石川温の「スマホ業界 Watch」

FCNTの経営破綻と「全てのiPhoneの81%がiOS 16」で見えるアップルの強み

 2023年5月30日、「らくらくスマートフォン」や「arrowsシリーズ」を手がけるFCNTが東京地裁に民事再生法の適用を申請した。

 これにより、スマートフォンの製造や販売については速やかに事業が止まり、端末の修理やアフターサービス事業も一旦停止すると発表された。

 「らくらくスマートフォンやarrowsユーザーのサポートはどうなってしまうのか」と心配されたが、取り扱いキャリアであるNTTドコモはデバイスの販売を継続し、アフタサポート体制も整えるとコメント。KDDIやソフトバンクも同様のスタンスであることが表明された。

 FCNTでは、今年2月にNTTドコモ向けとして「arrows N F-51C」を発売している。arrowsをリブランドし、スマートフォンの新たな競争軸として「サステナブル」を掲げた製品であることがアピールしてきた。

 再生プラスチックや再生アルミニウムなどの環境に配慮した部材を採用するだけでなく、「長く使えるスマートフォン」として、Androidのバージョンアップはarrowsシリーズで最も多い3回、セキュリティアップデートも最長4年を予定しているとした。

 しかし、会社自体のアップデートが止まってしまった。民事再生法の適用となり、キャリアもアフターサポート体制を整えると言うが、OSのバージョンアップまで対応するかはかなり不透明だ。実現できたとしてもセキュリティアップデートぐらいなのではないだろうか。

 京セラの個人向けスマートフォン事業撤退、さらにFCNTの民事再生法適用といったニュースが続くと、「Androidスマートフォンは将来的にOSアップデートをしっかりやってくれるのか」という不安がつきまとうようになってしまう。

iOS 16、過去4年のiPhoneで9割搭載

 そんななか、このタイミングでOSのアップデートに対しての話題をぶち込んできたのがアップルだ。

 WWDCを前にして、アップルでは「すべてのiPhoneユーザーの約80%が最新のiOS 16を使い、さらに過去4年に発売されたiPhoneでは90%がiOS 16を使っている」というニュースをリリースしたのだ。

 iPhoneは、ハードウェアとOSであるソフトウェア、そのどちらも1社で提供している「垂直統合モデル」だ。毎年、新製品として販売しているモデル数も少ないため、OSのアップデートがやりやすいという環境にある。

 iOS 16は、最新のiPhone 14シリーズは当然のことながら、古くは2017年発売のiPhone 8シリーズまで対応する。つまり、5~6年の間、毎年、OSアップデートが受けられて、最新機能を使えるという点が魅力となっている。

 年に1回のメジャーアップデートだけでなく、たとえば、コロナ禍でマスク姿が当たり前になれば、マスク姿でもiPhoneのロックを解除できる機能をアップデートで提供。

 新しい絵文字を配信したり、セキュリティ面で不安がでれば、即座にソフトウェアアップデートを提供するなど、タイムリーにセキュリティアップデート、さらにはバグフィックスを行う体制が整えられている。

 アップデートに対しても、ユーザーは事前にどのような内容のソフトウェア改善が行われるか、テキストで確認することができる。

アップデートでは、その内容が記されている

 また、就寝中、iPhoneを充電している間に自動的にアップデートする設定にしておけるだけでなく、自分の意思で手動でのアップデートにも対応する。

 iOS 16が配布されたときには、単にiOS 16にアップデートするだけでなく、iOS15のままにしておきながら、iOS 15のセキュリティアップデートだけを受け続けられるという選択肢も設けられた。

 「いきなり最新OSにするのは躊躇する。アプリなどが安定するまで少し待ちたい」というニーズにもしっかりと答えられているのだ。

 最新OSをすべてのiPhoneユーザーの80%が使っていることは、アプリを提供する開発者にとっても利点が大きい。アプリ開発者は最新のiOSに集中してアプリの対応を進めればいいからだ。さまざまな機種やバージョンへの対応に苦労する必要がないというのは時間やリソースの節約につながる。

 ユーザーとすれば、古いiPhoneを使っていても最新のiOSが使え、さらに最新のiOSにしっかりと対応したアプリが使えるということになる。

 その点、Androidはさまざまなメーカーや機種、バージョンなどフラグメンテーション、いわゆる断片化されており、アプリ開発者がすべてに対応するのには限界がある。

 Androidを手がけるグーグルでは、Pixel 7aに関しては、Android 13を搭載して、バージョンアップデートの保証期間は3年後の2026年5月まで、セキュリティアップデートは5年間、提供されるとしている。

 やはり、Androidの場合、グーグル以外のメーカーがバージョンアップをしたくても、キャリアとの調整も必要となったりするため、期間の保証ができなかったり、バージョンアップの提供も遅れがちになるという傾向が強い。

 OSのアップデートに関してはソフトウェアとハードウェアの両方を手がけるアップル・iOSの方が長期間、タイムリーに提供するなど信頼性がある一方、グーグル・Androidとしても、メーカーがユーザーを安心させられる何かしらの改善、対策を提供していく必要があるだろう。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。