、コンセプトをちゃんと説明しました。

 ちょうど総務省でメールアドレスの(ポータビリティの)議論をしていたときだったので、「当てつけか」とも言われてしまいました(笑)。そんなの、関係ないんですよね。20代の人は、キャリアメールにこだわっていません。私は、「オプションで選べるようにしたらいいのでは」と言いましたが、「いらない」と言われてしまいました。だからあの割り切りができた。これには正直感謝しています。

 「国際ローミングが何で82カ国(や地域)なんだ」と言われましたが、あの値段でやろうとすると、ローミング料の安い国しかできません。ただ、あの82カ国で、日本人の行くところはだいたいカバーしていて、本当は十分なんです。この価格を実現することを絶対条件にしていたので、ああなりました。

 ちなみに、今日初めてお話ししますが、ahamoはファミリー割引にカウントします。あんまり早くから言ってしまうとマネされるので、黙っていました。(既存の料金プランに)残るご両親がギガライトで、息子だけがahamoでも、家族にカウントします。ahamoの料金に対して割引は効きませんが、ギガライトのお父さんからahamoの子どもに電話をかけてもタダになります。逆に息子からお父さんにかけたら5分までですが、かけ直してもらうことはできます。同じ料金プランですからね。サブブランドだったら、これはできません。

―― ということは、1人だけahamoに変えるのがデメリットにならないわけですね。

井伊氏 これをやることで、出たり戻ったりが自由になります。ahamoに行く障壁は下げなければいけない。家族の範囲は広いですが、意外と遠くの親戚を含めるのが難しいので、これはお伝えしたかったことです。auの発表が昨日(インタビューは1月14日に実施)だったので、言うならその後と思っていました。これは、ドコモのユーザーにとってのメリットです。ahamoに行くのとY!mobileに行くので、差があることが大事で、そうすれば出ていかなくなりますからね。

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