シャープは、子会社の堺ディスプレイプロダクト(SDP)が運営する堺工場におけるディスプレイパネルの生産停止を決定したと5月14日に発表。2024年度上期中にパネル生産を停止する予定で、以後は同社が保有する大型液晶パネルに関する技術資産等の他企業への供与や、建屋等を活用したビジネス等へ事業転換を進める。

シャープが5月14日に実施した、2023年度決算報告に合わせて発表したもの。パネル生産停止の理由について同社は「パネル市況の低迷が想定外に長期化しており、パネル生産を安定的に継続していくことが難しい状況」と説明している。これによる連結業績への影響については、2024年3月期において事業構造改革費用として87億500万円を計上、2025年3月期業績への影響は精査中とのこと。

シャープの2023年度の売上高は、ディスプレイデバイスやエレクトロニックデバイスが大幅な減収となったことなどから、前年度を下回る2兆3,219億円となった。営業利益と経常利益は、ディスプレイデバイスの不振で赤字となったものの、ブランド事業の収益改善は進んでおり、赤字幅は減少。最終利益は、ディスプレイデバイスに関連する減損損失を計上したことから、1,499億円の赤字となっている。

堺ディスプレイプロダクトは、“世界唯一のG10(第10世代)マザーガラス工場”として2009年10月に操業開始(旧社名:シャープディスプレイプロダクト)。液晶パネル・モジュールの生産や販売を行うシャープの子会社として、これまでテレビなどの液晶パネル供給を担ってきた。

シャープは、テレビなどの既存のディスプレイ搭載製品に加えて自動車やメタバース等の需要の増大が見込まれること、米中貿易摩擦下における中国以外の大型液晶パネル工場であるという優位性といった事業環境・機会をとらえ、「高品位な大型液晶パネルの安定的かつ優位性のある調達、ディスプレイデバイス事業のアプリケーション拡大や生産能力向上」などを目的とし、2022年6月にSDPを子会社化した。

しかし、パネル市況低迷の長期化によってSDPは業績・財務状況が悪化。パネル生産を安定的に継続していくことが難しくなった。シャープは「SDPの子会社化決定時に想定していたような事業環境・機会は依然として中長期的には存在する」としつつ、「中小型ディスプレイデバイスの需要が急激に悪化するといった状況を踏まえ、こうした事業環境・機会に対応するための投資をSDPに対して直ちに行うことは非常に困難」と判断した。

SDPも、堺工場におけるパネル生産の見通しを精査。その結果、「継続により収益改善が図れる余地はあるが、パネルの需要・価格変動のリスク、ガラス等の部材や人件費の高騰の状況等を考慮すると、かえって損失が拡大するおそれもある」とし、堺工場における生産停止を決めた。