一人暮らしのネット環境Q&A

新生活のネット環境は、スマホだけで十分? 固定回線があった方がいい?

一人暮らしを始めるにあたって、ネット環境をどうしたらいいのかよく分からない……。そんな人のために、初めての回線選びの考え方やWi-Fi設定の基礎など、一人暮らしのためのネット知識を、Q&A形式で紹介します。

回線の性能面は問題ありませんが、通信量には注意が必要です

 多くの家庭では、インターネットを使うために光回線などの固定回線(家庭内にケーブルを引き込んだ通信回線)を導入しているでしょう。しかし、一人暮らしとなると、そこまで必要かな? と考えてしまうこともあるはずです。

 メールやSNS、動画視聴などはスマートフォンで問題なく行えるし、テザリング(iPhoneでは「インターネット共有」)で、スマートフォンを介してPCをインターネットに接続することもできます。新生活にあたって、新居でも固定回線の契約は必要でしょうか?

新生活でデータ通信量が大幅増加の可能性あり

 はじめに結論を言えば、スマートフォンだけでも一人暮らしのネット環境には十分です。ただし、新生活でデータ通信量が大幅に増加する可能性があるので、通信量には注意して、必要があれば大容量のプランや固定回線の契約も検討するようにしましょう。

 前提として、2023年現在の一般的な固定回線(最大1Gbpsをうたう光回線を想定します)は、一般的なスマートフォンの回線(4G回線を想定します)よりも高速かつ安定した通信が期待できます。しかし、その回線の性能の差が、メールやSNS、動画視聴、Web会議といった使い方で大きな問題になることは少なく、スマートフォンの回線でも十分です。

 明らかな違いを感じるのは、例えば、動画制作やデザインなどで大容量のファイルを多数やり取りする場合や、リアルタイムの対戦ゲームをする場合などです。こうした使い方をする人は今回のような疑問を持つまでもなく固定回線を導入するでしょう。今回は、このような使い方が主ではない人を想定します。

 回線の性能としては以上のようにスマートフォンで十分だとしても、データ通信量には注意が必要です。テレワークなどで、仕事で自分の回線を使って通信する場合には、月に使用する通信量が一人暮らし前よりも大幅に増える可能性があるので、気づかない間に契約している量を超過し、通信制限によって急に通信速度が遅くなってしまう可能性があります。

 データ通信量をチェックしながら、適切なプランに切り替えるようにしましょう。あらかじめ、現在契約している携帯電話会社で、データ通信量を増やすにはどのようなプランやオプションがあるか、データ無制限プランなどは使用可能かを確認しておくといいでしょう。なお、データ通信量は無制限でも、テザリングの通信量には上限が設けられている場合もあるので、この点にも注意が必要です。

NTTドコモのデータ無制限プラン「5Gギガホ プレミア」は、テザリングも無制限で利用できます

「使い放題」の固定回線と低額のスマホを併用して料金を抑える

 固定回線の導入で悩む大きな理由に、料金の問題があるでしょう。スマートフォンと固定回線の2回線分では料金が高くなる……と普通は考えると思いますが、実際には、そうとは限りません。

 大量の通信を行う場合、スマートフォンの月額料金も高額になります。その場合、最大1Gbps以上の高速な光回線が使える固定回線をメインに使い、データ通信量は少なめの想定で料金を抑えた低料金のスマートフォンを組み合わせることで、同程度以下の料金で固定回線+スマートフォンを使える可能性もあります。

 例えば、NTTドコモ、au、ソフトバンクのデータ通信量無制限のプランは、月額7300円程度になります(楽天モバイルでは3278円と安いですが、カバーエリアがほか3社ほどでないという難点があります)。一方で、最大1Gbpsの光回線による固定回線は、集合住宅向けなら月額4000〜5000円程度で利用でき、スマートフォンは容量制限のあるサブブランドやMVNO(いわゆる格安SIM、格安スマホ)なら、月額1000~3000円前後で利用できるので、合計で月額7000円以下におさえることは可能です。

 固定回線は、特殊なプランを除けばデータ通信量無制限なので、安心して使い放題にできることもメリットです。外出先でデータ通信をすることが多くないならば、固定回線と低額のスマホの組み合わせはおすすめです。毎月のデータ通信量を見ながら、固定回線の導入を検討してもいいでしょう。

 簡単な試算の例を紹介しましょう。NTTドコモのデータ通信無制限プラン(テザリングも無制限)「5Gギガホ プレミア」は、月額7315円です。これに対して、NTTレゾナントが提供する最大1Gbpsの固定回線「OCN 光 マンション」は月額3960円、同じくNTTレゾナントが提供するMVNO「OCN モバイルONE 3GB/月コース」は月額990円で。この2つを利用する場合、セット契約による割引(220円)も適用した合計の月額は4730円となり、5Gギガホ プレミアよりも割安です。

 実際には、5Gギガホ プレミアは各種割引をフルに適用することで月額4928円にすることも可能(なお、最大に割引を受ける条件の1つは固定回線サービスの「ドコモ光」を契約することです)だったり、最大1GbpsのOCN 光 マンションを自宅に導入可能かは確認する必要があったりします。

 ほかにも、契約時の手続き費用や工事費用がかかったり、契約期間の縛りなどの条件もあり、月額料金だけで単純には比較できませんが、固定回線を導入しても通信費が大きく上がるとは限らないことは、覚えておいてください。

月額料金を比較した試算の例。実施には、各種割引、導入の条件、初期費用、契約期間などこれ以外の条件もあります
正田 拓也