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KDDI、仙台で災害対策訓練を実施、水陸両用車や4輪バギーなど公開

 KDDIは25日、大規模な災害時の早期のインフラ復旧や要救助者の発見の支援などに向けた災害対策訓練を実施した。

 訓練が行われたのは、宮城県仙台市。東日本大震災から10年の節目となる今年、震災で大きな被害を被ったというみやぎ産業交流センター(夢メッセみやぎ)を会場に、KDDIが持つ災害対策用の装備などが公開された。

大規模地震を想定

 今回の災害対策訓練は、宮城県沖で震度7、マグニチュード9クラスの地震が起こったという想定のもとで進められた。「運用災害対策本部」では、本部長の指揮のもと、被災地の現状把握、必要な復旧手段の手配が取られていく。

会場に再現された対策本部。実際には東京都新宿区のKDDIビルに立ち上げられるという
沿岸部中心に基地局が使用不能などの想定

 災害により、浸水や土砂崩れなどが発生し、通常の方法では近づけない地域には水陸両用車など特殊な車両の投入を命じる場面も。こうした場面では、水陸両用車やドローンなどの類が有効に活用される。

 今回の訓練では、移動基地局、可搬型基地局に加えて、水陸両用車、バギー、オフロードバイクなどの車両類。さらにヘリコプター型の移動基地局(実証実験中)にドローンも実機が公開された。

ドローンや特殊車両を災害復旧に導入

 災害時には、被災地が状況把握が欠かせない。訓練では、本部長の号令でドローンによる上空からの偵察が始まる。訓練では、災害によって故障した設備の状況確認としてドローンを使用。

ドローンからの映像。基地局破損箇所をマークしたところ

 災害対策本部がドローンから伝送された映像を受信すると、即座に故障箇所を判断。映像の中に故障箇所を示す赤いサークルを入力するとドローンのパイロットにもそれが示される仕組みになっていた。

破損したパラボラアンテナをドローンで確認する様子

 そして、2月25日からは新たに4輪バギーと水陸両用車が災害対策の装備として加わった。土砂崩れや道路の水没などで通常の車両では走行が困難な地帯での機材の運搬や復旧のための要員の移動を想定しているという。

水陸両用車
4輪バギー

 水陸両用車は実際に乗車してみると、かなり振動が強いもののタイヤや木片など地面におかれた障害物を難なく乗り越えてみせ、走破性の高さが伺える。

移動基地局でいち早い復旧

 移動基地局は、トラック型とミニバン型が用意されており、展示されていたのは日野製のトラック型とトヨタのエスティマハイブリッド型だった。

 トラック型の基地局に比べて、基地局機能を展開するために必要な人員も3人から2人へ減少、作業自体もより簡略化されたため、基地局としての機能を果たすまでの時間を大幅に短縮することに成功した。

簡単なボタン操作でアンテナポールが伸縮する

 可搬型基地局は、その名の通り、持ち運んで任意の場所で展開できる基地局。発電装置やアンテナなど複数の装置から成り立っている。訓練では、実際にKDDIの社員たちが展開する様子を実演。訓練ではひとつの基地局に対して4人で設営を行った。

 車両での進入が難しい場所では、この可搬型基地局を持ち込んで展開するという。

ヘリコプターを用いた災害救助

 KDDIでは、災害時に通信をいち早く復旧することに加えて、携帯電話とヘリコプターを活用した人命救助も検討している。

 これはヘリコプターに小型の基地局を搭載、電波を発射することで通常、携帯電話のエリア外となる地域をエリア化、要救助者とのコミュニケーションを可能にする。基地局は極めてコンパクトで人が抱えられる程度の重量しかなく、機体への設置も数分あれば完了する。

基地局と搭載の様子

 法改正などのハードルがあるものの、同社では、災害時や山岳地帯での遭難者救助などに向けて実用化への取り組みを進めている。

仙台市上空の様子。中央付近に三井アウトレットパーク仙台港、そこから向かって左手に夢メッセみやぎ。手前は三陸自動車道/仙台東部道路 仙台港北IC
スリーエム仙台港パーク(左)と夢メッセみやぎ(右)