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楽天G×OpenAIが対談、「生成AI」の次世代について展望語る

 楽天グループとOpenAIが共同で開催したイベント「Rakuten AI Hub」で、両社のキーパーソンが、生成AIの未来について対談した。

左=楽天G ツァイ氏。右=OpenAI ライトキャップ氏

 楽天グループ チーフ・データ・オフィサーのティン・ツァイ氏とOpenAIのチーフ・オペレーティング・オフィサーのブラッド・ライトキャップ氏が登壇。「生成AIの次に来るもの」と題して語られた。

日本に拠点構えるOpenAI

 イベントの開始に先立ち、OpenAIは東京にオフィスを構えることを発表している。ライトキャップ氏は、日本への注力度合を高める狙いを「日本は新しい技術を常に取り入れ、重要技術や製造技術の革新を積み上げてきた。AIは日本でも重要な役割を果たす。だから顧客の近くにオフィスが必要と考えた」と説明した。

 OpenAIの東京オフィスは、同社初のアジア拠点でありあわせて同社は日本語に特化したLLM(大規模言語モデル)の「GPT-4」も発表した。2023年には楽天グループとの協業も結んでおり今後、そのほかの日本企業へも働きかけていくとみられる。

 ツァイ氏は「テクノロジーが役に立つにはモデルだけでは足りない」と自身の経験からの実感を語る。ライトキャップ氏は今後、AIがより複雑なタスクをこなすことになれば、そのブラッシュアップにはインターフェイスが欠かせないという。

 楽天では加盟店向けのツールにAIを採用しているという。AIを取り入れることでECの運営効率や顧客体験の価値を向上させるとしており、楽天が重視するという中小企業の支援につなげるねらい。楽天では、がん治療など医療分野でもAIの活用を目指すほか、OpenAIとともに通信業界向けのAIツールを開発するとしており今後、多くの産業でAIの利用の活性化が期待される。

生成AIの次は

 さまざまな分野で生成AIの活用が始まろうとしている今。ではその次には何がやってくるのか? AIが単なる作業のサポートではなく、問題解決できるようになる可能性が示された。

 ライトキャップ氏は「(生成AIの)モデルがより、複雑なタスクをこなせるようになる必要がある」と予見を示す。ChatGPTでは、要約や翻訳、原稿案の作成などを手伝ってもらうというのが一般的な使い方。しかしそれを「非常に限られた限定的なタスク」と同氏は見る。人は本来、さまざまな作業をまとめて具体的なワークフローとしてアウトプットする、ということをこなしている。ライトキャップ氏は「モデルを改良し、新しい知識を生み出す複雑な問題を解決できるアシスタントのようなものをつくる。“タスク”ではなく“問題”を解決できるようにする」とその展望を明かした。

 一方で重要になるのは、AIが提示する答えの品質。信頼性をどのようにして担保するのか? というツァイ氏の問いにライトキャップ氏は「我々はそこに真剣に取り組んでいる。改善率は予測できるもので、新しいモデルのトレーニングやスケールを拡大していくとどんどん上がっていく、AIの良いところ」としたほか、より大きいモデルを作っていくとハルシネーション率(AIの誤回答率)も下がり、詳細かつ具体的な答えも出せるうえ、その答えに至った説明もできるようになるなどのメリットがあるとした。

AIを使いこなせば競争についていける

 AIが発達するに伴い、雇用の安定性を不安視する向きもある。「自分の仕事がAIに奪われないか」と心配する声は少なくない。ライトキャップ氏は、そうした懸念を「人類は適応できるし、未来を楽観視している」と自身の見方を明かした。

 「根本的に申し上げるとAIはツール」と同氏。コンピューターとの付き合い方や個々人の処理できる仕事量も変わるとする。ツァイ氏も新しいAIは平等な競争をもたらし、誰しもがソフトウェアエンジニアのようにAIのコードを生成できるとも語った。

 一方「競争は激化するということでもある」ともツァイ氏は指摘。AIのようなツールを使いこなせなければ、追いつけなくなるとして「最高のアシスタントを使ってどれだけ生産性を高められるか」が重要であるとの旨を説明した。