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官製値下げからARPU上昇が期待される携帯料金のトレンド

 NTTドコモが新料金体系「ドコモポイ活プラン」を発表した。今年4月からオンライン専用プランの「ahamo(アハモ)」で導入され、無制限プランもある「eximo(エクシモ)」も2024年夏から秋には対象となる予定だ。今回は官製値下げの影響で減少トレンドだったARPU上昇の動きについて考察していきたい。

NTTドコモが「ドコモポイ活プラン」を発表

 「ドコモポイ活プラン」は対象のプランを契約している契約者は月額料金に上乗せすることで、「d払い」利用時のdポイント還元率がアップする仕組みとなっている。ahamoは月額2970円で月間20GB、国内通話が1回あたり5分以内はかけ放題のプラン。そこにポイ活プランを適用すると、月間データ容量に+80GBする大盛りオプション(1980円)とポイ活オプション(2200円)を契約することとなり、月額料金は7150円となる。

 開始当初は10%還元キャンペーンもあり、d払いで4万円分の買い物をすると、月々の上限である4000ポイントが貯まり、ahamo大盛りを含むahamoの利用料が月々実質2750円になる。ahamo大盛りユーザーにとっては、毎月d払いで4万円以上を買い物すると、実質2750円(キャンペーン期間中)で100GBのデータ通信を利用できるようになるという建て付けだ。

 4月からの「ahamoポイ活プラン」では、「d払いを多く利用できるか」「月間データ量が20GBを超えるか」がポイントとなる。ahamoについては、2023年6月に500万契約を突破しており、dポイントクラブの会員数は約1億人、dポイントを利用できる店舗の数は、500万カ所以上となっていることから、一定規模の経済圏となりそうだ。

 NTTドコモとしては、dポイントの持ち出しは増えるが、通信料収入は2200円アップする。ahamoユーザーを大盛りオプションへ誘導できるとともに、ARPUを上昇させ、d払いの利用率も上げることを狙っている。

AR PU上昇が携帯会社の5Gネットワーク投資のインセンティブ

 2020年に菅義偉前首相は、「携帯電話料金は現在よりも4割ほど値下げできる」として、携帯電話会社に値下げ(官製値下げ)を促した。これを受け携帯各社は値下げした新料金プランを投入したが、業績が悪化した。

 下の図は、携帯各社のARPU推移と主な新料金プランについて整理したものである。

携帯各社のARPU推移と主な料金プラン

 2021年以降、大手3社の通信ARPUは、2022年度にNTTドコモとKDDIが一時的に回復するもトレンド的には減少傾向が続いている。一時回復の背景には、動画などリッチコンテンツの利用増加で使い放題プランの契約数拡大が要因になっていると推測される。使い放題プランの利用拡大ではソフトバンクが先行し、NTTドコモとKDDIは遅れていた分、伸びしろがあった。

 一方、楽天モバイルは無料プランの影響でARPUの伸び悩みが見られた。しかし、2022年7月から新たにスタートした「Rakuten UN-LIMIT VII」で、契約者の有料化に踏み出したことで、上昇トレンドに反転したものの、最近は鈍化傾向となっている。

 今回の「ドコモポイ活プラン」のような携帯料金と共通ポイントやキャッシュレス決済を連携させたプランは、すでにKDDIが2023年9月から「auマネ活プラン」、ソフトバンクが同年10月から「ペイトク」として提供しており、NTTドコモは後発となる。

 しかし、これまで述べてきたように、通信と金融や決済が連動した料金プランは、携帯会社にとって課題であるARPU収入の拡大が見込め、更には自社ポイント経済圏を活性化できるというメリットがある。

 官製値下げの影響は、携帯会社の収益悪化、そしてインフラ投資の抑制という悪循環をもたらしており、最近見られる5Gネットワークのトラブルでも明らかなように、このまま行けば、世界的にもネットワーク整備の遅れが懸念される。

 再びARPU上昇へ反転させることが、携帯会社にとって『負のスパイラル』を断ち切る一歩となるのではないだろうか。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/