法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「au 使い放題MAX」「povo」「UQくりこしプラン」の三段構えで迎え撃つKDDI 新料金プラン

 KDDIは1月13日、auの新料金プラン「使い放題MAX」、オンライン専用プラン「povo(ポヴォ)」、UQモバイルの新料金プラン「くりこしプラン」を発表した。

 昨年12月のAmazonプライムをハンドルした料金プランの発表では、NTTドコモの「ahamo」発表直後というタイミングの悪さに加え、最大割引後の料金を表記したため、ネット上ではたいへん厳しい評価が飛び交ったが、今回は三段構えのラインアップで、ライバル各社の料金プランを迎え撃つ。

 本誌ではすでに速報記事などをお届けしたが、今回はKDDIの新プランをどう捉えるか、そこから見える方向性などについて、考えてみよう。

タイミングが悪かった昨年12月の料金プラン発表

 この数カ月、携帯電話業界は近年、まれに見る慌ただしさだったと言えるだろう。その慌ただしさの原因は言うまでもなく、政府による携帯電話料金の値下げに対する圧力であり、各社の発表内容などと相まって、各方面で大きな話題となった。本誌でも数多くの記事が掲載され、本コラムでも各社の発表内の解説だけでなく、総務省が打ち出してきた施策についても取り上げてきた。

 そんな携帯電話料金の値下げ圧力の中で、ちょっとタイミングを見誤ったのがauだろう。

 auのサービスを提供するKDDIは、国内の電気通信事業を完全に独占していた電電公社(現在のNTTグループ)に対抗するため、1984年6月に設立された第二電電(DDI)を母体としており、「NTTに対抗する、競争する」ことをDNAとして、持ち合わせている。

 当初の長距離電話(340km超)の割引サービスでは、電電公社の通話料が3分400円だったのに対し、DDIをはじめとする新電電各社は3分300円を実現し、競争による料金の低廉化をはじめて実現した。ケータイの時代も2003年11月にauが初のパケット通信定額制プラン「EZフラット」を提供し、使い放題の道を切り開いた。ちなみに、NTTドコモはEZフラットにすぐに対抗できず、約半年後の2004年6月に基本使用料が月額6700円以上の料金プランの契約者のみに「パケ・ホーダイ」を提供し、全プラン対応は2年後の2006年1月まで待たなければならなかった。

 そんなDNAを持つはずのKDDIだが、昨年12月の発表ではネット上を中心に、たいへん厳しい評価を受けてしまった。

 auはここ数年、4G LTEサービスでいち早くデータ通信の使い放題を実現する一方、NetflixやGoogle、Appleが提供する各サービスとのバンドルプランにも力を入れてきた。昨年3月に提供を開始した5Gサービスでも主要3社の中で、唯一、正式サービスとして、使い放題の料金プラン「データMAX 5G」を提供し、これにNetflixのサービスを組み合わせるプランをラインアップに加えていた。

 昨年12月に発表された料金プランはこの流れをくむもので、それまではNTTドコモが1年間無料で提供していたAmazonプライムとのバンドルを実現し、既存のNetflixと2つをバンドルするプランも合わせて発表された。

 料金プランの内容としては、昨今の巣ごもり需要などを考えれば、確実にニーズがあり、結果的に申し込みも順調だとされているが、発表のタイミングと表現が悪かった。auがこのプランを発表した昨年12月9日は、NTTドコモが「ahamo」を発表した一週間後であり、対抗プランを期待していたユーザーは肩すかしを食らった形になったためだ。

 これに加え、「データMAX 5G with Amazonプライム」などの月額料金の表記が家族割プラスをはじめ、光回線やCATV回線と組み合わせるauスマートバリュー、5Gスタート割などを組み合わせた各種割引適用後の「3980円/月~」を大きく表記したため、ネット上で炎上するほどの反感を買うことになった。

 一般的に「携帯電話料金がわかりにくい」とされる背景には、本来の割引前の価格をきちんと明示せず、複数の割引サービスを最大限に適用した結果ばかりをアピールしたため、実際に自分が支払う月額料金がいくらになるのかがわかりにくかったことが挙げられる。この点については、くり返しになるが、昨年10月に本連載の「どうすれば、携帯電話料金値下げが実現できるのか?」で説明したように、 ユーザーが料金プランの内容を理解できるように、まず「『素の料金プラン』を明示する」 ことが必須条件だ。

 ところが、昨年12月のauの料金プランの発表は、こうした市場で醸成されつつあった空気感をまったく感じ取ることができず、従来通りの表現方法で告知したため、ユーザーの反発を買うことになったわけだ。

 その後の流れを時系列で追うと、12月18日にはNTTドコモが「ahamo」以外のプレミアプランの「5Gギガホ プレミア」と「ギガホ プレミア」、12月22日にはソフトバンクがオンライン専用「SoftBank on LINE」をはじめ、3ブランドの料金プランをそれぞれ発表し、結果的に2020年末の段階では、KDDIだけが一連の値下げ競争から取り残される形となってしまった。

三段構えでライバルを迎え撃つ新料金プラン

 料金発表のタイミングと料金の表記で失敗したKDDIだったが、昨年末の段階で、「ahamo」や「SoftBank on LINE」の対抗策を含め、1月中には新プランを発表することを明らかにしていた。

 その時期は意外に早く、1月13日に「au新料金発表会」が開催されることになったが、告知されたのは前日の12日18時という直前の案内だった。今回発表された各プランの詳細については、本誌の速報記事や関連記事を参照していただきたいが、ここでは今後の方向性などを含め、発表内容をチェックしてみよう。

 今回はauのオンライン専用の新料金ブランド「povo」、auでデータ通信使い放題が可能な「使い放題MAX 5G」と「使い放題 4G」、UQモバイルの「くりこしプランS/M/L」の3つのブランドで、新しい料金プランが発表された。「povo」と「使い放題MAX 5G」「使い放題 4G」は3月から、UQモバイルの「くりこしプランS/M/L」は2月から、それぞれ提供される。

「トッピング」で機能を追加、20GB/月2480円の「povo」

 まず、今回の発表で、もっとも注目されたのはオンライン専用の新料金ブランド「povo(ポヴォ)」だろう。

 最大20GBのデータ通信を月額2480円で利用できる料金プランで、20GB超過後も最大1Mbpsでのデータ通信が利用できる。サービス開始当初は4G LTEネットワークのみ利用できるが、今夏には5Gネットワークへの対応も予定している。

 今回発表された「povo」は、昨年、KDDIが協業を明らかにしていたシンガポールのオンライン型携帯電話事業者「Circles Asia」のノウハウを活かしたサービスになる。当初はMVNOとしての展開が計画されていたが、auのオンライン専用の料金プランとして、今年3月から提供されることになった。オンライン専用を謳っているため、既存のauショップなどは利用できず、基本的にはWebページやアプリなどで手続きをすることになる。

 「povo」の月額2480円という料金設定は、月額2980円を掲げる「ahamo」や「SoftBank on LINE」に比べ、 500円安いが、これは「ahamo」と「SoftBank on LINE」の料金プランに含まれている「5分以内国内通話無料」が省かれているため だ。

 KDDI 代表取締役社長の髙橋誠氏は、音声通話の無料通話を外した理由について、「20代以下のユーザーの内、6割は音声通話の時間が10分未満」であることを示し、少しでも安くしたいというニーズに応えたと説明した。

KDDIの髙橋氏

 この世代のユーザーを中心に、LINEやFBメッセンジャーなどの音声通話機能が利用されている現状を考えれば、現実的な判断だろう。ちなみに、「povo」ではauで提供される「au.com」や「ezweb.ne.jp」のメールアドレスが利用できるキャリアメールも提供されない。このあたりの判断は「ahamo」と同じだ。

 では、音声通話の無料通話が利用できないかというと、そういうわけではなく、「povo」の特徴である 「トッピング」という機能を使うことにより、「5分以内通話かけ放題」(月額500円)や「通話かけ放題」(月額1500円)を追加できる 。つまり、「5分以内通話かけ放題」をトッピングすれば、「ahamo」や「SoftBank on LINE」と同じ月額2980円になるわけだ。ただし、それは月額料金の額面と基本仕様のみであって、「ahamo」が国際ローミングを含んでいたり、「SoftBank on LINE」がLINEのトークや通話を使い放題にしている点など、細かい仕様は各社で異なる。

 「トッピング」はピザやコーヒーショップなど、飲食店でもおなじみの注文方法だが、「povo」ではさまざまなトッピングのメニューを用意している。

 今のところ、前述の「5分以内通話かけ放題」と「通話かけ放題」のほかに、データ通信量が足りないときに追加できる「データ追加 1GB」(1GBあたり500円)が発表されており、基本プラン内の20GBとは別に、200円で24時間、データ通信が使い放題になるトッピングも準備しているという。動画配信サービスなどで、ドラマなどを一気に観たいときなどに便利だ。

 この「povo」で提供されるトッピングという取り組みは、今後、auやUQモバイルの料金プランにおいて、ひとつの軸になってくる可能性が高い。

 昨年12月の「データMAX 5G with Amazonプライム」発表時にも指摘されていたが、auのように、バンドルできるOTTサービスが増えてくると、「NetflixとYouTube Premiumは必要だけど、Apple Musicはいらない」「Apple MusicとAmazonプライムだけが欲しい」といった要望が出てくる。

 同様に、動画配信サービスでは「海外ドラマの○○の最新シーズンだけが観たい」といったニーズもある。トッピングはまさにこうしたニーズに柔軟に対応できる機能であり、今後、「povo」以外にも展開される可能性が高い。ただし、実用面では各OTTサービス側にもいくつかの制限があり、各社と調整しなければならない項目は多いだろう。現状の料金プランでもOTTサービスによって、既存契約を移行できたり、できなかったりするなど、サービスごとに差異があるが、これらは今のところ、auの料金プランのページでも十分に説明できていないのが実状で、今後、トッピングという特徴を活かすためにも全般的な見直しを期待したい。

「povo」はまぎらわしい?

 ところで、「povo」の月額2480円という料金設定について、発表直後の1月15日、総務省の定例会見で、武田良太総務大臣が「非常に紛らわしい発表だと思う」「最安値と言いながら、他社と結局、同じ値段というのは、もっとわかりやすい手法をしっかり考えていただきたいというのが私の気持ち」と発言し、その内容は本誌でも取り上げられた。ちなみに、KDDIは「povo」のニュースリリースやサイトで、「最安値」という表記は掲げておらず、「最安値」という言葉は一部の新聞やテレビが用いたに過ぎない。

 この武田大臣の発言を伝える報道は、ネット上でもたいへんな反響を呼ぶことになった。この発言を報じた本誌記事へ反応をはじめ、SNSやネット上のコメントは「povoはまぎらわしくない」「こんなの難癖」「無料通話いらないから、500円安くて、助かる」といったコメントが数多く流れ、一時はTwitterのトレンドワードに「武田大臣」がランクインするほどの反響ぶりだった。

 以前から、くり返し指摘しているが、本来、民間企業がどんな料金体系で、どんなサービスを提供するのかは、その企業が決めることであって、政府が介入することは自由主義経済の観点からも大きな問題がある。

 なかでも監督官庁の責任者たる総務大臣が特定の企業の料金仕様について、ここまで明確に異論を述べることは、もはや異常事態でしかない。

 ネット上では「定食に卵が付いているかどうかに文句付けてるようなもの」といった指摘もあったが、まさにその通りで、いくら国民の共有資産である電波を利用しているとは言え(電波利用料は放送業界の10倍近く払っている)、ここまで細かく指摘する筋合いはないだろう。

 あまりの反響の大きさに驚いたのか、1月19日の定例会見では「料金プランに対して指摘したつもりはない」と慌てて釈明したが、携帯電話会社に「わかりやすさ」を求めるなら、 大臣としての発言もわかりやすくすべき であり、「まぎらわしい」発言はお控えいただきたいところだ。

 総務省はこれまで各社の料金プランが横並びであるとして、競争を促すために、さまざまな政策を打ち出し、一昨年には電気通信事業法の改正にまで踏み込んだ。それに飽き足らず、今度は各携帯電話会社に対し、半ば強制的に携帯電話料金値下げを求め、各社はそれに真摯に応え、相次いで、料金プランを発表してきた。

 その発表した料金プランで、主要3社の内、auがよりシンプルな内容にするため、5分以内の国内通話無料を外し、他社よりも500円安い料金プランを発表したら、今度は「横並びになっていない」と苦言を述べる。

 いったい何がしたいのだろうか。ネット上には武田大臣の52歳という年齢(筆者より若い)を指し、「ただの老害にしか見えない」といった厳しいコメントすら、見受けられた。こうなってくると、武田大臣がKDDIに対し、何か個人的な恨みでもあるのかと勘ぐりたくなるくらいだ。

 現在、国内はコロナ禍の影響という後押しもあるが、世界に遅れを取ったデジタル化を急速に推し進めようとしている。DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていくうえで、5Gをはじめとした通信インフラはもっとも重要なものに位置付けられる。

 その通信インフラを監督する官庁の責任者がこんなにわかりやすく、シンプルにまとめた料金プランに対し、「まぎらわしい」と苦言を述べてしまうような理解度で、本当に大丈夫なのだろうか。総務大臣としての適性を疑いたくなるほど、不適切な発言だと言わざるを得ない。

 通信行政に限った話でもないが、大臣という立場である以上、もっと的確かつ公正なコメントができるように、今一度、それぞれの業界のことを正しく理解していただきたいところだ。

割引前で月額6580円の「使い放題MAX 5G」「使い放題MAX 4G」

 今回の発表では、オンライン専用の新料金ブランド「povo」が注目を集めたが、auの通常プランでも新たに「使い放題MAX 5G」と「使い放題MAX 4G」が発表された。その名の通り、4G/5Gネットワークでデータ通信が使い放題になる料金プランになる。料金プランの提供は今年3月からを予定している。

 「使い放題MAX 5G」と「使い放題MAX 4G」は、従来の「データMAX 5G」と「データMAX 4G」を見直したもので、いずれも割引適用前の月額料金が6580円に設定されている。

 その月のデータ利用量が3GB以下の場合は、1500円が自動的に割り引かれる。

 これまでのデータMAXと比較すると、 「使い放題MAX 5G」は2070円安く、「使い放題MAX 4G」は1070円安いため、従来プランから最大20%以上の値下げ となっている。

 ちなみに、月額6580円という設定はソフトバンクの「メリハリ無制限」と同額で、NTTドコモの「5Gギガホ プレミア」の月額6650円、「ギガホ プレミア」の月額6550円よりも割安だが、auの新プランはテザリングやデータシェア、国際ローミング通信(世界データ定額)で利用できるデータ通信量が30GBまでに制限されているなど、細かい部分の仕様は異なる。

 「使い放題MAX 5G」と「使い放題MAX 4G」の月額6580円は、割引などを適用していない、いわゆる「素の料金」になる。ここから各種割引を適用することにより、さらに割安に利用することもできる。

 基本的には、従来の「データMAX」などで提供されてきた割引サービスを継承しており、固定インターネット接続サービスと組み合わせる「auスマートバリュー」で1000円、「家族割プラス」は家族2人で500円、3人以上で1000円、au PAYカードで月々の料金を支払うことで割り引かれる「au PAYカードお支払い割」で100円がそれぞれ割り引かれる。

 机上の計算に過ぎないが、 家族割プラスが3人で、データ通信量3GB以下の自動割引が適用されると、月々2980円で利用できる ことになる。これはNTTドコモの「5Gギガホ プレミア」、ソフトバンクの「メリハリ無制限」と同額になる。

 「使い放題MAX 5G」と「使い放題MAX 4G」は4Gと5Gで統一料金となり、「データMAX」よりも割安になったことで、既存プランのユーザーも乗り換えたくなるが、OTTサービスのバンドルプランを選んでいるときは、料金プラン変更時にOTTサービスの決済がどうなるのかが明らかになっていない。

 KDDIの髙橋社長は「既存プランも見直す」と発言しているため、おそらくOTTサービスと組み合わせた料金プランも同水準で用意される見込みだ。

 もしかすると、そう遠くない時期に「povo」同じように、必要なOTTサービスを随時、トッピングできるような仕様が盛り込まれるかもしれない。いずれにせよ、auからの正式なアナウンスを待ちたい。

最安値水準に踏み込んだUQモバイルの「くりこしプランS/M/L」

 今回、KDDIが発表した3ブランドの料金プランの中で、 実はもっともアグレッシブな設定 だったのがUQモバイル(UQ mobile)の「くりこしプランS/M/L」だ。内容としては、「くりこしプランS」が3GBで月額1480円、「くりこしプランM」が15GBで月額2480円、「くりこしプランL」が25GBで月額3480円に設定されており、プラン名通り、余ったデータ容量は翌月にくりこすことができる。

 今回発表されたUQモバイルの「くりこしプランS/M/L」は、直接的なライバルであるワイモバイルが12月に発表した「シンプルS/M/L」に比べ、月額料金はいずれも500円、安くなっており、「くりこしプランM」と「くりこしプランL」については利用可能なデータ通信量がワイモバイルよりも5GBずつ多く設定されるなど、一歩踏み込んだ設計になっている。

 また、UQモバイルの「くりこしプランS/M/L」の内、 「くりこしプランS」の3GB/月額1480円という設定は、MVNO各社が提供する小容量プランと同等か、それを下回るほどの安さ となっている。

 ネットワークについては今のところ、4G LTEのみで利用できる形だが、MVNO各社に提供している回線と違い、UQモバイルはauとほぼ同品質のネットワークが利用できるため、もはやMVNO各社には勝ち目がないと思えるほど、強力な内容と言える。

 ちなみに、ネットワークについてはUQモバイルでも今夏から5Gネットワークが利用できるようになるが、今回の料金プランで利用できるかどうかは、まだ検討中とのことだ。

 今回発表された「くりこしプランS/M/L」は、既存のUQモバイルの料金プラン同様、店舗でのサポートや店頭での申し込みも受け付ける。今のところ、UQモバイルの店舗は全国で約200店舗と限られているが、家電量販店のカウンターでも申し込みができるうえ、今後、auショップとの併設も増える方向で検討しているという。

 昨年10月からauに統合されたUQモバイルは、MVNO時代から「au PAY」や「あんしんフィルター for UQ mobile」など、数多くのオプションサービスを提供しており、新プランでも従来と同じように申し込むことができる。「povo」の「トッピング」という手法も魅力的だが、人によってはすでにオプションサービスが充実しているUQモバイルを選ぶという手もありそうだ。

三段構えでライバル各社を迎え撃つKDDI

 ここ数年、注目を集めてきた携帯電話料金値下げ騒動だが、昨年12月1日のNTTドコモ、昨年12月22日のソフトバンクに続き、今回、KDDIが発表したことで、ひとまず、各社のプランが出揃ったことになる。

基本的な料金の水準やサービスの仕様などは、各社とも比較的近い印象もあるが、本稿でも説明したように、細かい部分に差異がある。

KDDIとしてはオンライン系で「povo」、auのフルサービスで「使い放題MAX 5G」「使い放題MAX 4G」、低価格系のUQモバイルで「くりこしプランS/M/L」をラインアップしたことで、ライバル各社を三段構えで迎え撃つ体制を整えたことになる。

 前述の武田大臣の無理解な発言はたいへん残念な限りだったが、今回、発表された新料金プランはいずれも魅力的なものであり、それぞれに興味を持つユーザーが多いことが予想される。昨今の状況を考えると、この料金プランをトリガーに主要3社間で乗換えるかどうかは微妙だが、 基本的には「フルサービス」「オンライン専用」「低価格路線」の3つのセグメントで各社が戦っている ことを理解したうえで、選ぶことをおすすめしたい。ちなみに、「povo」については発表時点で決まっていないことが多く、先日の「ahamo」の追加発表のように、サービス開始までに新たに情報が追加されることになりそうだ。実際に利用できるのは、今年3月からなので、本誌などで追加情報をよく確認したうえで、検討したい。

 最後に、発表会後の質疑応答で出た話題に少し触れておこう。質疑応答では「povo」に関する話題などが多かったが、筆者は「povo」やUQモバイルの新料金プランがライバル各社と価格差を付けたことについて、KDDIとしての意気込みをたずねてみた。

 これに対し、髙橋社長は「NTTとどう戦っていくのかは、KDDIの歴史。今回はドコモさんがahamoを発表したことで、社内ではauとして、どう対抗していくのかで盛り上がった。その中から、単純にライバルに合わせるのではなく、トッピングというアイデアを仕立て上げた」と述べ、今回の料金プランが組み上げられてきた経緯を説明した。また、「今回はUQモバイルも一歩踏み込んだプランを出すことができた。ライバル各社と競争できることにワクワクしている」と話し、今後も積極的に競争環境に挑んでいく姿勢を示した。

 こうした競争への意気込みは、消費者としてもたいへん心強いところだが、少し裏事情を邪推すると、昨年、KDDIは設立20周年を迎え、DDI時代から続く競争の歴史を知らない世代が徐々に増えていることが背景にある。現在のKDDIを支える新しい世代の社員に向け、「NTTと戦うんだ! 競争していくんだ」という姿勢を強く打ち出したかったのかもしれない。今回の発表に留まらず、ぜひ、KDDIとして、これからもユーザーを「ワクワクさせる」サービスや料金プランを次々と打ち出してくることを期待したい。