好調「povo2.0」の向かう先 サブ回線の利用増でも“基本料金0円”を維持できるワケ(1/3 ページ)

» 2023年02月02日 12時22分 公開
[石野純也ITmedia]

 長期に渡って契約し、毎月ほぼ決められた料金を払うのが一般的な携帯電話、スマートフォンだが、それとは真逆のコンセプトで登場したのがKDDIのpovo2.0だ。他社のオンライン専用プランと同様、20GB一択でスタートしたpovo1.0を全面的に刷新し、トッピングで自由にデータ容量を買い足せるサービスを実現した。トッピングは、データ容量だけでなく、コンテンツにも広げている。

 2022年9月に1周年を迎えたpovo2.0だが、2022年は楽天モバイルの0円プラン(UN-LIMIT VI)廃止や、KDDI自身の大規模通信障害もあり、バックアップ回線としても再び脚光を浴びた。基本料0円で維持でき、使いたいときだけ使えるコンセプトが、時代のニーズにマッチした格好だ。こうした事情もあり、2022年11月のKDDI決算発表時には、およそ150万契約程度まで伸びていることが明かされている。

povo2.0 2021年9月のpovo2.0発表から大きなリニューアルはないが、期間限定トッピングやデータ増量キャンペーンなどを展開している

 一方で、トッピング自体は、サービス開始当初から大きくは変わっていない。代わりに投入されているのが、有効期限やデータ容量が通常とは異なる期間限定のトッピングだ。例えば、2022年10月には90日間有効な3GBのトッピングを1280円(税込み、以下同)で発売。年末年始に合わせ、データ通信が7日間使い放題になる1800円のトッピングを発売した他、1月20日からは大容量トッピングの25%増量キャンペーンを展開している。

 では,povo2.0はなぜこのような動きをしているのか。同ブランドの今とこれからを、KDDI Digital Lifeの代表取締役社長、秋山敏郎氏に聞いた。

バックアップ回線として使う人が増えている

―― povo2.0の開始から1年4カ月がたちました。1周年からは少し時間が空いてしましましたが、この1年4カ月を振り返ってどうだったかをお聞かせください。

秋山氏 本来挑戦したかったところにはまだ至っていませんが、先々目指したいところに向けてロケットを発射し、第1段を切り離せた――そんな印象です。自由に使いたいときに使いたいだけという基本的なUX(ユーザー経験)を掲げ、コンセプトを理解していただくのが第1段と思ってやってきました。メジャーな動きとしては、期間限定トッピングのようなものを、手を変え品を変えやっています。期間限定を出したらこういうふうに使っていただけるという基本的なことも分かってきました。

 (2022年7月の)通信障害ではさまざまな方にご迷惑をおかけしてしまいましたが、お客さまからの評価自体は2022年12月に過去最高になりました。NPS(ネットプロモートスコア=ユーザーの推奨度)は通信障害で少し下がってしまい、そこは申し訳なかったのですが、回復してきています。

povo2.0 KDDI Digital Lifeの秋山敏郎社長

―― povo2.0に関してはサブ回線として持っているユーザーも多いと思いますが、それでも通信障害の影響は大きかったのでしょうか。

秋山氏 そこはお客さまによります。影響を受けた方も大勢いるので、おわびしなければいけないのは当然のことです。お客さまからの信頼回復を重要視しなければいけないのは当たり前のことですが、そこからもう一度基本に戻り、今いらっしゃるお客さまにどうすれば喜んでいただけるのかに集中した数カ月でした。

 一方で、障害のとき、こういうことがあったらバックアップ回線が必要という声も出てきました。povo2.0に関しては、そういう使い方をしていただけます。その(バックアップ)回線が落ちてしまったらお話になりませんが、通信や携帯の使い方を見直したり、新しい使い方を考えたりするきっかけにはなったと思っています。

 例えば、新しい使い方としては、DAZNパックをやらせていただいていますが、それを見るためだけに使うというようなこともできます。ベタッと月額課金で2年、3年使うというのではなく、新しい使い方が生まれてくることを目指しています。こう言ったら怒られてしまうかもしれませんが、そこに向けて時計の針が進んできた感じはしています。

 また、楽天モバイルが新料金プラン(UN-LIMIT VII)を発表した後も、多くのお客さまに申し込みいただけました。これは一過性と言えば一過性なのですが、2枚目(のSIMカード)としての新しい使われ方です。どう使えばいいのかを考えるお客さまが増えたという意味で、あれはあれで時計の針を進める出来事でした。

―― 個人的にも、povo2.0の2回線目をバックアップ回線として使っています。そういった人は多いのでしょうか。

秋山氏 アンケートや、実際にどう使われているかの統計データは見ています。何割がバックアップかとははっきり申し上げにくいのですが、結構な割合でいらっしゃると思っています。バックアップだけでなく、月末にちょっと通信量をセーブしたいときにpovo2.0に切り替えている方もいます。半分はいきませんが、少なくない比率でそういった方がいらっしゃいます。

 逆に、例えば24時間無制限をやっていますが、週末、如実に販売数が上がるようになりました。外出されるときや遠出する際に利用するのだと思いますが、そういう傾向も明確に出てくるようになりました。一定の方に、新しい使い方を考えていただけているのだと思います。

ギガ活によって加盟店での決済額や利用が増える傾向も

―― バックアップ回線でも、ギガ活があるのでお金を払わずに使えてしまいます。この可能性はどう見ていますか。

秋山氏 ギガ活に関しては、今はまだコンビニなど日常のものが中心ですが、ここにはまだまだ可能性があると思っています。もっと新しいパートナーも考えられます。DAZNやsmash.もそうですが、あれもコンテンツにギガが付いてくるものです(対象コンテンツのみデータ容量が無制限になる)。通信をお客さまが目的としているものに寄り添う形でやっていますが、ギガ活に関しては、それがそこまでタイトに結びついていないものです。

 例えば、キャンプ場に行き、そこでセットに通信を使ってくださいというように、利用シーンに応じてギガを付与するというのが基本的な発想です。これがだいぶ浸透してきたので、2023年にどうしていくのか。ロケットの1段目を切り離したので、そこに向けて大きく踏み出していきたいと考えています。

povo2.0 買い物をするとpovoのデータ容量がプレゼントされる「ギガ活」。コンビニエンスストアを始め、さまざまなパートナーが参画している

―― 今はau PAYが条件になっていることが多いですが、店舗への送客効果のようなものはありますか。

秋山氏 今はau PAYでとお願いしていますが、統計データを見ると、その加盟店での決済額や利用が増える傾向があります。加盟店にも、一定の貢献ができたと思っています。石野さんも、別のコンビニとローソンが並んでいたら、ローソンを選んでいると思います。

―― はい(笑)。

秋山氏 そういう効果が見えてきました。

―― そこまで効果があれば、マーケティングツールとして加盟店からお金をもらって連携するという方向もありえると思います。

秋山氏 特別な取り組みや一歩突っ込んだ取り組みとして、そういったやり方もあると思っています。今やっていただいているところに急に入れるということは考えていませんが、一歩進めて、もうちょっとタイトにインテグレートしてお客さまの体験を作り上げる場合、両者にメリットがあるのであればそういうやり方もあります。そこを目標にしているわけではありませんが、発想としては排除していません。

 もともと思っていたのは、例えばホテルに泊まるとき、電気代や水道代を個別に払わないですよね。電気を使うためにホテルに行くわけではないので、これらはホテル代に含まれ清算されます。そうなるのが1つの完成形ですね。お客さまが行動されるところに、いろいろな形で通信が絡んでいき、お客さまはやりたいことをやるために通信する。これを、別に切り出してお支払いいただく必要はなかろうと思っています。

―― 確かに、ホテルのケースだと、Wi-Fiも含まれているわけで、それがpovo2.0のトッピングになっても違和感がないですね。

秋山氏 今は拡大しているところなので(ギガ活を)販促として積極的にやっていますが、povoのコードがあることでホテルビジネスに貢献できるかもしれません。さらに大きなデータ容量を付与するといったB2Bの商流があってもいいですね。

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