日本エー・アイ・シーの「アラジン」は、すばやい加熱が可能な高機能トースター「アラジン グラファイトトースター」で人気のブランド。そんなアラジンから3月24日、ブランド初となるコーヒーマシン「アラジン コーヒーブリュワー ACO-D01A」(以下、アラジン コーヒーブリュワー)が発売されました。

最大の特徴は「バイパスドリップ」とよばれる珍しい仕組み。この新方式を採用したコーヒーはどんな味? 新製品発表会で試飲してきました。

  • 新製品の「アラジン コーヒーブリュワー(写真左)」と、アラジンブランドのアイコン製品ともいえる「グラファイト グリル&トースター(写真右)」。アラジン コーヒーブリュワーの推定市場価格は37,000円前後

  • アラジン コーヒーブリュワーはグリーンとブラックの2色を用意。グリーンは「アラジングリーン」とも呼ばれる、定番のパステルがかった青緑色です。アラジン コーヒーブリュワーの本体サイズは幅155×奥行き254×高さ414mm、重さは約3.1kg

  • アラジン コーヒーブリュワーの発表会では、タレントの井上咲楽さんがゲストに。大のコーヒー好きという井上さん、アラジン コーヒーブリュワーの各抽出モード(後述)で淹れたコーヒーを飲み比べ。ブラインドテイステイングでしたが、すべて正解でした

雑味の出やすい後半の抽出をカットするバイパスドリップ

アラジン コーヒーブリュワーは、1杯ずつ抽出するタイプのドリップ式コーヒーメーカー。ドリッパーにコーヒー粉をセットし、その上からお湯を注ぐというシンプルな構造です。これに、最大の特徴といえる独自の「バイパスドリップ」機構を搭載しました。フィルター内で粉の上から落とすお湯の経路に加えて、コーヒーフィルターを経由せずに直接カップにお湯を注ぐ経路を持たせています。

  • 本体の下部分が引き出し式のドリッパーになっており、ここにフィルターをセットします。ドリッパーは珍しいステンレス製。一般的な樹脂製のドリッパーは、場合によっては樹脂臭がすることがあるため、ステンレスを採用したとのこと

  • ドリッパー部を外した状態の本体。上部の黒いパーツにある9つの穴から、ドリッパーにシャワーのように熱湯を注ぎます。本体の縦横部にある緑の出っ張りから、直接お湯をカップに注ぐのが「バイパスドリップ」

バイパスドリップで実現するのは何かというと、雑味のないコーヒーの後味。アラジンの開発者によると、コーヒーの旨みや香りは抽出の前半にドリップされ、後半になるにつれ雑味やえぐみのある薄い液体が抽出されてくるそうです。

そこで、前半の濃くて美味しい部分のみを少量抽出し、差し湯をすることで濃すぎるコーヒーをちょうど良いところまで薄めます。これによって雑味が少なく、コーヒーの味が濃くてもスッキリとした後味のコーヒーが抽出できるのです。

  • コーヒーの抽出経過ごとに、味を味覚センサーで分析。後半の3分の1は、ほぼ雑味だけが抽出されています

【動画】製品発表会の会場で撮影した、抽出後半の様子(一部)。本体奥から透明な熱湯が出ているのがわかりますね。ちなみに、一杯の抽出時間は約4分から4分半

このほか、アラジン コーヒーブリュワーは抽出前にドリッパーをスチームで温めることで季節を通して均一な温度での抽出を再現。さらに、抽出工程にあわせて熱湯を注入する穴の数を変化させるなど、コーヒー抽出にさまざまなこだわりがあります。コーヒーの粉を蒸らす時間や温度管理などの細かな設定は、差し湯式コーヒーの老舗であり、国際コーヒー鑑定士の資格を持つ焙煎士がいる「珈琲きゃろっと」と共同開発をしているそうです。

  • アラジン コーヒーブリュワーがコーヒーを抽出する工程

  • ドリッパーにお湯が溜まりすぎて雑味が抽出されないように、熱湯の滴下も細かくコントロールしています。蒸らし用の熱湯は9つ穴、抽出の前半は7つ穴など、抽出設定と段階で滴下は細かく変化。写真はドリッパー上部にあるシャワーパーツ裏面。ここに溜まるお湯の量によって、滴下させる穴の数をコントロールします

抽出割合にあわせて4つの味を

本体上部のダイヤルでは、抽出するコーヒーの味を選びます。もちろん使うコーヒー粉によってガラッと変わりますが、本体の抽出設定は「クリア」「マイルド」「ストロング」「デミタス」の4種類です。

クリアは少量のお湯で濃いコーヒーを抽出し、コーヒーよりも差し湯の割合を多く設定。そのぶんスッキリとした軽い味わいのコーヒーが抽出されます。実際に試飲してみると、ちょっとお茶にも似たサッパリ風味。苦いコーヒーはちょっと……という人でも飲みやすそう。

マイルドはコーヒーと差し湯がほぼ同じ割合。たぶんマイルドがもっとも万人受けするかな? と思いました。

ストロングは差し湯を3割ほどに抑えた設定です。差し湯の割合が少なくなるほどパンチと余韻のある味わいになる印象でした。とはいえ、普通のコーヒーマシンで淹れたコーヒーと比較すると、ストロングでも後味の爽やかさは際立っていました。

  • 抽出のテイストを決定するダイヤル。左から、クリア、マイルド、ストロング、デミタス

  • それぞれの味を試飲するマイナビニュース +Digitalの林編集長。「モードの違いでここまで味が変わるのは驚き」とのこと。どのモードもスッキリした後味は共通しています

最後にデミタスは、アラジン コーヒーブリュワーで唯一「差し湯」をしないモード。差し湯をしないため、抽出量は他モードの約半分になります。デミタスモードは、抽出先のカップに氷を入れてアイスコーヒーにしたり、ミルクと割ってカフェオレを作ったりするときに向いています。

一応、デミタスモードも試飲させてもらいましたが、ストレートで飲むと酸味やえぐみが強く感じられました。たしかにミルクと割るのに向いていそうな、ボディの強い味わいです。

  • アラジン コーヒーブリュワーは、基本的にはカップに直接抽出する一杯抽出タイプ。抽出量は2種類から選択します。コーヒーカップのアイコンは約130ml、マグカップのアイコンは約250mlの抽出です。デミタスモードでは、これらの約半分の量となります

  • 抽出後は、フィルターを捨ててドリッパーを水でサッとすすぐだけ。お手入れも簡単です

気になるアノ製品との違いは……?

ところで、家電に詳しい人なら「差し湯をするコーヒーマシン」と聞いて、バルミューダが2021年に発売した「BALMUDA The Brew」のバイパス注湯を思い浮かべるかもしれません。アラジン コーヒーブリュワーとBALMUDA The Brewのもっとも大きな違いは設計思想です。

BALMUDA The Brewは、コーヒーの抽出設定(メニュー)のひとつとして、サッパリした後味のバイパス注湯を選べるようにしています。対してアラジン コーヒーブリュワーは、デミタスモード以外はすべて差し湯を前提に抽出工程をプログラミングしています。また、すっきりした後味にこだわっているためか、アラジン コーヒーブリュワーは抽出温度もBALMUDA The Brewよりやや低めです。

そもそも、BALMUDA The Brewは本体にコーヒーサーバーをセットして複数杯を抽出しますが、アラジン コーヒーブリュワーはカップ1杯分の抽出が基本。差し湯をする方式のコーヒーメーカーという一面では似たもの同士とはいえ、「アラジンかバルミューダか」という比較にはならない気もします。

アラジン コーヒーブリュワーはレトロでかわいらしいデザインと、上品ですっきりとしたコーヒーの味が魅力的。人気が高まっている「高機能ドリップ式コーヒーメーカー」がますます面白くなってきました。グラファイトヒーター搭載トースターに続き、コーヒーメーカーがアラジンの代表的なヒット作となるのか、これからますます注目です。