清水理史の「イニシャルB」

1万円のWi-Fiルーターも無料で汎用メッシュに! 簡単、途切れないを実現する「EasyMesh」をバッファロー「WSR-1800AX4」の新ファームで試す

 バッファローから、既発売のWi-Fi 6対応製品を含むフルラインアップでの「Wi-Fi EasyMesh」対応が発表された。その第1弾としてEasyMesh対応ファームウェアの提供が開始されたのが、エントリーモデルとなる「WSR-1800AX4」だ。早速、最新ファームウェアへと更新し、「EasyMesh」を使ってみた。

バッファローのWi-Fi 6対応ルーター「WSR-1800AX4」。最新ファームウェアの「バージョン1.02」で「EasyMesh」に対応した

1万円のエントリーモデルが汎用(?)メッシュに対応

側面

 バッファローの「WSR-1800AX4」は、2021年4月に発売された実売価格8800円前後のWi-Fi 6対応ルーターだ。

 そのスペックは以下の通りだが、最大通信速度は、1201Mbps(5GHz帯)+573Mbps(2.4GHz帯)のデュアルバンド対応機となっており、同社のWi-Fi 6対応モデルのエントリークラスとして、すでに市場で高い評価を得ている。

正面
背面
WSR-1800AX4
実売価格8800円
CPU-
メモリ-
Wi-Fiチップ(5GHz)-
Wi-Fi対応規格IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b
バンド数2
160MHz対応×
最大速度(2.4GHz)574Mbps
最大速度(5GHz-1)1201Mbps
最大速度(5GHz-2)×
チャネル(2.4GHz)1~13
チャネル(5GHz-1)W52/W53/W56
チャネル(5GHz-2)×
新電波法(144ch)
ストリーム数2
アンテナ内蔵
WPA3
IPoE IPv6
DS-Lite
MAP-E
WAN1Gbps×1
LAN1Gbps×4
USB×
動作モードRT/AP/WB
ファームウェア自動更新
サイズ(幅×奥行×高さ)36.5×160×160mm

 今回、そのWSR-1800AX4が、6月4日にリリースされた最新版ファームウェア「バージョン1.02」でEasyMeshに対応したわけだ。

 EasyMeshについては以下の記事を参照して欲しいが、簡単に説明すると、Wi-Fi Allianceと呼ばれるWi-Fi機器の普及促進を主な活動内容とする業界団体によって定められたメッシュ技術の共通規格だ。

 従来のメッシュWi-Fi製品では、チップベンダーまたはメーカーが独自に実装したメッシュ技術が採用されていたため、基本的に同一モデル、または同一メーカーの製品同士でしかメッシュWi-Fiを構成することができなかった。

 これに対してEasyMeshでは、対応する製品同士であれば、異なるチップを搭載したモデルや他メーカーの製品との間でも、メッシュWi-Fiを構成することができる(とされる)。

 とは言え、現状ではなかなかメーカー間の相互接続は難しく、筆者の手元にある製品(Aterm WX1800HP、Linksys E7350)との間では、限られた組み合わせでしかメッシュWi-Fiを構成することができなかった(具体的には、WSR-1800AX4は、前述した2製品のエージェントとしてしか、構成できかなった)。

 メーカー間の相互接続については、今後の改善を期待したいところだ。

早速、EasyMesh対応ファームにアップデート

 それでは、実際にWSR-1800AX4でEasyMeshを使えるようにしよう。

 EasyMeshにはファームウェアバージョン1.02から対応しているが、WSR-1800AX4のファームウェアアップデート画面からオンラインバージョンアップを実施することで適用できる(2021年6月5日時点での最新版は1.02)。

ファームウェアバージョン1.02へアップデートすることで、EasyMeshが利用可能に
ファームウェアの更新履歴。Ver.1.02の1行目に「EasyMesh機能に対応しました」とある

 EasyMesh対応となると、管理画面トップの項目に追加された「EasyMesh」から、接続設定や現在の接続状態を確認できるようになる。

管理画面にEasyMeshの項目が追加される

2台の「WSR-1800AX4」でEasyMeshを構成

 では、実際にWSR-1800AX4を2台利用して、EasyMeshを構成してみよう。

 と、その前にEasyMeshの基本を押さえておこう。

 EasyMeshでは、メッシュを構成する機器が大きく「コントローラー」と「エージェント」の2種類に分けられる。

 前者はいわゆる親機で、通常はルーターとして回線に接続する側の機器をコントローラーとして構成する。後者のエージェントは中継の役割をする子機に相当し、宅内の中継地点に配置することで、PCやスマートフォンといったWi-Fi端末からの無線をコントローラーへと中継する。

 それを踏まえた上で、実際に設定してみよう。

 EasyMeshの構成方法は大きく分けて2通りある。1つは有線LANを使った方式、もう1つは無線を使った方式だ。

有線を使った方式

 この方法は、最も簡単、かつ確実な設定方法だ。シンプルにコントローラーとエージェントのLANポートをLANケーブル(ストレートでOK)で接続すればいい。

 これで、コントローラー側のSSIDなどの無線情報が自動的にエージェント側へコピーされ、2台の機器がメッシュで構成される。

 バッファローの製品では、これらの設定の際に背面にある機器のスイッチを、コントローラー側は「ROUTER」+「AUTO」へ、エージェント側は「WB」+「MANUAL」へと設定する必要がある。

ケーブルでLANポートをつなぐ
Wirelessランプがオレンジ点滅から……
十数秒ほどでグリーンの点灯へ切り替わる

無線を使った方式

 無線を使った方式は、従来のWPSを使った設定と同じだ。有線の場合と同様に、あらかじめ機器背面のスイッチを、コントローラー側は「ROUTER」+「AUTO」、エージェント側は「WB」+「MANUAL」に設定した状態で、コントローラーとエージェント間でボタンによるWPS設定を開始する。

 これにより、無線を経由して自動的にSSIDなどの接続情報が機器間でやり取りされ、メッシュが自動的に構成される。

 コントローラー側は本体ボタンを押す代わりに、設定画面から「プッシュボタンによるWPSを開始する」を選ぶことも可能だ。設定画面を見ながら設定を行いたい場合は、こちらの方法も便利だ。

 ただ、オススメは有線による設定だ。設定自体が10数秒ほど早く済む上に、確実に設定できて簡単だ。

 ただし、有線による設定では、異なるメーカー間での接続は困難で、先に触れた他メーカー製品との相互接続でも、WPSではメッシュを構成できる製品間でも、有線では構成できない例も見られた。少なくとも現時点では、他メーカーと接続する場合は、WPSを利用するのが無難だ。

メッシュならではの賢さを実感

 実際の使用感としては、なかなか良好だ。

 同一メーカー同士でメッシュを構成する場合、接続は簡単な上、オプション扱いの設定(IEEE 802.11r)の可否やバックホールで使う無線帯域選択の基準なども共通しているので、機器が持っているポテンシャルをフルに発揮させることができる。

 例えば、筆者宅での検証では、バックホールの選択が適切である点に感心した。

 冒頭で紹介した発表会記事でも触れられているが、バッファローは今回のEasyMeshの実装に際し、コントローラーとエージェント間をつなぐバックホールに、5GHz帯と2.4GHz帯のうち最適な帯域を、自動的に選択するチューニングを実施している。

 設定画面を確認すると「5GHz優先」となっているので、無条件に5GHz帯で接続されるのかと思いきや、筆者宅では最初に2.4GHz帯をバックホールとして設定し、しばらくすると自動的に5GHz帯へ切り替わるという動作が確認できた。

 つまり、筆者宅周囲の環境では2.4GHz帯が多く使われており、この帯域がメッシュのバックホールとして使われると、壊滅的に速度が低下してしまう。しかし、本製品では、きちんと両方の帯域をチェックし、どちらが最適なのかが確認された上でバックホールが選択されているようだった。

筆者宅では最終的にバックホールとして5GHz帯が選択された。コントローラーとエージェントのどちらに、どの機器がつながっているかも確認できる

 メッシュの場合、基本的には3台以上で構成した際のバックホールや中継ルートの選択の賢さが重要になってくるが、シンプルな2台構成でも、その賢さが十分に実感できるようになっていた。

 なお、バックホールには、無線だけでなく有線も利用可能なので、宅内に有線LANが配線済みの場合は、これをバックホールとしてメッシュを構成できる。

 有線をバックホールに用いた場合、2.4GHz帯と5GHz帯を純粋にクライアントへの接続だけに利用できるため、デュアルバンド機で課題になりがちなバックホールの帯域減を気にせず、クライアント接続にフルに帯域を活用できる。有線が使える場合は、積極的にバックホールに使うことをお勧めしたいところだ。

最も遠い場所での速度が改善

 実際の転送速度だが、木造3階建ての筆者宅にて、1Fにコントローラー、3Fの階段踊り場にエージェントを設置し、iPerf3による速度を計測したのが、次の結果だ。

1F2F3F入口3F窓際
WSR-1800AX4単体PC上り57432114083
下り662477247208
iPhone上り47522011126
下り68647530634
EasyMesh(WSR-1800AX4×2)PC上り463194192193
下り608213229202
iPhone上り439149180158
下り643199234213

 筆者宅のような木造住宅の場合、単体でも十分な性能が出ることが多いためメッシュの実力を測りにくいのだが、上記のグラフのように、3F窓際での計測でPCの上りが83Mbpsから193Mbpsへと上昇し、iPhone 11での計測では単体時下り34Mbps、上り26Mbpsだった速度が、下り213Mbps、上り158Mbpsにまで改善された。

 遠い場所では、やはりメッシュによる中継の効果によって、速度が改善する傾向が見られた。

 ただ、これも筆者宅のような環境では「あるある」なのだが、メッシュ構成とすることで、2Fの速度は逆に低下してしまった。

 これは、2Fから1Fのコントローラーへ直接接続されるのではなく、2Fから3Fのエージェントを経由してから1Fのコントローラーへ接続されてしまうためだ。

 2Fから1Fへは床と壁が間に1枚ずつ存在するが、2Fから3Fへは階段を通じて障害物なく電波が届くため、このような中継がなされてしまう。これは、筆者宅では、本製品だけでなくほとんどのメッシュ製品で発生することなので、仕方のないところだ。

 とは言え、最も遠い3F窓際の速度が改善されたのは大きな収穫と言える。簡単な設定で電波の届く範囲を改善できるメリットは大きいだろう。

高速ローミングの実力を体験する

 なお、バッファローのEasyMeshは、同じEasyMeshでも「EasyMesh R2」という規格に対応している。

 EasyMesh R1とR2の違いは、冒頭で紹介した発表会記事に掲載されている資料に詳細が記載されているが、主に端末の接続性の向上や、電波の干渉を避けるための機能などが追加されている。

 中でも注目したいのが、IEEE 802.11rによる高速ローミングに対応している点だ。メッシュでは、スマートフォンなどが移動しながらWi-Fiで通信する際に、場所に応じて接続先が自動で切り替わるが、IEEE 802.11rでは、接続先がコントローラーからの指令によって切り替わるようになっている。

IEEE 802.11rが標準でオンになっている
移動しながらpingを計測。2Fにさしかかったあたりで74.323msになるので、おそらくここで接続先が切り替えられている。筆者宅では、結局途切れずにスムーズに通信できた

 これにより、IEEE 802.11rの機能を持たないメッシュでは、例えば電波が届くギリギリまで元の接続を維持しようするが、IEEE 802.11rではコントローラーからの命令によって、接続先が最適なタイミングで切り替わることになる。

 IEEE 802.11rの機能は、EasyMesh R2でもオプション扱いなので、有効・無効はメーカーの実装次第となっているが、バッファロー製品では標準で有効となっている。

 ローミングに関しては、状況によって効果が変わりやすいため、その効果を数値として示すことは困難だ。試しに、Pingを打ちながら1Fから3Fまで移動してみたが、移動中に一瞬、応答時間が長くなるだけで、切断を意識することなく、接続先の切り替えが行われているようだった。

 動画再生などであれば、バッファを活用することでほぼ途切れることなく再生を続けられるので、こうしたつなぎかえを意識せずに使えると言えそうだ。

無料で提供されるメッシュとは思えない完成度

 以上、バッファロー「WSR-1800AX4」を使ったEasyMeshを実際に試してみたが、メーカー間の相互接続性という部分には課題が残るものの、メッシュ機能そのものは完成度が高く、快適に使える印象だ。セットアップも簡単だし、バックホールの選択も適切だし、高速ローミングもよく機能しているように見える。

 Wi-Fi 6対応機のみとは言え、これが同社のルーター・中継機のフルラインアップで、しかも無料で提供されるのだから、このメリットは大きい。

 EasyMesh対応ファームウェアのリリースは順次となっているので、モデルによってはもう少し待つ必要があるが、わざわざ買い替えることなく、同じくEasyMesh対応の中継機などを買い足すだけで、手軽にメッシュへとアップグレードできるのだから、お得感は高い。

 管理機能にも不足はない印象で、中継に使っている帯域や、Wi-Fi子機が現在コントローラーとエージェントのどちらにつながっているのかも管理画面から確認できる。

 コントローラーからの操作で、エージェントのファームウェアを一斉にアップデートすることなどはできないが、もともと同社製品には、自動ファームウェアアップデート機能が搭載されているので、夜間などに自動的にアップデートするようにしておけばよさそうだ。

 これからは、EasyMesh対応(もちろんCERTIFIED認証取得)が、Wi-Fiルーターを選ぶ際の1つの基準となりそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。