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ヤフーとLINEの統合で何が変わるのか? 新生Zホールディングスが目指すもの(1/2 ページ)

» 2021年03月02日 13時45分 公開
[小山安博ITmedia]

 ヤフーを傘下に収めるZホールディングスとLINEが統合して新生Zホールディングスが3月1日に誕生し、共同CEOの川邊健太郎氏(Zホールディングス代表取締役社長)と出澤剛氏(同代表取締役)の2人が登壇する戦略方針説明会が開催された。決済事業で重複するPayPayとLINE Payは、コード決済に関してはPayPayに統合する方向で検討を開始。LINE Payはクレジットカードや送金などのサービスで継続する方針を示した。

ZHD 統合による戦略を発表したZホールディングス共同CEOの川邊健太郎氏(左)と出澤剛氏

Yahoo! JAPAN、PayPay・LINE Pay、LINEが強い起点に

 新生Zホールディングスは、Yahoo! JAPANやLINEといった巨大サービスを抱え、国内総利用者数は3億超、国内総クライアント数は約1500万、国内サービス提供数は200超、グループ従業員数は約2万3000人という一大企業グループとなる。出澤氏は、「ヤフーやLINE単独では実現できなかった新たな価値の創出に取り組む。ユーザーに最高の体験を届け、社会課題の解決にも挑む。ユーザーにとって意味ある統合にできるかどうかが全て」と統合によって目指す方向性を示した。

ZHD 新生Zホールディングスの陣容

 Zホールディングスは数多くのサービスを抱えるが、その中でも「非常に強い3つの起点を持つ」と出澤氏は指摘。それがYahoo! JAPAN、PayPay・LINE Pay、LINEという3つのサービス。情報、決済、コミュニケーションという日常生活に欠かせない3領域をカバーし、さらに200以上のサービスを連携することで、ユーザーや事業者に最適な選択肢を提供するという。

ZHD 起点となる3つの事業はそれぞれ国内1位

 事業発展の基盤としては、検索・ポータル事業、広告事業、メッセンジャー事業がその根幹となり、これに加えて「集中領域」として、(1)コマース、(2)飲食や旅行などのローカル、バーティカル、(3)FinTech、(4)行政のデジタル化や防災・ヘルスケアなどの社会領域という4領域を集中領域として事業を強化していく。

ZHD 3つの根幹領域に加え、集中領域を強化し、それぞれを連携させて新たな価値の創出が目標

 集中領域のFinTechでは、「金融サービスをもっと身近に感じられる、より便利な世界を作っていきたい」と川邊氏は意気込む。Zホールディングスには、商品を購入する、ホテルを予約する、コード決済で支払うといった行動を伴うサービスがあり、そうしたユーザーの行動に対して、「最適な金融商品を提案する」(川邊氏)といったサービスを目指す。リボやローン(借りる)、投資(増やす)、保険(備える)、といった「お金にまつわるサービスの利便性を向上させる」(同)ことが狙いだ。

ZHD FinTech領域では、それぞれのサービスで設定したシナリオに対して、最適な金融商品を提案する
ZHD 現時点の例として3つのサービスを紹介

 例えば「Yahoo!トラベルで旅行を予約したがキャンセルが不安」という声に対し、宿泊予約時にキャンセル用保険を提案する、といった具合だ。個人向けローンのLINE Pocket Money、PayPayにおけるポイント投資といったサービスもユーザーの行動に合わせて提案を行う。

 こうした金融サービスには金融機関との連携が不可欠で、グループ内にはジャパンネット銀行(4月5日からPayPay銀行)があるが、それにとどまらずに複数の金融機関と連携するマルチパートナー戦略を採用する。ジャパンネット銀行は三井住友フィナンシャルグループと、今後の開業を予定するLINE Bankはみずほフィナンシャルグループとそれぞれ連携する。

PayPayとLINE Payはコード決済で統合へ

 決済サービスでは、コード決済の分野でPayPayとLINE Payが競合しており、これはユーザー視点から統合が不可欠と判断。まずは4月下旬から、PayPay加盟店のうち、店頭に掲示したQRコードをユーザーが読み込んで支払うMPM方式に対応した店舗で、LINE Payもそのまま利用可能にする。これによってPayPay加盟店の多くでLINE Payも利用可能になる。

ZHD PayPay加盟店でLINE Payがそのまま使えるようになる。店頭のQRコードを読み取るMPM方式での連携となる

 その後、2022年4月をめどに、コード決済そのものをPayPayに統合する方向で協議を開始する。LINE Payは現在、LINEアプリから「LINEウォレット」にアクセスし、さらに「LINE Pay」を起動してコード決済を利用するが、コード決済の部分でPayPayが起動する形になる模様だ。

ZHD その後、コード決済限定でLINE PayをPayPayに統合。グローバルではLINE Payのままコード決済を提供する

 LINE Pay自体は、三井住友カードと協業したクレジットカード、プリペイドカードの事業や、送金、請求書払いといったサービスも提供しており、コード決済以外のLINE Payサービスは継続する。「LINE PayをPayPayに統合する」のではなく、現時点ではあくまでも「LINE Payのうちコード決済をPayPayに統合する」という表現が正確だ。

 PayPayとLINE Payに関しては、既に公正取引委員会が2020年8月に検討を行っている。コード決済における両者を合わせたシェアは60%と圧倒的なため、統合に当たっては公取委への定期報告などの措置が求められている。そのため、PayPayとLINE Payのコード決済の統合には「必要な手続きが完了していることが条件」としている。

 LINE Payは、台湾ではコード決済シェア1位になるなどアジア圏で決済サービスを提供。このグローバルでのコード決済サービスはLINE Payとして継続し、アジアでのさらなる事業拡大を目指す。

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