ゼンハイザーの「MOMENTUM True Wireless 4」といえば、2024年3月に発売されたばかりの完全ワイヤレスイヤホン。人気シリーズの最新機種ということで注目を集めており、前世代からの正統進化という仕上がりに早くも高い評価が寄せられています。僕はそんな真新しいイヤホンを耳に入れて、大きな荷物を背負い、地面を打ち付けるような強い雨風の中を歩いていました……。

  • 旅路を共にしたゼンハイザーの完全ワイヤレスイヤホン最上位機「MOMENTUM True Wireless 4」

その日、東京は警報級の大雨でした。こういう日はゆっくり家でくつろぐに限る……と言いたいところですが、あいにく手元には何週間も前に手配した新千歳空港行きのチケットがあり、これをムダにするわけにはいきません。

しぶしぶ繰り出した罰ゲームのような気分の道すがら、ふとこんなことを思いました。「この旅路、イヤホンを最後まで付けっぱなしで行ったらどうなるだろう?」

自宅から羽田空港、フライト、そして新千歳空港から札幌の実家までの道のりを合わせても、ドアトゥドアで6時間もかかりません。最近のワイヤレスイヤホンはバッテリー性能も向上しているし、MOMENTUM True Wireless 4もノイズキャンセリング(NC)オンで最長7時間の再生が可能だとうたっています。すなわち、スペック上は移動中ずっと使い続けることができるはず。これは試してみるっきゃないぜ!

(※筆者注:イヤホンの長時間の使用は難聴のリスクを伴います。適度な音量を心がけ、休憩を挟みつつ使用してください。)

  • 東京の自宅から、札幌にある実家までの移動中、MOMENTUM True Wireless 4をずっと使い続けてみた

というわけで、皆さんこんにちは。ライターの工藤寛顕です。前置きが長くなりましたが、今回は「MOMENTUM True Wireless 4」を紹介します。例によって実家がある札幌へ帰省する機会がありましたので、ここぞとばかりにさまざまなシーンでの使い心地をテストしてみました。なお、今回はiPhone 15 Proと接続し、主にApple Musicの楽曲を再生しています。

  • MOMENTUM True Wireless 4

  • 製品パッケージ

  • 製品内容

まずは東京の自宅から最寄り駅まで、徒歩で10分程度の道のり。大雨の中を小さな折りたたみ傘で突き進むハメになりましたが、MOMENTUM True Wireless 4はIP54の防じん防滴性能を備えているので雨に濡れても大丈夫。安心して使用できます。

NCをオンにすれば、ザーザー降りの雨音もポツポツと小さく聴こえる程度に抑えてくれます。とはいえ、まわりの交通音なども小さく聞こえてしまいますから、周囲の状況によってオンオフを切り替えるのがよいでしょう。また、NC機能には風切音の防止モードも用意されています。通常のNCだと気になってしまう風切音も、設定を切り替えることで低減されるので、こちらもシーンに応じて使い分けると効果的です。

そんな道中では、上白石萌音さんのカバーアルバム「chouchou」を再生。アカペラやピアノ弾き語りなどバラード調の楽曲が続きますが、しっとりとした柔らかな歌声、その小さなブレスの質感にいたるまで、立体感のあるクリアな再生能力は見事。雨の日に似合うような落ち着いた楽曲は、得てして雨音が強すぎると雰囲気が損なわれがちですが、優れたNCと精細な描写力を持つサウンドのおかげで心地よく堪能できました。

  • ゼンハイザーのオーディオ機器専用アプリ「Smart Control」

  • NC関連の機能がまとまっている。風切音を防ぐモードはここでオン/オフできる

さあ、今度は電車を乗り継いで空港へ向かいます。車内で音楽を一時停止してみても、走行音はかなりしっかりとキャンセルされていて、ほとんど聞こえません。あえていうなら、耳をすませば「サー……」というわずかな雨音は聞こえましたが、これも意識しなければほぼ気にならないレベルです。

ようやく腰を落ち着けてひと安心ということで、テンションを上げていくためにオーイシマサヨシさんの新譜「ユニバース」を聴きます。数々のアニメ主題歌を手掛けるオーイシさんならではの高揚感のあるナンバーがそろっています。

アニメの世界観を忠実に汲み取るようにバラエティ豊かな音作りは先ほどの試聴曲とは一転してにぎやかですが、そうした音のひとつひとつも解像度高く描き出し、思わずリズムを取ってしまうようなアップテンポな楽曲たちをキレよくエネルギッシュに鳴らしてくれます。幅広いジャンルをそつなくこなす懐の広さからも、MOMENTUM True Wireless 4の実力の程がうかがえますね。

  • 電車を乗り継いで空港へ

家を出てから約1時間半、羽田空港に到着しました。スマートフォン用アプリで接続状況を確認すると、バッテリーは80%ほど残っているようです。

さっそく荷物を預け、保安検査場を通過します(このときだけイヤホンを外しました)。早々に搭乗口近くに腰掛け、YouTubeやPrime Videoなどを再生しながら搭乗開始を待ちます。

このときはトランスペアレント(外音取り込み)モードをオンにしていましたが、空港内のアナウンスだけでなく、少し離れたところに置いてあるテレビの音声まで聞き取れました。手元で再生している動画の声とも違和感なく共存していて、動画の内容に集中しつつ、アナウンスがあればすぐに気がつける、という絶妙なバランス。外音取り込み機能にありがちな「再生してる感」もかなり抑えられていて、ホワイトノイズも少ない自然な取り込み音です。

ちなみに、この外音取り込みの強さも自由に設定できるので、少し聞こえすぎる、あるいはさらにハッキリと聞き取りたいという好みにも対応してくれます。

  • トランスペアレント(外音取り込み)モードをオンにしたところ

そのまま30分ほど経って、搭乗時間が近づいてきました。家を出てから約2時間、イヤホンを耳に入れたままで少し疲れてきましたが、シリコンのイヤーフィンが支えてくれているおかげか意外にも痛みはありません。もちろん耳の形状やイヤーピースの素材など、人によって体感が異なる部分もあるでしょうが、相性の良いサイズ感を適切に選べていればストレスも少なく運用できると感じました。

  • MOMENTUM True Wireless 4の耳に当たる側に注目

  • シリコンのイヤーピース(中央)とイヤーフィン(右)は着脱可能

さて、いよいよ飛行機に乗り込みます。フライト中のノイズキャンセルこそ、NCの真価を発揮するといっても過言ではありません。機内でNCをオンにすると非常に静かで、機内アナウンスやCA(客室乗務員)さんの声は小さく聞こえるものの、飛行中の轟音はしっかりと抑えられます。感覚的には「静かな室内でエアコンを入れている程度」という感じで、電車内同様、こちらもほとんど気になりません。

  • 機内でMOMENTUM True Wireless 4のNCをオンにして過ごす

機内では映画をオフラインで再生したり、「Slay the Spire」などのスタンドアロンのゲームで遊んでいました。いたずらにパワフルすぎず、それでいて中身の詰まった量感のある上質な低域はゼンハイザーならではの仕上がりで、音楽だけでなく映像作品との相性も良好。また、カードゲームのような熟考するジャンルであっても、NCのおかげでじっくり集中して楽しめたので、機内での時間はあっという間でした。

1時間半ほどのフライトの後、新千歳空港に到着。家を出てから4時間ほど経過し、バッテリー表示は50%になっていました。ここから空港→札幌駅、そして地下鉄を乗り継いでいくと約1時間程度とそれなりに長いのですが、NCがあれば快適です。

  • 新千歳空港に到着

ちなみに、専用アプリには接続コーデックをSBC/AACのみに制限する機能もあります。iPhoneユーザーにはあまり関係ありませんが、aptXやaptX Adaptiveといったコーデックにも対応するAndroidスマートフォンなどであれば、アプリの設定を変えることでバッテリーを節約できます。こうした設定も気軽に変更できるのはありがたいですね。

  • 専用アプリの「バッテリーECO」でaptX系のコーデックを無効化し、バッテリーを節約できる

  • スマホなどと接続するときのコーデックまわりの設定も、アプリから行える

実家へ向かう電車の中では、学生時代によく聴いていた音楽を中心に再生していました。当時はまだTWS(完全ワイヤレスイヤホン)も無く、地下鉄も電波が入らなかった覚えがあります。地下鉄特有の大きめの走行音もしっかりとNCで抑えられており、同じ音楽が流れていても、時代の流れを感じます。

そういえば、ハイエンドイヤホンを初めて購入したときのあるあるとして、オーディオにハマる以前に好きだった曲を聴くと「こんな音が鳴ってたんだ!」と驚く、というものがあります。最近はAirPods Proを皮切りに3~4万円以上のTWSが普及し、高価なイヤホンを購入する人も増えてきていることでしょう。各種サブスクサービスで古い曲も気軽に聴けるようになっていますから、新しいイヤホンのサウンドを試すときにはさまざまな楽曲を引っ張り出してみると楽しいはずです。

  • MOMENTUM True Wireless 4(左)とAirPods Pro(右)を並べてみたところ

そんなこんなで、東京にある自宅を出てからおよそ5時間ちょっと。実家に到着し、イヤホンのバッテリーは残り30%ほどになっていました。TWSのバッテリー性能は購入時にも気にしがちなポイントだと思いますが、実際にここまでの長時間を使用しつづける機会というのはそう多くないもので、スペック通りにしっかり頑張ってくれたMOMENTUM True Wireless 4にはこれまで以上の愛着が湧いてきました。皆さんもお気に入りのポータブルオーディオを手に入れたら、一緒に旅をするような気持ちで遠出してみるのもよいかもしれません。

それでは、僕もイヤホンもクタクタになっているので、イヤホンを充電しながらひと休みしたいと思います。お相手は工藤寛顕でした。