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柔軟なおうちネット回線構築にホームルーターが便利、ピクセラ「PIX-RT100」

ピクセラ「PIX-RT100」

 ケータイ回線の障害が発生すると話題になるのが予備回線のこと。デュアルSIM機を使って1台のスマートフォンに2回線を入れてしまうほか、筆者の周りのごく狭い範囲で盛り上がっているのが家回線をモバイル回線にして何かあったらSIMを入れ替えるという作戦。そうするために必要なのがモバイルのSIMを使って「おうちネット回線」を実現するLTE対応のルーターだ。

 実際、光ファイバーを引くまでもなく、手軽におうちネット回線を使いたいという需要はあり、モバイルの回線で代用している人もいる。楽天モバイルの使い放題で月額3278円がおうちネット回線の代替の筆頭に挙げられるが、Povo 2.0に24時間データ使い放題の組み合わせやmineoのマイそく、といったものも候補によくあがる。

 ちなみに、ドコモのhome 5Gなど、キャリアがモバイル回線を使った固定通信サービスを提供しているが使う場所の制約があり、前述のようにSIMを入れ替えて予備回線とすることが不可能なため、モバイル用のSIMを使ったおうちネット回線のほうが自由度も高く使い方によっては便利ということになっている。

 そして、モバイルのSIMでおうちネット回線を実現するためには、今回紹介するピクセラの「PIX-RT100」のようなLTE対応の「ホームルーター」が必要になる。持ち運べるモバイルルーターで代用してもいいが、有線LANがしっかり装備されているなどメリットもあり専用の「ホームルーター」が便利だ。

PIX-RT100にはLANポートが4ポートある

 このジャンルの製品はもともとニッチなためあまり種類がない。現在、市場にも数機種があるがいずれも年月のたった製品ばかり。そこに大きな障害が発生したタイミングに合わせたかのように2022年7月に発表された新製品がピクセラの「PIX-RT100」となる。

 「PIX-RT100」が有利な点は5GHz帯のWi-Fiを装備していること。最新のWi-Fi 6でなくWi-Fi 5なのは惜しいが、それでも過去、このジャンルの製品で単体売りの製品はWi-Fi 4止まりだったことに比べると大きな進化。Wi-Fiの5と6は現時点で実用上あまり差はないが、Wi-Fi 4と5の差は5GHz帯の対応を含めて違いが大きい。

 さらに、「PIX-RT100」備わるのがLTEのバンドごとに利用の可否を設定できる機能。前述の楽天モバイルをフル活用する場合に必要なのは、auのローミングを使わず強制的に楽天回線エリアで通信する必要がある。auローミングが終了している地域ならいいが、日本中にはそうではない場所も多くある。

PIX-RT100のバンド選択画面。楽天モバイルの利用では重宝することもある

 楽天モバイルはバンド3、ローミングで使うauの電波はバンド18なのでバンド18を使わない設定にすれば、auローミングの5GBの速度制限がかからず、ずっと楽天モバイルの電波を使いフルスピードで通信できる。

 つまり、「PIX-RT100」は比較的最近のWi-Fi規格を備え、4キャリアすべての主な電波に対応、そして楽天モバイルのフル活用ができる唯一の全部入りLTE対応ルーターということになる。

 ということで前置きが長くなったが、届いた「PIX-RT100」を早速使ってみると、肝心のバンド固定機能も分かりやすく、なかなか使いやすい。MVNOのSIMなどを活用するため、最初にAPN設定をする必要はあるが、ピクセラの通信サービスと主要な通信サービスは最初から設定が入っているため、SIMの種類を選ぶだけで設定が完了することが多い。

設定やステータスが確認できるページ
あらかじめピクセラと主要なサービスの設定が入っている

 そして、Wi-Fiは初期設定で5GHz帯はオフになっている、この設定のため屋外で使う場合にはうっかり禁止されている5GHz帯を使わずにすむ。5GHz帯といってもW56と呼ばれる一部のチャネルは屋外利用ができるが、今度はW56に対応しない機器が一部にあるため、トラブル防止という点では初期状態では2.4GHz帯のみ使え、5GHz帯はユーザーの意思で使えるようにするという初期設定は歓迎だ。

状態は青色LEDで表示。電波の強さによってアンテナの本数が変わる
SIMは側面から挿入、その上のボタンは電源スイッチ
反対側にはWPSのボタンとリセットボタンの穴
電源はACアダプター。12V1.5AタイプでコネクターはJEITA規格のDCプラグ

 ただし、大きな問題がある。使えるSIMが標準サイズのSIMだということ。筆者自身、標準SIMの機器を見たのは久しぶりだ。いまやスマートフォンではnanoSIMの利用が当然ということになっていることから考えると大きな問題で、最初に挙げたSIMをスマートフォンと交換して予備回線とする場合には大きく不利になりかねない。

SIMは最近見ない標準サイズ
最近のSIMは、マルチカットで提供されることが多いため、いちばん大きな枠で切り取れば標準になる

 実際には、今のSIMはマルチカット方式で提供されることがほとんどなため、枠を取れば標準サイズをnanoSIMに切り替えて使うことは可能。反対に切り取った枠をそのままハメ込めばnanoSIMを標準サイズのSIMにすることはできなくもないが、差し込みの際に大きくずれてしまうなどすればSIMソケットを壊しかねない。何度も言うが標準SIMという点だけが非常に残念だ。

 それでも、設定さえ済んでしまえば、固定回線と同様に使うことができる。最高速度では光ファイバーに劣るが、通信速度はモバイルで使っている回線と同じなので、実際の速度はLTEやWi-Fiの規格上の速度よりも、使っているSIMの通信サービスの質次第ということになる。

ポートフォワーディングなど、固定ルーターらしい設定も豊富にある
APN設定はあらかじめ入ってるもののほか、自分で入力も可能だ

 また、固定のルーターらしくポートフォワードなどの機能も持っているが、現在はプライベートIPが振られるSIMが多いため通常は役に立たないかもしれないが、IoT機器向けの回線と組み合わせた業務利用などでは重宝するだろう。

 「PIX-RT100」はおうちネット回線用として使うことが基本の使い方になると思うが、固定回線のバックアップとしての利用もできるほか、夏休みなどしばらくの間、違う場所で過ごす際に利用することもできる。業務用としてはIoT機器のネットの出入り口としても利用できる。一家に一台あってもいい機器なのではないだろうか。

製品名発売購入価格
PIX-RT100ピクセラ1万5800円
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