急遽テレワーク導入!の顛末記

「キャプチャボードを有効活用、iPhoneの動画やカメラ映像をZoomに流してみた」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(115)

iPhoneがWebカメラ代わりに! 保存した写真や動画も音声ごとZoomに配信できる

4000円程度の格安ビデオキャプチャボードを購入。iPhoneをつないでビデオ会議に活用してみた

 PCやゲーム機からの映像出力を、PCの各アプリで利用できるようにするビデオキャプチャボード。最近仕事で必要になったので安価なエントリーモデルを購入してみたのだが、これってテレワークに活用できないだろうか?

 ……この記事を書いている時点で、東京都でまん延防止等重点措置が解除されてから193日が過ぎた。

 私が勤めている新宿にある中小企業では現在、各スタッフが可能な範囲でリモートによる業務を行っている。その中で、今回はZoomとの組み合わせで、ビデオ会議におけるビデオキャプチャボードの使い方を考えてみた。

【今回のハイライト】
iPhoneの画面を「OBS Studio」に取り込む
カメラで撮影した映像をZoomに転送!
仮想デバイス経由で音声も転送!!

9月26日(月):キャプチャボードがあれば、iPhoneをWebカメラ代わりに使えるか?

 今日は朝からクライアントとビデオ会議を行うことに。いつものようにiPhoneの内蔵カメラをWebカメラ代わりに使って会議に参加したのだが、そこでふと「iPhoneとデスクトップPCの接続には、ビデオキャプチャボードを使った方が良いのでは?」と思いついた。

 iPhoneをWebカメラ代わりにするために利用しているアプリ「NDI HX Camera」では、iPhoneのカメラで撮影した映像を、Wi-Fi経由でデスクトップPCに送信している。そのため、回線の混雑状況によっては、映像に遅延が出ることがあった。

「NDI HX Camera」では、iPhone内蔵のカメラをWebカメラ代わりに利用できる

 そこで、iPhoneとキャプチャボードを有線でつなげば、ほぼ遅延のない状態で映像をデスクトップPCに送れるのではないだろうか? 明日は会社の全体ミーティングがあるので、さっそくそこで試してみたい。

9月27日(火):「OBS Studio」経由でiPhoneをWebカメラ代わりに使ってみた

 朝のメールチェックが終わったところで、iPhoneのカメラ映像をキャプチャボード経由でZoomに送るための準備をすることにした。

 まずは、Lightning HDMI 変換ケーブル――iPhoneの音と映像を出力するための変換ケーブルを使って、iPhoneとキャプチャボードを接続する。続いて、バ美肉の時にも使った「OBS Studio」をデスクトップPCで起動。「ソース」にキャプチャボードを設定すると、iPhoneの画面が「OBS Studio」に表示された。

「OBS Studio」の画面左下にある「ソース」で「+」ボタンをクリックし、「映像キャプチャデバイス」を選択
「デバイス」でキャプチャボードを選択すると、iPhoneの画面が表示された

 ただ、このまま「カメラ」アプリを開いても、シャッターボタンなどが画面上に表示されてしまうので、以前にも利用した「Airmix Solo」というフリーのカメラアプリを起動。このアプリでソースに「iOS Camera」を指定すると、メニューなどの映っていないカメラ映像を「OBS Studio」に表示することができた。

 これで、Zoomに送る映像の準備は完了したので、「OBS Studio」の画面右下にある「仮想カメラ開始」ボタンをクリック。Zoomの設定で「カメラ」に「OBS Virtual Camera」を選択すると、iPhoneをWebカメラ代わりにして撮影した映像を、Zoomで利用できるようになった。カメラを動かしても映像に遅延などが出ないので、「NDI HX Camera」を利用するよりも、映像の質を上げることができそうだ。

iPhoneでアプリ「Airmix Solo」を起動して、左側にあるメニューから「iOS Camera」を選択
「OBS Studio」の画面右下にある「仮想カメラ開始」ボタンをクリック
Zoomの設定画面で「ビデオ」の「カメラ」に「OBS Virtual Camera」を指定する

 ただ、「NDI HX Camera」ではiPhoneのマイクで拾った声もZoomに流すことができたのだが、この環境ではiPhoneに向かって話しかけても、Zoomの音量メーターが反応することはなかった。試しに、iPhoneで動画を再生してみても、その音声はZoomに届かない。HDMIで接続しているので、iPhoneの音声が「OBS Studio」までは送られているのだが……。ここから先は、なんらかの追加設定が必要なのかもしれない。

9月28日(水):仮想オーディオデバイス経由でモニター音声をZoomに取り込む

 あれから色々と調べたところ、どうやら音声のモニター機能を利用することで、「OBS Studio」が拾っている音をZoomに送れることが分かった。

 「OBS Studio」では「音声モニタリング」機能を利用することで、PCに接続しているマイクやキャプチャボードからの音声入力を、指定のデバイスへと出力することができる。どの音声をモニター出力するかは「オーディオの詳細プロパティ」から変更できるので、今回は「マイク」と「キャプチャボード」の設定を、それぞれ「モニターのみ(出力はミュート)」に変更した。

 で、そのモニター出力が「どのデバイスに送られるか?」については、「音声」についての設定画面から変更することになる。デフォルトでは「規定」――Windowsの「サウンド」で「出力」に設定されているデバイスが選択されており、iPhoneで動画を再生すると、その音声がデスクトップPCのスピーカーから流れてきた。つまり、この出力をデスクトップPCに再入力して、Zoomの「マイク」で選択すればよいのだが、リアルに配線を繋いで処理しようとすると面倒なことになりそうだ。

画面下の「音声ミキサー」で各音量メーターの右にある歯車型のアイコンをクリックして、メニューから「オーディオの詳細プロパティ」を選択。PCに接続しているマイクとキャプチャボードの「音声モニタリング」の設定を変更する
「ファイル」メニューから「設定」画面を開き、「音声」→「詳細設定」→「モニタリングデバイス」でモニター音声の出力先を変更できる

 そこで、以前にも利用した仮想ミキサー「VoicemeeterBanana」を使って、「OBS Studio」のモニター出力とZoomのマイク入力を仮想的に繋ごうとしたのだが……、ちょうど同じメーカーから「VB-CABLE Virtual Audio Device.」という仮想オーディオデバイスがリリースされていたので、今回はこちらを利用することにした。

「VB-CABLE Virtual Audio Device.」はサウンドカードを仮想化したようなフリーソフトで、インストールするとWindows上に音声の入力デバイス/出力デバイスを1つずつ追加することが可能。つまり、「OBS Studio」のモニター出力を「VB-CABLE Virtual Audio Device.」の入力に、「VB-CABLE Virtual Audio Device.」の出力をZoomのマイク入力にそれぞれ繋げば、iPhoneやマイクからの音声をビデオ会議に流せるというわけだ。

会議のたびに「VoicemeeterBanana」を起動……するのは、ちょっと面倒くさい
「VB-CABLE Virtual Audio Device.」のインストーラーを右クリックして、「管理者として実行」を選択
「Install Driver」→「インストール」→「OK」とクリックすると、「VB-CABLE Virtual Audio Device.」がインストールされた
Windowsの「サウンド」画面を確認すると、「再生」デバイスに「CABLE Input」が、「録音」デバイスに「CABLE Output」がそれぞれ追加されていた

 さっそく、「OBS Studio」とZoomでそれぞれ設定を変更したところ、iPhoneで再生している動画の音と映像を、ビデオ会議の画面に流すことができた。もちろん、「Airmix Solo」で撮影したカメラ映像/マイク音声も、同じ設定でZoomに配信することができる。

 ただ、モニター音声の出口がZoomになったため、iPhoneで再生している動画の音声をデスクトップPCのスピーカーで聞くことはできなくなった。とはいえ、今回はマイクの音声をMixしてモニター出力しているので、スピーカーで流すとハウリングしてしまうのだが……。さらに、iPhoneの内蔵マイクより、手持ちのコンデンサマイクの方が音が良いので、「重要な会議ではコンデンサマイクを使う」などシチュエーションに合わせて機材を使い分けることになりそうだ。

「OBS Studio」の「設定」画面で、「モニタリングデバイス」に「CABLE Input(VB-Audio Virtual Cable)」を指定
Zoomの設定画面で、「ビデオ」の「カメラ」に「OBS Virtual Camera」を選ぶと、iPhoneで再生中の動画が表示された
さらに、「マイク」に「CABLE Output(VB-Audio Virtual Cable)」を選ぶと、PCに繋いでいるマイクや、iPhoneで再生中の動画の音も拾うことができた

9月29日(金):iPhoneだけでなく、一眼レフカメラなどもWebカメラ代わりに!

 午後から急遽、会社の部内ミーティングをビデオ会議で行うことに。iPhoneのバッテリー残量が少なくなっていたので、キヤノン製の一眼レフカメラをHDMIケーブルでビデオキャプチャボードに接続。Webカメラ代わりに使うことにした。

 一眼レフカメラでは絞りを変更することで、映像の明るさを簡単に変更することができる。ただ、手持ちのカメラでは画面中央に白い「拡大表示枠」が表示されてしまうので、「ライブビュー機能設定」で「AFモード」を変更することで、この枠を非表示にすることができた。

一眼レフカメラのHDMI出力とビデオキャプチャボードをケーブルで接続
カメラのライブファインダーを有効にすると、内蔵ディスプレイの映像が「OBS Studio」に表示された。画面中央の白い「拡大表示枠」は、カメラの「ライブビュー機能設定」を変更すると非表示にできる

 ビデオキャプチャボード経由でiPhoneをZoomに繋ぐと、Webカメラ代わりに使ったり、保存されている写真や動画を簡単にビデオ会議に流せるようになる。ほかにも、いろいろな機器に保存/再生されている動画をPCで扱えるようになるので、1台持っていると何かと便利に使えそうだ。

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※編集部より
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飛田九十九