石野純也の「スマホとお金」

ドコモの新料金プラン「irumo」徹底解説! OCN モバイル ONEとどう違う? UQやワイモバイルとの比較では?

ドコモは、6月20日に新料金プランのirumoとeximoを発表した。7月1日に開始する

 NTTドコモは、7月1日に新料金プランを開始します。これまでは、ギガホ、ギガライトとは別にオンライン専用プランの「ahamo(アハモ)」が用意されていましたが、ahamo以外の料金プランを刷新。ギガライトとギガホを統合したような「eximo(エクシモ)」を導入する一方で、OCNモバイル ONEを取り込んだ低容量の料金プラン「irumo(イルモ)」も開始します。

 7月1日には、子会社だったNTTレゾナントを吸収し、ドコモがOCNモバイル ONEの運営元に変わります。

 これに伴い、OCNモバイル ONEは新規受付を終了。今後は、irumoを低容量のユーザー向けの料金プランとして訴求していく方針です。ただ、MVNOからキャリアになったことで、やや料金は上がっています。ドコモは料金プランと主張していますが、実態的にはサブブランドに近い位置づけであることもうかがえます。その中身をチェックしてきましょう。

データ容量別に4つの選択肢を用意し、UQやワイモバに対抗

 irumoの料金体系は、データ容量別で4つに分かれています。その容量は0.5GB、3GB、6GB、9GB。前身とも言えるOCNモバイル ONEと比較すると選択肢が1つ減り、4つに集約された格好です。

 ただし、0.5GBはやや位置づけが特殊。単純にデータ容量が少ない料金プランではなく、5Gが利用できなかったり、通信速度が3Mbpsに制限されていたりと、データ通信をする上での制約が設けられています。表などでまとめてしまうと4プランのように見えますが、実質的には3プラン。 0.5GBプランは“別枠”と言ってもいい でしょう。

データ容量は0.5GB、3GB、6GB、9GBの4つ。0.5GBは特殊な位置づけのため、実質的にS、M、Lの3つと考えてもいいだろう。ただし、上記の金額は割引適用時のもの

 3つの料金プランというのは、ワイモバイルやUQ mobileといったサブブランドとほぼ同じ。 3GBがS、6GBがM、9GBがL と考えれば理解しやすいと思います。

 料金は、それぞれ550円、2167円、2827円、3377円です。ただし、ここにつく割引も用意されています。対応しているのは、「dカードお支払割」と「ドコモ光セット割」。後者に関しては、「home 5Gセット割」でも代替できます。前者は187円、後者は1100円の割引です。

dカードお支払割とドコモ光セット割の2つを適用すると、料金が1287円下がる。3GBプランの場合は、2167円から880円になる

 これらをフル適用した場合、3GBプランが880円、6GBプランが1540円、9GBプランが2090円まで下がります。ドコモ光の割引額が、現行のギガホと変わらないこともあり、3GBプランにいたっては半額以下。現状のサブブランドを見ると、UQ mobileが光回線か電気サービスとのセット割を、ワイモバイルが家族割引か固定回線とのセット割引を選択できますが、条件面ではこれらの料金プランに近いと言えそうです。

 ただし、UQ mobileやワイモバイルに比べると、データ容量はより少なめになっています。現状のUQ mobileは、4GBプランの「ミニミニプラン」の次が、15GBの「トクトクプラン」。最上位の「コミコミプラン」は、ahamoに対抗して20GBプランになっています。ワイモバイルも同様で、シンプルプランの「プランS」こそ3GBですが、「プランM」は15GB、「プランL」に至っては25GBと中容量までカバーしています。小容量に特化している点は、irumoの違いと言えるかもしれません。

ワイモバイルの料金プラン。Mは15GB、Lは25GBで、中容量をカバーしている

 ドコモ側が「irumo」の主力と考えているのは、3GBプランのようです。

 各種割引をすべて適用した状態で UQ mobileのミニミニプランと比べた場合、データ容量は1GB少なくなりますが、料金は198円安くなります 。ワイモバイルも同様に光回線とのセット割適用時の料金が990円。880円のirumoの方が、110円安く設定されています。その意味で、 ドコモにとってのirumoは、他社サブブランド対抗と言える料金プラン と言えます。

競合と比較すると、料金水準が安く設定されていることが分かる

OCNモバイル ONEからは値上げに、MNO水準に料金を改定か

 一方で、ドコモ自身が運営することもあり、ドコモに吸収されるMVNOのOCNモバイル ONEより、料金水準は高くなっています。正確に言えば、 OCNモバイル ONE並みに料金を下げるには、セット割が必須 になった格好です。以下が、OCNモバイル ONEの料金プラン一覧。irumoにはない「1GB/月コース」があるほか、irumoの9GBプランよりも「10GB/月コース」は1GB多くなっています。

こちらがOCNモバイル ONEの料金プラン。irumoより選択肢が多いが、料金は安い

 irumoの主力と言える3GBプランと、OCNモバイル ONEの3GB/月コースを比較すると一目瞭然ですが、 素の料金では、OCNモバイル ONEの方が圧倒的に安い 価格設定です。OCNモバイル ONEは、3GBで月990円。さらに、OCN光とのセット割が適用されると、料金は770円まで下がります。割引適用前だと990円から2167円に、割引適用後だと770円から880円に値下げされていると言えるでしょう。

3GBプラン同士の比較。割引適用前はOCNモバイル ONEの方が安いが、固定回線をセットにすると、水準が近くなる

 同様に、irumoの6GBプランと、OCNモバイル ONEの6GB/月コースを比べると、料金は割引適用前で料金は1320円から2872円に上がっています。

 割引適用後同士の比較では、irumoが1540円なのに対し、OCNモバイル ONEが1100円。こちらも、irumoに変更すると値上げになります。

 9GBプランと10GB/月コースの比較では、データ容量が減るうえに、値上げになります。やはりドコモが直接提供するため、MVNOの料金水準を維持するのは難しかったことがうかがえます。

OCN モバイル ONEとの違いは「通信品質」も

 とは言え、irumoはあくまでドコモ自身がMNOとして提供するサービス。MVNOとしてサービスを行っている OCNモバイル ONEとは、品質面での違い があります。

 たとえば、ネットワークの帯域はその1つ。OCNモバイル ONEはMVNOとしてドコモから回線を借りているため、POI(相互接続点)の帯域によって通信品質が左右されます。比較的、高品質で評判のOCNモバイル ONEではありますが、お昼休みなどの混雑時には、MNOであるドコモにはかないません。

位置づけとしてはあくまでドコモの料金プランになるため、POIの帯域不足による速度低下はなくなるとみられる

 もっとも、ドコモも最近は都市部でのパケ詰まりが酷く、特定の場所や時間帯で十分な速度が出ないことが多々あります。この影響は、ドコモだけでなく、ドコモから回線を借りるMVNOにも及びます。

 ネットワーク構成を考えれば、理論上、品質は上がるはずですが、パケ詰まりが起こってしまうとその差が分かりづらくなるのも事実。ドコモには、対策を急いでほしいところです。

 細かな点では、iPhoneがAPN構成プロファイル不要でそのまま使えるようになったり、ファミリー割引の対象人数としてカウントされたりと、ドコモ回線としてのメリットもあります。

 4月に導入された「爆アゲ セレクション」の対象になったり、dカード、dカード GOLDのポイント進呈対象になったりするのも、irumoのメリットと言えるでしょう。こうしたサービスが充実しているのは、ドコモクオリティ。MVNOとは一線を画しています。

爆アゲセレクションやdカードのポイント還元を受けられる

サービス面では従来プランとの大きな違いも、メアドも有料対応に

 一方で、これまでのドコモとサービスがまったく同じかというと、必ずしもそうではありません。 部分的には、サービスが限定されていたり、一部が有料化されていたりする のも事実です。たとえば、ドコモショップでのサポートは、「ドコモショップirumo設定サポート」として有料で提供されます。料金は、「初期設定サポート」が2200円、「アプリ設定サポート」が1650円で、その他が1100円です。

OSアカウント設定やOSアップデートなど、eximoでは無料で提供されているサポートも有料になる

  ネットワークサービスとして大きいのは、キャリアメール でしょう。irumoは、ドコモメールがオプションとして提供される形で、「docomo.ne.jp」のアドレスを使いたい場合、別途、料金が330円かかります。ワイモバイルでも、メールアドレスは無料で利用できるため、メールサービスがオプションになっているのはかなり驚きでした。こうした割り切りぶりは、MVNOに近い料金体系と言えそうです。

キャリアメールが有料になる点は、ドコモのこれまでの料金プランとは大きく異なる。どちらかと言えば、ahamoに近い位置づけだ

 また、ahamoとは違い、ドコモショップでの新規申し込みやプラン変更などは可能ですが、オンラインで契約する場合は、irumo専用サイトからの申し込みが必要になります。あくまでドコモの料金プランという位置づけではありますが、その扱いは 別ブランドに近い ものと言えそうです。

オンラインでの申し込みや料金プランの管理はirumo専用サイトで行う。メインキャラクターがOCNモバイル ONEと同じ石原さとみさんのところも含めて、サブブランド感がただよう

 これをドコモの料金プランと言ってしまうと、ahamoとeximoを比べてから選択しなければならず、さらにirumo内にも4つの料金プランがあるため、かなり複雑に見えてしまいます。

 一方で、irumoをサブブランドと捉えておけば、必要なデータ容量を選ぶだけで比較的シンプル。UQ mobileやワイモバイルのように、スパッと別ブランドとして扱ってくれた方が、先例もあるぶん、ユーザー側としては理解がしやすくなった気がしています。

 ahamoのときもそうでしたが、やはりドコモの料金プランであることに固執しすぎている感はあります。政府がメインブランドでの値下げを強く求めていたのを、引きずりすぎている感もあります。

 とは言え、ドコモユーザーに低容量プランの選択肢が生まれたのも事実。その意味で、UQ mobileやワイモバイルと戦っていく体制は整いつつあると言えそうです。一方で、冒頭述べたように、ドコモはギガホやギガライトもeximoに改定します。こちらについては、次回の連載で分析をしていきます。

【お詫びと訂正 2023/06/21 10:10】
 記事初出時、UQ mobileでメールアドレスが無料としておりましたが誤りです。お詫びして訂正いたします。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya